今からは除染の時期、空中線量より地面の線量

経産省と文科省の業務がかぶっている
 各市町村に複数設置されている放射線モニタ、いわゆるモニタリングポストは地上高5mの高さにある。空中線量(ミリシーベルト以下mSv)を測定するためなので地面から離してある。これを知った母親が「地上高を1mにして、子どもの被曝量の目安にしてほしい」と市役所に電話したら「このモニタリングポストは文科省からの委託事業で行っているもので、勝手に設置場所を動かすことは出来ない」と返答されたという。
 正確には「ガンマー線線量計なので地面から離しても正確に測れる」が正しいのだが、ではベーター線線量は測っていないのだとも解る。モニタリングポストの数値は特別に説明が無い限りガンマー線線量で現場ではこれにベータ線線量が加わって外部被爆になる。その意味で中途半端なガイガーカウンターを買うと両方測定するので国の広報する線量の倍ほどに、しかも地面で計るとさらにその倍になるので驚くだろう。
 実際、国がインターネットで公開してる線量はガンマー線のみなので少なめに表示されている。
 3月中旬の福島第一原発の状況から見れば予断は許さないが当時のような京レベルでの放射能物質の放出は今後は無いだろう。福島第一原発事故は空中線量の測定も大事だが第一フェーズの放射性物質の拡散状況の把握から今後綺麗な故郷を取り戻すための第二の除染のフェーズに来ている。
 ガンマ線カメラなんてのが有るらしいので街角を撮影して除染を行った前後を比較出来るようにすると良い。
 文科省の福島県のモニタリングを見ると空中線量といえど浪江町管内や飯館村は高い濃度が続いている。SPEEDIの累積汚染はさらに北西の伊達市まで伸びているが実際は放射能の雲は山を越えることなく浪江町や飯館村に多く降り注いだようだ。
 逆に30km以内だが西方面の田村市、川内村は汚染が少ない。また、まったく無視されているが半分から6割は海洋に降り注いだと思われる5月26日にはグリーンピースが独自に測定した海洋汚染の実態が発表される。海洋汚染の実態が少し見えてくるだろう。
 大雑把にでは無く、細かく汚染状況(これから降り注ぐ分は無視しても良い)を調査して政府が強制的に避難させるのでは無く、放射線のリスクと避難生活の不便さのリスクを住民に説明して帰宅させてはどうかと思う。町は除染が必要だし、除染しなければ永久に綺麗な故郷には戻せない。
 しかし文科省は小学校のグランドでの外部被曝は年間20mSvを上限とするなんて真逆なこともやっている。そもそも年間5mSv以上の被曝が予想される場所は放射能マークを掲載し管理区域指定して被ばく状況を記録しなければならない。これは法律だ。その法律に明確に違反して汚染したグランドに放射能マークも設置せず被曝管理もしないのだから、文科省の指示を出した人間(文部大臣か)は即刻逮捕だ。
 今の時期は避難による精神的、肉体的、経済的負担と除染の可能性と帰宅のリスクを正しく把握する方法を重点に考える時期だ。そのためには文科省の原発行政の利権にあやかろうと設置したモニタリングポスト以外に除染に向けて多くの箇所の測定装置を配備しなければならない。

地域再生のシナリオ
 何ミリシーベルト浴びると危険なのかは解っていない。正確に言うと100mSvより下は発症との相関が良くわからない。また100mSvも瞬間被曝であって長期間の被曝の影響のサンプルは少ない。100mSvで10万人のうち500人が発症。これから上は線形的に進んで100mSv毎に500人づつ増えていく。これが500mSvあたりまで続く。
 ただし、これも瞬間被曝量から導き出された値だ。
 放射能漏れ被害があった時に飲むヨウ素剤だが、服用量が子どもの年齢ごとに決められている。ところが40歳以上の項目を見ると「服用の必要無し」となっている。つまり、服用しても効果が無いってことだ。
 地域の再生にはガレキを片づけて道路を復旧させたように、除染を進め低線量地帯を作りながら先に進めるしか無い。不謹慎な言い方だが比較的高齢な方を故郷に帰して屋内除染を行いながら匍匐前進のように除染地帯を広めるしか無い。子どもと若者は十分除染されるまでは避難所に居たほうが良い。また、除染した土や埃やガレキは東電が引き取るべきだ。
 どうにも不思議なのは東電の福島第一原発復旧の作業工程表に地域に対する対策や住民が出てこないことだ。放射性物質をまき散らした東電がまき散らした放射性物質には一切関与しない復旧計画はおかしい。原子炉の安定化も原子炉から出た放射性物質も全て東電の工程表で語られなければならない。
 汚染土壌や汚染ガレキを保管する施設を東電が作るべきだ。それが無いと故郷の除染は始まらな。
 各地のガレキも放射能汚染の場合は産業廃棄物処理から除外されるので手が付けられない状況にある。これも東電が引き取る算段を工程表に盛り込むべきだろう。

最後に乳幼児と小学生
 原子力従事者の許容限度がつい先ごろまで年間20mSvであった。しかも累積放射線量の管理および健康管理を行っての数値である。これと同様の値を小学生に適用するのは無知でしか無い。そもそも未成年者は原子力従事は認められていない。
 グランドの除染には表土5cmを剥ぎ取り除去することで可能だが、これも各教育委員会もしくは校長の判断に任されている。子どもはグランドだけで被曝するのでは無い。登下校の路上でも自宅でも呼吸でも飲食でも被曝する。それが全て足し算になる。
 非常時だから我慢して欲しいと今までの規制値を変更するのは風評被害の片棒担ぎだ。そもそも原子力発電所由来の放射線被曝は年間1mSvと決めたのだ。それを「厳しすぎるからこの際多少緩めてもただちに健康に被害は無い」と誰が決められるのか。法治国家の民主主義には許されない暴挙だ。それを現在の政府は漫然と行っている。もはや日本は法治国家では無いのか。
 少しでも除染が可能であれば手を付ける。規制値を高止まりに設定するより本質的なことだろう。政治家は自らの保身よりも国家・国民の安全を優先して考えるべきだ。自らの保身を最優先するのは官僚の悪い癖だ。それが全面に出ているのを政治主導とは言わない。

button  子どもに20ミリシーベルトは官僚支配政治
button  不毛な政治に翻弄される被災地の苦悩


2011.05.26 Mint