オーランチオキトリウムでバイオ燃料を

オーランチオキトリウムが救世主
 バイオ燃料としてガソリンと混合して使うエタノールだが、サトウキビやコーンの食料から生産するので世界の食料がひっ迫し、貧しく飢えに悩んでいる人間は益々飢えることになる。バイオ燃料の生産に食料を使っては世界の飢餓問題が増大する。
 浜岡原発を止めて「政治主導」を演出する菅直人総理だが、決して脱原発とも原発推進とも言わない。実は何も考えていないのだろう。科学が使えるようにした核のエネルギーを慎重に使えばその恩恵は大きい。福島第一原発のように40年も前の知見で作られた第二世代の原発を後生大事に使うのでは無く最新の第四世代もしくは第五世代のトリウム原発の研究に投資し先端の科学技術を使って安全性を担保していく必要がある。
 にも関わらず民間企業の論理で「使えるものは使い続ける」と今回のような事故が起きるまで使うことになる。長期の大局的視野があれば30年を過ぎたあたりから耐用年数の満了と共に原子力発電の新規投資を促しておくべきだった。それが最新の科学技術を原子力発電に反映させるポイントだから。
 核のエネルギーを使って電力を得ても全ての場面で使える訳では無い。代表的なのは航空機だろう。電気エネルギーでプロペラを回して飛ぶ実験機はあるが電気を蓄積する装置と収納可能密度は航空燃料には叶わない。
 また、同じく移動手段としての車も都会ならEV(電気自動車)で移動と充電を繰り返すことが出来ても荒野を何百キロも無補給で走ることはできない。まして、兵器としての車両は電気では戦闘できない。
 石油によらないバイオ燃料としての液体燃料が必要な場面は多々あるが現在の化石燃料に代わるものはエタノールくらいしか人類は手にしていない。それもサトウキビやコーンから作るので食料を機械が食べられるように加工して人間の口には入らない仕組みになってしまう。
 そのバイオ燃料の救世主がオーランチオキトリウムの可能性が高い。

排水の浄化と炭化水素製造
 従属栄養生物のオーランチオキトリウムはを筑波大学の渡邉信教授らのグループが発見し2010年12月の藻類の国際学会で発表された。
 従属栄養生物なので太陽光等のエネルギーを必要とせず養分を直接吸収して炭化水素を作る。オーランチオキトリウムの生成スピードは従来の藻よりも早く、これで藻から炭化水素を生成するネックになっていた生産量が少ない故のコスト高問題が解決すると言われている。
 バイオの研究は30年ほど前にアメリカで火がついてアメリカでも藻から炭化水素が作れることは実験済だ。しかし、技術としては確立しているがコストが合わないので投資を誘発できず、商業ベースにはなっていない。
 しかし、土地生産性で見ると1haの土地を利用してトウキビからエタノールを作るとして0.2トン/年、これがオーランチオキトリウムだと1,000トン/年となる。食料を使わずしかも食料の5000倍の生産性が確保される。
 しかもオーランチオキトリウムの油成分は重油に近く、既存のプラントで精製することにより現在の機器で直接使える。アメリカで藻から精製した燃料でジェット機を飛ばす
 とまぁ、夢のようなオーランチオキトリウムの話だがまだまだ実際の製品化には技術開発が必要だ。
 実は自民党政権の頃の1990年-2000年に国が研究費を出して地球環境産業技術研究機構が藻からのバイオ燃料の研究を行い断念している。その研究費は122億円。一方アメリカのエクソンモービルは2009年から藻からの石油開発に550億円を投資している。昨今バイオ燃料の研究熱が高まっているようだ。
 世界で現在75社以上が本気で藻からのバイオ燃料精製に取り組んでいる。
 日本はこの分野で出遅れている。先の122億円の投資の失敗にこりて再チャレンジが出来ていないのだ。

都市鉱山ならぬ都市畑
 オーランチオキトリウムについてはマングローブの汽水域をプカプカ浮いているものを日本が投資して事業にしても海外に持って行かれるとの意見がある。
 これは必ずしも正しくないだろう。オーランチオキトリウムは従属栄養生物であるから栄養素を供給して炭化水素を生成する。海外の熱帯地方では、この栄養素の入手が難しい。オーランチオキトリウムに食べさせる栄養素を畑で作っていては本末転倒になる。
 オーランチオキトリウムの栄養源は都会の工場と一般家庭からの富栄養の排水を使うのが良いだろう。現在も下水処理場で排水を浄化して川や海に流して、残った固形物をたい肥化したり焼却して道路舗装材にしている。特に工場では廃液の環境基準を守るために工場内で廃液処理のプラントを動かしてる。これをオーランチオキトリウムの栄養源として吸収させ水の浄化を行えば一石二鳥だ。また、富栄養化で毎年繰り返される赤潮の害も少なくすることができる。
 日本の工程表では10年で目途を付けるとなっているが、これを折りたたんで半分にして5年になるように投資を募ったら良い。
 まずは沖縄の下水処理場の更新に合わせてオーランチオキトリウムの実験装置を設置し、ここから得られたノウハウで温暖な場所から寒冷な場所への展開。そして現在の下水処理場の更新時に実用プラントを設置する。
 5年ならベンチャー投資資金も民間から集まるだろう。電気自動車の普及と並行してオーランチオキトリウムによるバイオ燃料車が走る日も近い。

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2011.05.23 Mint