既存の自然エネルギー利用は新たなムラを作るだけ

今回の反省点は「ムラ」社会の改革への怠慢
 今回の福島第一原発の事故で周りを見回すと悪しき「ムラ」社会が見えてくる。原発事故の報道における「産・学・官・報」の原子力「ムラ」。復興に向けての作業の押し付け合いの官僚「ムラ」。原子力保安院と原子力安全委員会のなれあい「ムラ」。
 しかし、自然エネルギー利用にもこの「ムラ」が存在する。家庭用太陽光発電「ムラ」、風力発電「ムラ」だ。既得権益を構成した集団が「ムラ」で、それは何処にでも存在する守旧派体制のことだ。
 日本が官僚支配、明治維新の頃の言葉で言えば「有司専制」が業界団体のまとめ役として協会を作り、そこに関連官庁から天下る構造が「ムラ」の源泉である。先の大東亜戦争で軍隊は崩壊したが、この有司専制は戦後民主主義選挙制度になっても巧みに生き残ってきた。今の時代の表現を使うならモンスターGメンだ。
 このような「ムラ」には、常にその活動を睨む機能が必要で、その意味で公益法人改革にメスを入れたのは一定の効果があっただろう。しかし、モンスターGメンは巧みに「ムラ」を増殖している。「もんじゅ」の高速増殖炉が遅々として進まないのに、こちらは明治以来の実績を積み重ね着々と増殖している。
 今回の福島第一原発で関係省庁は経済産業省に見えるが、これは原発に関する電力会社が所轄。電力各社の総元締めでしか無い。津波により積み重なったガレキは国土交通省所轄、学校での被爆対策は何故か文科省(厚生労働省では無い)の所轄。港の復校は国土交通省だが漁業の復興は農水省。
 地震による被害と復興ってテーマに対して「ムラ」が沢山関与することになる。
 そして自然エネルギーにおいても立地場所によって自然公園内の地熱発電には環境省関連「ムラ」、海上風力発電には国土交通省関連「ムラ」、無耕作地利用によるバイオ原料生産には農水省関連「ムラ」、学校の太陽光設置には文部科学省、電力逆潮流のインバータには消費者庁まで顔を出す。
 まさに「ムラ」形成の社会構造は日本の文化にまで昇華している。

日本復興の鍵は技術開発しか無い
 R&Dと呼ばれる調査と技術開発がこれからの日本経済の重要テーマだろう。多くの企業が30年で業態が大きく変わる、もしくは衰退すると言われるのは技術革新が30年の間無くて10年1日のような対応では産業は衰退するってこと。傘張りの職業は今の時代には無い。
 日本はこの30年間、大きく技術開発したものはあるだろうか。
 30年前と言えば1981だ。電気通信が自由化されたのは1985年だから電気通信自由化前夜とも言える。三公社五現業の民営化が進められていた頃だ。その頃から現在まで大きくイノベーションになったのは、液晶パネルや通信機器だろう。日本が独壇場だったのはその中でも液晶パネル。現在は新興勢力に押されてしまったが。
 通信機器に関してはガラバゴスと呼ばれる独自発展を遂げざるを得なかった。そもそもipodとかipadは昔ならソニーが作って世界に販売するジャンルの機器だろう。何故か今のソニーにはその商品開発力が無い。
 エネルギー関連では天然ガス利用のコンバイン火力発電技術などがある。効率60%をたたき出して新エネルギーの一翼を天然ガスが担う原動力になった。
 開発し実用化した技術は真似しやすい。だから、技術開発は常に先頭を走り続けなければ追いつかれてしまう宿命を負っている。
 日本の社会はおかしいと思うのに「新幹線」の名称がある。1964年の東京オリンピックの時に開通したのが新幹線だ。46年も前の技術に「新」の文字は無いだろう。せめて何処かで次世代新幹線を「新々幹線」と名称変更すべきだった。
 そして自然エネルギー。これも太陽光発電は風力発電は新エネルギーでは無くなった。技術開発の面からは旧技術である。これからの新々エネルギーを技術開発して行かねばならない。つまり現在の様々なエネルギー「ムラ」の改革だ。電力、ガス、石油精製の改革だ。

エネルギー自給率向上には革命技術が必要
 官直人総理大臣の4本のエネルギー政策の1本が「省エネルギー」だ。しかし、日本は先のオイルショックの時に絞れるだけ絞って無駄を排除したので省できる余地は少ない。そもそも「省エネルギー」はエネルギー源では無い。
 今更薪を焚いての生活も無い。エネルギー政策は後退してはいけない、エネルギー特に電力は産業の血液だ。それを旧自然エネルギーに求めては「ムラ」社会の再現だ。電力はイノベーションが必要な時代背景にある。水力→火力→原子力の次に何が位置づけられてるのか。実は現在の延長線上にしかエネルギー政策は無い。次の原子力の先にある技術開発をすべきだ。
 とうも、短期的には天然ガスのようだ。中東依存の政治的脆弱性を払拭するのがとりあえず」の天然ガスを利用した発電。しかし、それも10年程の寿命だろう。世界の電力需要は今後さらに増大する。それに対処するには天然ガスでは賄いきれない、まして新々自然エネルギーは系統的には20%が上限だ。
 核のエネルギーを当面、暫定的に使うしか無い。しかし、それを我慢しながらエネルギーの確定的変革が必要になる。それは薪で煮炊きしてたのを蒸気機関での製造、そして紡績から蒸気機関車までエネルギーの革命、産業革命へと続く。そして、水力発電→火力発電→原子力発電、のあとのイノベーション。
 それはコンバインド・エナジーの開発にある。電力=発電では無く、30%程度しか発電効率が無いのだから、残りの70%を利用する方策を考える。都市ガスのコージェネのように副産物は何でも遣うエネルギー利用方策だ。北国では暖房需要から灯油が消費される。大型のビルでは重油ボイラーで暖房をする。
 何かの目的で消費されるエネルギーは多くの場合廃熱を伴う。パソコンだってCPUを初めとしてハードディスクやはては冷却ファンからも発熱する。この発熱を変換効率の良い熱電対でさらに電力として回収する。その電力で冷却ファンを回す。そんな技術革命が可能になれば多くの機器から熱由来電力を発生させられる。
 コマツグループの(株)KELKの製品
 太陽光発電に勝る半導体による熱発電が採算ラインに乗って量産効果を生む日も近い。

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2011.06.21 Mint