手際の悪さが露呈した菅直人総理
前に紹介した「重職心得箇条」に「手際」に関する話が書いてある。この「重職心得箇条」は小泉内閣時代に現場との軋轢を起こしていた田中真紀子外務大臣に小泉純一郎総理が「読んで勉強しろ」と渡したいきさつがある。
その中で「手際とは事態に対処する人を選ぶときに好き嫌いでは無く能力に合わせて適格に配置すること」と書かれている。今回の菅直人総理の「手際」は会議乱立で人選も適格を欠いている。そもそも何とか対策本部が多すぎる。これでは何とか対策本部対策で振り回されてまさに「会議は踊る」事態に陥る。
大臣を3名増やす構想もとん挫している。そもそも、何とか対策本部が多すぎて大臣を増やしても実効は疑問だ。初期の体制つくりが肝要なのだが、自分自身で福島第一原発に「勉強に」行ったり、東電に乗り込んで恫喝したりではリーダの器ではない。<
適格に人材を配置して対策にあたらせるのがリーダの責務だ。「原発に強い」なら適格な人材を見つけるのに苦労は無いだろう。
自民党との時限大連立も空振りに終わった。自民党から見たら無責任菅直人総理から震災、津波、原発事故の責任を丸投げされてはたまらないとの判断が働いたのだろう。本来、大連立には自民党に総裁の座を任せる判断が必要だ。その政治感覚が無くて自民党の谷垣総裁に、しかも電話で依頼しては成立させる事は出来ない。自民党に声を掛けたが拒否されたってアリバイ作りとしか思えない。
これも「手際」の悪さの好例だ。
そもそも被災地のガレキの処分についても法律による縦割り行政の悪い面が出ている。廃棄物処理法の対象から放射能汚染廃棄物は除外されている。環境庁の所轄では無く原発行政の経産省の所轄になっている。しかも、道路は国道、県道、市町村道で片づける役所が違い、個人の土地に至っては庭でひっくり返っている車を片づけるにも車の所有者の承認を得なくてはいけない。
復興の第一歩から手が付かない状況を1ヶ月以上に渡って放置している。
エコタウン構想と20年住めない
戻るのに20年かかるとの失言によって立ち消えになった感が強いエコタウンだが、そもそも机上の空論だ。1000年に一度の災害に備えて都市の利便性を失わせては経済効率の低下を招く。三陸地方は再三の津波の被害を被った地域だがリアス式海岸は逆に見れば湾の周囲は高台ってことだ。集落単位に、この高台を宅地開発し、ここから海岸に導く道路を整備することが必要だろう。一か所に数万人を集めるエコタウンなんてのは各地に点在する経済活動を無視した机上の空論だ。
そして集落単位に整備するには現場に近い市町村役場による実態把握が急務だ。そもそも災害対策本部が現地では無く東京で会議を重ねているだけなので、実効性まったく無い。つまり復興は机上の空論を重ねるだけで、まさに会議は踊る状態に陥っている。
広島が原爆で被災した時にも100年は人が住めないと言われたが実際には戦災に対抗して復興した。当時と比べて放射線に関する基準が整備されたために住めないことになるのかもしれないが、それでは住めるようにするにはどうしたら良いかを早急に考え対処すべきだろう。
福島第一原発の事故が起きてから放射性物質の放出が続いているがピークは3月15〜16日であった。その後も累積しているが情報はモニタリング・ポストによる空中線量の測定値だけだ。空気中から降り注ぎ土壌に蓄積された放射性物質の測定結果はほとんど無い。
早く人が住めるようになるには除染が必要だ。特に土壌深く入り込む前に土壌の除染が必要になる。そもそも除染が必要かどうかの測定もなされていない。つまり、原発事故の現状把握だけで復帰対策は行われてない。
雨が降れば流れて貯まる。貯まったものは運び出して一か所で長期保管すれば元の道路は除染される。畑は表土を運び出せば除染は可能だ。その対策を原発事故がひと段落した3〜6ヶ月後に初めても遅い。
今できることすら着手しない菅直人政権は20年住めない事態を自ら招いている。ま、2年後には衆議院選挙があるが、それまで延命工作を続けるつもりらしい。それが日本の最大不幸を招く。
1000年に一度の災害に対して倒幕から始めなくてはいけないのもいかがなものかと思うが、初動ミスがここまで拡大したのはリーダ不在の民主党の責任であり、その民主党を選んだ国民の責任でもある。菅直人総理一人が責任逃れしているわけでは無いが、責任を取らないために何も決断しないリーダは、やはり辞めてもらうしか無いだろう。