新幹線は1本も脱線しなかった
今回の東日本大震災では時速250km/hで走行している新幹線が脱線もせずに安全に停止した。これは気象庁の緊急地震速報と同じ仕組みを国鉄時代から独自に研究して「ユレダス」ってシステムを作った。発生した地震のP波から大きさを推定して該当する地域の新幹線に信号を送り緊急ブレーキを作動させる。
東北新幹線は全車両に装備されている。そして、この「ユレダス」(今の名称は知らないが)が改造ユレダスになって今までより1秒早く信号を出せるようになっていた。
このため新幹線は実際の揺れが始まる時には30km/h〜170km/h通常スピードより落としていた。新幹線にとっては地震予知よりも起きた地震検知と対策が有効と考えられる。有効な投資対効果である。
それに比べて地震予知は一度も発せられたことが無い。緊急地震速報も打率3割では実用化しているとは言い難い。余震が頻繁に起きているのだから今こそ緊急地震速報の精度を高めることが出来るが、肝心の地震観測網にかなりの被害が出ていて復旧までは観測値が正しく入手できないので精度が上げられないらしい。
緊急地震速報が地震予知よりも有効なことは新幹線の例でも解るがこちらは最近の地上波デジタル放送による時間遅れ問題だ。最近は解消されつつあるが気象庁の担当者から言わせると「こちらは1秒早くするのに何億円も使っているのでテレビが平気で数秒遅れる」って立腹だった。地震予知よりも緊急地震速報に予算を傾斜配分すべきではないか。
ムラを支える仕組みの見直しが必須
今回の東日本大震災で見えてきたのがムラ(村)の存在である。原子力「ムラ」であり地震予知「ムラ」である。このムラの構造は政・学・官・財・報で構成されるペンタゴンだ。特に報(マスコミ)の関与は致命的だ。
原子力「ムラ」でも福島第一原発の状況を国民に知らせるのに財(東電)、学(御用学者)、官(内閣)が揃って口裏を合わせて報(マスコミ)がこれを国民に伝える。先日のたけしのテレビタックル(6/6)で石原伸晃議員が「メルトダウンしたことは当日知っていたけど、みんなパニックを恐れて質問しなかったんだ」と暴言をはいていた。「ただちに健康に被害は無い」は常套句で、それにツッコミを入れるのをタブーにしてしまった報(マスコミ)は何だったのか。
国民の知る権利を阻害していたのは報(マスコミ)であった。上杉隆氏をいちはやくテレビの前から遠ざけたのは電気事業連合会の指示と言われている。膨大な広告費によって電気事業連合会の意図が報に反映せられる構造ができあがっているのだ。これが原子力ムラでありムラにはムラの掟がある。
20世紀の高度成長時代を支えたムラ社会であるが、この持ちつ持たれつの強固な結束が新規参入を阻んでいたため、日本は21世紀になっても20世紀のタイムカプセルから抜け出せないでいる。特に報(マスコミ)の責任は大きい。ジャーナリズムは本来一匹狼でムラ社会には住み着かないものだ。それが今や立派なムラ社会の構成員で役職者になってしまっている。
地震予知ムラも同じだ。33年の間研究して成果が出ないジャンルを向こう30年で発生確率87%なんて発表でお茶を濁している。それを根拠に浜岡原発を止めるなんて暴挙も報(マスコミ)によって賞賛して伝えられる。浜岡原発を止めることによる電力不足、加えて全国各地の定期点検終了後の原子力発電再開への風評被害の助長。全国に広がる影響を加味して伝えなくてはいけない。
あくまで東海地震用で今回の東日本大震災を予知出来なかった責任は無いのか。そうそうムラ社会は責任の所在を曖昧にするムラ社会の掟が存在するし蔓延する。
納税者を部外者にしてしまう日本民主主義の根底すら変える暴挙がムラの掟だ。
子供に年間20ミリシーベルトの被曝まで我慢させ、法律で決まっている年間1ミリシーベルトを覆すのだから、ムラには現行法は及ばないのだろう。