福島第一原発の工程表に除染は無いのか

除染行程は記載されているが
 これは福島第一原発の敷地の除染計画。ガレキを撤去して一箇所に保管する計画になっている。敷地外にまき散らした放射能の除染に関してはこの工程表には無い。仮に東電は福島第一原発の修復に関わるものしか行わないとしても、この東電の工程表を補完する日本国政府の大きな工程表が必要になる。
 それは、汚染前の日本に戻す工程表だ。
 積極的除染では無いが各地の下水道の汚泥から高濃度の放射能が検出されている。雨によって流されてきた放射性物質が下水道で集まって汚泥として高濃度になったものだ。これは当面下水処理場で保管となっているが、その保管状況が管理されていない。一定のベクレル以下のものは廃材として搬出され埋め立てられる。前は建築資材としてコンクリートに混ぜられたのだが今は引き取り手が無いので埋め立てられる。これが風に乗って飛び散り雨によって流されて一部は再度下水処理場に流れ込んでくる。この循環で自然に薄まるのを待つしか無い。
 下水処理場で保管のものは行き先が決まらずやがてオーバーフローしてしまうが政府はこの処理方法が決定していない。
 このような自然に起きる除染にすら対応できていないのだから、積極的に行う除染は扱いが千差万別だ。
 小学校のグランドの表土をかき取り放射線量が下がるのが確認されたが、かき取った土は処分の方法が決まっていないので積み上げてビニールシートで覆っている。雨や風で再度飛散するのは目に見えている。

取り除いた物質の保管方法
 福島第一原発を廃炉にするのだから周辺の土地に管理区域を設けて、ここに保管するのが最善の策だろう。ただし、遠隔地からトラック等で輸送するために積み込み時の飛散、輸送時の飛散を考慮すると放射性物質の拡散に繋がる危険性がある。
 半減期の長いセシウムを仮に半減期まで管理するとして30年間。誰が管理できるだろう。その間に地下水への漏洩や飛散を防がなくてはならない。その跡地利用は30年を経た後でないと考えられない。
 放射性物質の除染のやっかいな所はここにある。除染すれば何処か別な所に貯まることになる。決して消え去ることはない。
 結局、発生源である福島第一原発に引き取ってもらうしか無い。そして、あわよくば廃炉にする原子炉に戻す。それが工程表に明記されるべきだ。
 幸いなことにと言ったら顰蹙を買うが放出された放射性物質の6〜7割は海に降り注いだ。太平洋によって希釈される(海のホットスポットが無ければだが)。
 残りの放出放射性物質で回収可能な分は1%にも満たないだろう。放出された全体の0.003%程度だ。そして現在の放出量は240億ベクレル/日程度で、最も多かった3/15の200万分の1になっている。
 放射性物質の放出を防ぐよりも累積した放射性物質を除去する除染が優先される。
 そもそも牛肉汚染も牧草地に降り注いだ放射性物質の除染に考えが及んでいないから出てくる。石巻市で行った道路の除染では雨樋と雑草が放射線量が高く雑草は刈り取ることにより周辺の放射線量を下げることが出来た。その知見を持ってすれば牧草も推測されるだろう。まったくの政府の不作為が招いた人災だ。

除染のスキームは下水道の利用
 除染後の放射性物質を含んだ「ゴミ」の回収方法が決まっていない。対処の遅い政府を待っていると除染出来るものも出来なくなる。時間が経過すると放射性物質が細かい隙間に入り込み取り出しにくくなる。物理的反応で融着してしまえば剥がせない。とりあえずの一時保管もやむなしだろう。
 東京のNPO法人「放射線安全フォーラム」などがが実際に計画的避難区域で実験を行ったところ、屋根に登って高圧水を噴き当てたり壁を水で洗うと放射線量が半減した。もっとも、放射性物質は水と共に流れて周辺の側溝や水たまりに移動しただけなのだが。これも雨が下水へ流してくれるだろう。
 下水道を使って回収するのは合理的だろう。問題は最後に残った下水処理場から出る汚泥の始末だ。高温で溶かしてスラグ化する装置が必要だろう。高温で気体のセシウムが空気中に拡散しないようにフィルターが必要になるのでこれは福島第一原発敷地内に建設することになる。
 スラグにして容積を小さくしたら再処理工場でセシウムを回収することも出来る。そもそも福島第一原発に再処理工場を建てても良いだろう。
 放水車を使って家をビルを道路を除染するのが避難地域を再生する近道だろう。そこで処理前と処理後の線量を計り、あとはリスクを説明して戻りたい人は戻す。そうでもしないと現在の避難地域は30年経っても安全に生活する地域に再生されない。

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2011.07.28 Mint