選挙での選択肢から外れた自民党政権

選挙戦は成り立たなくなった
 選挙には争点があるものだが、もはや自民党vs民主党の間に争点は無くなってしまった。これは民主党が自民党寄りと言うのでは無く、政権を明け渡す事が必然の自民党は争点を語る資格すら失ってしまったってのが現実だ。
 田原総一郎氏が日曜日の午前中に担当しているテレビ番組のサンデー・モーニングで3大臣を兼務する与謝野馨氏と対談したのだが、この時間帯の視聴率は番組全体の半分にしかならなかった。国民が「いまさら与謝野馨氏の話を聞いても意味が無い」と感じてるのだろう。それが数字に表れたのではと田原総一郎氏は語っている。
 ま、視聴率なんてのは水もので視聴率で全てを語れる訳ではないが、一着目点として拝聴に値する。そもそも国民は自民党のメッセージを聞く耳を持たなくなったのだ。麻生太郎政権誕生から7ヶ月。国民は僅かに残された期待を完全に裏切られたと感じた。。だから、少なくとも半年以内の衆議院選挙では自民党に期待しないし、自民党に引き続き政権を任せる気持ちは無い。だから、自民党が何を言おうと聞く耳持たない状態に陥っているのだろう。
 定額給付金を巡る迷走に端を発して、中川財務・金融大臣の失態、それを修復出来ない麻生太郎総理、それに加えて前代未聞の与謝野馨氏の3大臣兼務体制。全て「ああ、自民党はもう駄目だ」と印象付けるのに決定的な要素だった。
特に与謝野薫3大臣兼務は、この半年叫び続けた「政局より政策。経済対策最優先」のキャッチコピーがニセモノで、単なる延命工作でしか無かったことを名実ともに国民の前に明らかにしてしまった。

タイミングを失うことの損失拡大
 機会損失って言葉があるが、まさに麻生太郎総理は「諸外国に比べて日本は金融危機は軽傷だ」と判断していたようだ。自動車産業の不況が日本経済に与える影響を読み切れていなかった。アメリカの自動車は日本の部品メーカーの部品で出来てるのだ。最近の家電製品は半導体の固まりで、この分野でも韓国に遅れを取って苦戦していた日本の半導体メーカーは国際競争力を得るために投資を重ねて最も資本体制が脆弱な時期だったのだ。このことを、報告を受けてないのか情報が無いのか、のほほんと構えて年末の「年越し派遣村」騒動になった。
マスメディアの「一部を報じて全体像となす」姿勢は相変わらずだが、それにしても的確な対策を打ち得なかった故にマスメディアの格好の餌食になったのは麻生太郎総理にも責任がある。日本経済が坂道を転げ落ちる崖っぷちに居たときにホテルのバー通いをしたいた。それが何故話題になるのか複眼的に回りを見渡せば気がつくだろう。いや、少なくとも日本の総理大臣なんだから、それくらいの情報網は駆使できなければいけない。官僚の耳打ちだけでは日本の現状を知ることは出来ない。
 たしかに、日本は金融によるダメージは諸外国より少ないかもしれないが、世界の消費が落ち込む影響は製造業に直接響いてくる。物づくりをしないアメリカに替わって先端技術分野の民生品を作り続けてきたのは日本のメーカなのだ。世の中は多面的複合で成り立っている。金融は心配ないの一点張りで年末まで実情把握を怠ったのは、もはや取り返しが付かない。
 内閣支持率が立て続けに落ちたのは、マスコミがアゲツラウ個々の目に見える事象ばかりでは無く、国民が目に見えないが感じる麻生太郎総理のリーダーシップの無さだったのだ。

国民に選択肢が無い状況
 ここに来て自民党は麻生太郎首相代替案を出せずに居る。先に書いたように現在の問題点は麻生太郎総理大臣のリーダーシップの無さで、これは「精進する」とか「姿勢を変える」、ましてや「得意の外交に打って出る」では解決しない資質の問題だ。
 辞めるのが解っているのに諸外国の首脳と会うのはミットモナイし相手も迷惑だろう。さっさと辞めるべきだ。しかし、その後任を自民党は出せない。後任を出せないのが麻生太郎総理続投の最大の原因なのだ。ただ、それは自民党の中の問題で国民から見たら「もはや麻生太郎以外なら誰でも」の心境に陥っている。ある意味、民主党は選挙で選ぶと言うよりは消去法で残ったって位置づけになるのかもしれない。
 それくらい今の自民党は自らの失政を回復する復元力が無い。昔の自民党は結局コップの中の嵐を収めてしまう力があった。つまり右に傾くと左に傾けて転覆を治め、左に偏り過ぎると右に戻しての繰り返しが出来た。この場合「左右」は単なる方向の表現でイデオロギーでは無い。
 残念ながら小泉純一郎首相から始まって4代連続で傾く方向は変らない。復元力をどんどん失ううちに小泉純一郎首相でコースを逸脱、安倍晋三首相でエンジン停止、福田康夫首相でグルーっとUターン、そして麻生太郎首相で浸水開始となったのだ。
 民主党のほうが寄り合い所帯で船頭が多くて進んでいるのか流されてるのは解らないが浮かんでいるだけマシ。それが昨今の政治の世界なのだから国民は選択肢の無い状態で衆議院選挙の投票を迎えることになる。
 そう、沈みそうな泥舟よりも浮かんでいるだけマシ状態なのだ。

何故、新党が作れないのか
 沈みゆく泥舟と浮かんでいるだけマシの二大政党では無くて、進路明快エンジン快調の新党が何故作れないのか。何度か火種が燻ったが出航には至っていない。
 その一番大きな原因は現在の国会議員が二世議員か若手しか居ないことだろう。どちらも担がれて議員になった集団で、ある種、国会議員がゴールになる。国会議員の地位にあることが最大の目標であり目的で、国会の運営なんて面倒なことは官僚に任せておけば良い。そんなヘタレ国会議員ばかりの証左が新党が出来ないって結果に現われている。
 そんな国家議員を選んだ国民にも問題があるのは百も承知だが、少なくとも日本は代議院制の政治を選択しているのだから代議員は政治環境の変化に応じて柔軟に替わらなければいけない。今の政治状況を泥舟と浮かんでいるだけマシの2大政党のままで良いのか。そのぢちらかの船に乗っていればあとは「国がどうにかしてくれる」とでも思っているのか。
 政界大編成の紛争の跡は死屍累々かもしれないが、それを避けていては歴史に名を残すことはできない。民主党も妙に頭が良くて大学院生と揶揄されるが、若手を見ていると音便に定年まで国会議員の公務員根性が衣の下から見えてくる。
 玉砕戦法の改革の旗を振り上げなければ歴史を変えることはできない。根性見せろ!
小池百合子、鳩山由紀夫、渡辺喜美、石原伸晃、前原誠司。
何故、おまいらが超大連立を組めないのだ。

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2009.03.03 Mint