民主党の選挙戦略はドングリの背比べ

大きな争点が無い参議院選挙
 衆議院と比べたら定期戦である参議院選挙に大きな争点が無いのは当然かも知れないが、与野党の政策の差が無いことも一つの要因だろう。野党の言いっぱなしが通用しなくなった民主党は慎重にならざるを得ないし、自民党は今までの自民党政治を大きく切り替える訳にも行かない。双方が歩み寄って中道化してきたのが日本の政治の現状かも知れない。
 実は政権交代ってのはこのようなものかもしれない。革命のようにドラスティックに日本が変わるのでは無く、徐々に変化し数年後に「政権交代でこんなに変わった」と実感できるのかもしれない。
 民主党は今まで自民党が出来なかったことをやるのが優先されるが、あまり自民党の後始末みたいな部分に熱心で国民への訴求力と説得力が弱い。
 具体的には消費税問題で世間をかき回した菅直人総理の行動を押えられないこと。
 この国をどのようにするかは坂本龍馬の船中八策に見られるように、常日頃考えていれば一夜にして明文化できるもの。それを、皆の合意で作ろうとするから民主党からこの国の形が出てこない。だから、対処療法の消費税問題に逃げ込むことになる。
 今回の小鳩辞任が仕組まれた政治ショーとの意見が評論家の森永卓郎氏あたりから出ているが、結果として民主党は中道から右よりの勢力が仕切ることになったのは事実だ。
 その右より勢力があまりにも右よりで自民党と区別が付かない民主党のイメージを広めている。具体的には前原誠司・国土交通大臣、野田佳彦・財務大臣達の勢力だ。

森永卓郎氏の右派クーデター論
 森永卓郎氏が語るシナリオは以下のようである。
-------以下 森永卓郎氏の主張-----
民主党右派グループは反小沢、反社民党、反亀井静香であった。そのための排除の論理は普天間移設問題を利用して一気に実現することとなる。鳩山由紀夫総理が普天間の移転先を辺野古しか無いと決めていたのは12月頃で、それを利用して社民党を切る、鳩山人気が低落し参議院選挙がもう保たない時点でダブル辞任(これは、総理が辞めれば幹事長も辞めるので結果としてダブル辞任になる(筆者注)。
そして新政権であっさり郵政法案を棚上げにして亀井静香氏を切る。このシナリオが書かれ、実施された。
-------以上 森永卓郎氏の主張-----
正直言って、結果からたぐった起点探しの感がする。全体のシナリオが半年も前に出来上がっているはずが無い。何故なら政権交代は昨年の8月であり、菅直人財務大臣は12月就任である。情勢は刻々と変化しシナリオが書けるのは参議院選挙目前の鳩山由紀夫総理の辞任くらいなものだ。
 それについては先に書いた鳩山由紀夫総理退陣のシナリオは出来ているのか に詳細を記載した。
 ここで肝心なのは民主党右派勢力がどの程度の実力を持っているかだ。今回の事態(菅直人総理)を演出は出来てないし想定もしていなかったと思う。つまり政治センスはからっきし無いグループと言える。そのグループが「小沢さんはしばらくおとなしくしていたほうが良い」などと言って小沢一郎氏の逆鱗に触れる。小沢一郎氏が本気で党代表選挙に乗り込んできたら蜘蛛の子を散らすように逃げ出すかも知れない。そのあたりの実力ではないだろうか。
 とても、今回の一連の出来事を仕切ったとは思えない。

民主党右派では自民党への過去帰り
 今回の参議院選挙で50議席あたりから政局になるいくつかのパターンが考えられる。もちろん50議席を切れば秋の代表戦を待たずに参議院選挙惨敗の責任論が沸騰して代表交代の話も出てくる。
 次は54議席だ。今回の民主党の改選数を超えられるか。同数ならば菅直人総理は安泰だろう。これが50議席に近いと政局になる可能性が出てくる。また、逆に単独過半数になる60議席を確保できても菅直人総理は安泰だろう。
 問題は50〜54あたりに滑り込んだ場合だ。連立相手としては国民新党の亀井静香氏となるが、これで参議院過半数になれば収まるが、民主党+国民新党で過半数に成らない場合これまた政局になる。
 そもそも民主党右派は国民新党を切りたいのだから、組み合わせ次第で過半数になれば国民新党と社民党意外なら何処でも良いと考えるだろう。場合によっては3党以上の連立政権になるかもしれない。一番無いのが公明党との連立だが、小沢一郎氏の意向によってはなりふりかまわない連立になるかもしれない。可能性としては3党以上の連立政権の可能性が高いが。
 自民党も議席数によっては内乱的政局になるかもしれないが、若手が少ない現状では座して時の過ぎゆくのを待つタイプが多いので若返りしない限り党を割って出るグループは出ないだろう。議席を減らす事による責任論も出るが代替案が無いのだからうやむやになる。
 今回の選挙の結果は民主党議席数50〜55あたりが一番厳しい政局を招くだろう。

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2010.07.08 Mint