就活ばかりで、就「職」活動を行わない大学生

全員大学卒の時代に対応していない大学教育
 大学生の就職活動が氷河期を越えて絶対零度に近いらしい。2011年3月の卒業時に就職先が決まっている学生は60%程度と報道されている。
 そもそも企業の採用活動が大学3年生の10月頃から行われている状況ではまともな大学教育は行えないだろう。にも係わらず、それを大学側が甘受しているのは最後は企業に送り込めば役割は終わるって安易な大学側の教育方針による。つまり、大学は授業料を貰って大学生をトコロテン式に押し出す機関で企業のように給料を払って自らの活動の戦力とする機能とかけ離れた価値観で存在し、それが大学と企業のミスマッチになっている。
 全員大学生の時代の大卒の多くは大学教育で専門性を高めることもなく、平凡な一般教養程度の学力しか持たない。企業としては早めに専門性の高い人材を確保したくなる。それは、去年や今年に判明した事では無く、当然の「想定内」の社会現象だ。全員大卒の時代には優秀な人材は少なく、確保には先手必勝しか無いと企業側が考えるから。
 それに対応すべく大学では大学教育のあり方を議論して実施しなければいけないのだが、全ての日本の状況が「バブル崩壊後の空白の20年」に凝縮される。時代の変化に敏感に対応する能力を日本人は失っているのではと心配になる。それが、最高学府の教育の現場で起こっているのでは、回復は不可能ではないか。
 大学は学生の質が落ちたと嘆く前に、学生に見合った教育方法を考えるべきで、10年1日のような教育を社会情勢の変化を鑑みず漫然と続けてきた、その結果が現在の就職活動が絶対零度の2011年の事態を招いたのだ。

学生は就「職」活動では無く就「社」活動に熱心
 皆大学生の時代には大学で社会人たる意識を植え付ける教育が必要だが現在のカリキュラムでは考慮されていない。昔はある程度エリート意識を持った学生が大学に入ってきたから手を下さなくても自ら学んでいた。それが学生運動に流れたのは必然であったかもしれない。皆大学生の時代には程度の差はあれ大学生って身分は誰にでも訪れることになる。決してエリートでは無い。その意識も無い。
 将来の職業を選択する教育は最終教育である大学で行う必要がある。職業選択を誘導する教育カリキュラムだ。昨今はインターンシップとかで職場体験を行うことでこれを教えていると言うが、企業から見たら「お客さん」の送り込みであり、なおかつ学生側に体験する職業選択の余地は少ない。決められた会社(多くは余裕のある大企業)で職場体験してくるだけだ。とても職業感が身につくような制度では無い。
 このインターンシップは職業を選ぶのでは無く会社を選ぶ大切さしか身につかない。それが昨今の就職活動が就活と短縮され、一番大切な「職」の文字が消えてしまう要因だろう。学生は企業の規模と知名度で就活を行う。企業の業種は二の次になる。将来自分が何をしたいのかが大学で育まれていないので、就職とは地位を得る活動と勘違いしている。職業を得る活動であるものが地位を得る活動に変わってしまったのが「就活」って用語に象徴されている。
 その結果、大企業指向が高まり、就職絶対零度時代に陥っている。中小企業では人材不足にも係わらず街にフリータが蔓延する歪んだ社会になってしまった。

職業感を養えば、絶対零度にはならない
 現在の日本の就職事情は決して明るいものでは無いが、基本的考え方をしっかりと確立すれば就職絶対零度なんて事態は招かない。
 それには一生を通して働く職種の選択を大学時代に培うことだ。これは意外に難しい。何故なら企業寿命は30年と言われるように、一生を通して働く会社は必ずしも存在しない。また労働人口の流動化は今後益々大きくなるだろう。
 しかし職種を決めることによりその方面で必要とされる知識の習得が進み、結果として就職絶対零度は免れる。何故なら、社会で必要とされる職種なら就職先企業の大小はあれ必ず就職先があるはずだ。最初は大企業を目指して、結果として不採用になったら暫時企業規模を小さくしていけば良い。万が一、一番小さな会社に就職が決まったとしても、その会社に勤めながら大きな会社との取引を通して転職によりステップアップして行くことを考えることだ。
 ステップアップを目指すことにより、スキルも蓄積される。
 これを大学時代から学んでいればリストラ→解雇→フリータなんてことにはならない。現在は就「社」するからこそ、このパターンが生じる。
 企業の寿命が30年であれ、自らの職種は生涯付いて来る。そのスタートラインは十人十色。就職に拘るべきで就社を行っていれば、自分の人生は企業にお任せの人生しか歩めない。
 そのような職業感を学生に植え付ける教育が皆大学生の時代の大学で成されなければならない。

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2011.01.27 Mint