放射能汚染を正しく伝える術が無い関係者

東海村JCOの時も同じ
 今回の福島原子炉の放射能汚染の実態が伝わりはじめた。汚染された野菜や水道水である。前の東海村JCO臨界事故の時もマスコミはシーベルトをシートベルトと言って訂正しなかったり、日ごろの勉強不足を露呈したが、今回は少しはマシになっているが、放射線濃度と放射能汚染の関係には気が付いていない。
 毎回、報告される値は「シーベルト毎時」である。この数値の上下に一喜一憂してはならない。どうも放水によって毎時放射線量が下がっているのでは無く、ヨウ素131の半減期が数値に出ているようだ。ちなみにヨウ素131の半減期は8.1日である。
 放射能汚染は「今までに積もった放射能の累計」なのだ。
 「ただちに健康被害が出るものでは無い」もあやふやな基準である。ただちが明日なのか一年後なのか説明できていない。
 毎時測定される「シーベルト毎時」は速度のようなもの。放射能汚染はその累積した距離のようなもの、つまり積み上がった距離である。距離と時速の関係は小学校の3年生あたりで教わる。
 距離=速度×時間
 速度=距離÷時間
 時間=距離÷速度
の関係だ。太郎君は時速30Kmの速度で2時間かかって花子さんの家に着きました。太郎君の移動した距離は何Kmでしょうか。なんて問題だ。
 そう、時間の要素を加味しなくては放射能汚染の実態にはたどり着かない。人間の場合は
 放射線被曝(距離)=シーベルト毎時(時速)×時間
で、求められるのが被曝線量である(内部被曝は含まない前提で)。
 何故、原子力発電所境界でで5マイクロシーベルト毎時を超えると原子力災害対策特別措置法で定められた通報義務があるのか。これは5μシーベルト×24時間×30日(一か月)=3.6ミリシーベルトが目安になっている。日本人の年間平均被曝量は諸説あるが医療検査も含めて3.5ミリシーベルトあたりになっている。つまり、原発のそばに住んでいれば1ヶ月で1年間に浴びる総量に匹敵する値が5μシーベルト毎時だ。原発の事故が長期化した場合、確実に毎時シーベルトは累積されてくる。
 毎時シーベルトが低くても長期化すれば被曝線量は増えていく、決して減ることは無い。

今回は人体の実効被曝について
 人間がどれくらいの放射線被曝を受けると何が生物的に生じるかは現在でも解っていない。免疫学の範疇に属するのだが病気と因子の因果関係は統計的に「有る」と導けばあるし「無い」と導けば無い。ただ、我々にも体験を通して解ることがある。日本人は肥満率が高くてメタボの人口は全人口の1/3と言われるが平均寿命は延びている。。織田信長が「人生50年」と言った時代は過去のものだ。
 病人(かどうか、吟味が必要だと思うが)が増えて平均寿命が延びる(正確には平均余命)のは何故か。免疫学からのアプローチが大切になる。
 日常、酒を飲んでの酔い方に個性があるのは体験しているだろう。アルコールは薬品と同じく「薬物」なのだが、これが薬効を発揮するには個人差が大きいってことだ。日常処方されている薬は酒場で酔っている人間と同等で個人差がある。
 極論すると「酒に強い奴」と同様に「放射線に強い奴」も存在するのだ。不謹慎だがデスラー総統みないな体質は存在する。
 そもそも、一般マスコミでは青酸カリが発見されると「○○人分の致死量」と報道する。薬学的には投与した人間の半分が死亡するのが「致死量」だ。だからマスコミが流す「○○人分の致死量」は、実際にはその半分ってことになる。まして適切な治療を受ければその割合は減少する。
 先に書いたように実効被曝は時間のかけ算である。その意味で「ただちに健康に被害が無い」ってのは科学的根拠に立脚しない文系の文章のレトリックでしか無い。しかし、理系の発言は信憑性があるのかと言えばこれもはなはだ不確か。特に疫学的見地に立つと工学系は本来統計学も学んでいるのだが医学的な免疫学からのアプローチが不得手なようだ。
 先に書いたように「時速×時間」で被曝量は積み重なる。その「時間」がキーポイントなのだ。今の福島原発の事故は何時まで続くのか。それを考えなくては基本的な論議の土俵にたてない。ちなみに武田邦彦教授は400ミリシーベルトで白血病を発症すると言っているが、これは瞬間被曝の場合であって長時間の累積に対してはかなり疑問が残る。免疫系の話は別途記載する。

住むのは無理かもしれない
 早急な結論を書くのは控えたい。何故なら所詮人間はリスクを追いながら生きているのだから。成田からニューヨークに飛行機で行って浴びる宇宙線(放射能)が低くても航空機が墜落するリスクもまた有るのだ。ちなみに国際線を運行するパイロットの定年後の余命率は一般人と比べて極端に短い。それを被曝と結びつける考えも否定は出来ない。
 ただ、今回の福島原発事故を見ると「人間は生きる努力に勤める」って立場で考えると残念ながら屋内待避は望ましくない。一番大切な事は風によって運ばれる放射性物質で一番顕著になるのはヨウ素131とセシュウム137だ。これが振り注いでいる地域の土地は広範囲だ。しかも蓄積される。
 このどちらも原子力発電の「ゴミ」である。一番気にしなくてはならないのはプルトニュウムである。核燃料棒から直接出てくる物質なので問題だ。今はとりあえず核分裂のゴミの拡散に収まっているようだ。但し、東電の計測では中性子線が関知されてるとの事。これも核分裂が残っている証左で慎重な検討が必要だろう。
 今回の福島原発の事故は地震発生と同じ3月11日から。既に12日を過ぎている。累積される放射能被曝は毎時シーベルト×24時間×12日=288倍である。
 「レントゲン撮影は600μシーベルト」と言うが、まさか1時間おきに繰り返しレントゲン撮影を12日間も連続に行う人間は居ないだろう。距離と速度を理解してないまるっきり別なものを比較して何になるのかって感覚も関係者に無いようだ。
 放射能汚染は積分の世界だ。マスコミは解っているのだろうか。放射能汚染が怖くて首都圏を脱出する人が多いらしい。体内被曝を含めたら理解できる数値が測定器から出ている。
 現在の避難区域での積算放射能汚染は事故が1ヶ月続くと致命傷だ。たぶん、セシウム137が消える(半減期30年)まで続くだろう。

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2011.03.23 Mint