民主党の小沢戦争で漁夫の利を狙う後継者たち

馬鹿正直は政治の世界では悪
 民主党の最大勢力はやはり北辰会を含んだ小沢勢力だろう。この最大勢力が決戦を挑み菅直人軍を征伐したら、その後の政権争いに加わろうとの政治音痴なのかしたたかなのか解らない面々がポスト菅直人の下馬評に上がっている。
 自らは動かず小沢一郎氏が決戦を挑むのを待っている勢力だ。
 しかし、政治の世界では常に自分の利を考える。だから正義の味方みたいな振る舞いで自分を不利におとしめる行動を小沢一郎氏は取らない。そこがチキンな後継者と目される面々の勘違いだ。
 天下取りは自分の手で行わなくてはその後の政策運営にも勢いが出ない。過去、多くの総理大臣が1年で壁に突き当たって辞めていくのは天下取り自体がデキレースで就任時に勢いが無いからだ。
 佐藤一斉氏の「重職心得箇条」には最後の17条に「人君の初政は、歳に春のある如きものなり。・・・・」として、組織変更や人心の一新ががあった時は春の勢いで改革を進めるべきだと書いている。歴代の単年度総理は普段出来ない大胆な改革を行わなかった。念願の総理大臣になったのだから我が世の春を楽しんでいただけだ。これでは、1年も持たない。秋の枯れ葉の季節に食料に困るキリギリスを地で行っただけだ。
 菅直人総理大臣の辞任を迫る「菅降ろし」だが積極的に戦いを挑んでいく党内改革者は居ない。せいぜい陰でこそこそするか、確定もしていない次期代表選に出るぞぉと気勢を上げているだけだ。そもそも、菅直人総理大臣が辞めなければ代表選すら無いのだが。

小沢戦略は次期政権の選抜を終えた
 2年前の衆議院選挙夏の陣で政権交代を果たした小沢一郎氏だが党員資格停止の間に次期政権構想をまとめて準備を終えたようだ。8月の会期末に向けて動きが顕著になってきたが、先の次期代表の下馬評に上がっている面々には有利に働かない。
 何故なら、小沢一郎の考える次期政権は与野党連合政権だからだ。
 総理大臣は民主党から出ないかもしれない。そもそも、新代表は独断と偏見で連合政権を作る。この時にレーニン並みの粛正にあう者の中から民主党を割って出る者は少数だろう。数の論理はしっかり手の内に残る。もちろん、小沢一郎氏は前面には出ない。与野党のパイプ役に徹する。数年前に自ら望んで出来なかった大連立を再現するのが小沢一郎の戦略だ。
 当時語っていた「民主党はまだ未熟な政党で」が国民に明らかになった現在、与野党連合への国民の支持は高い。小沢一郎氏が中枢に席を占めるようなことで雰囲気を壊すことは考えないだろう。
 その意味で野党を見回すと、昨今の言動から「野党小沢派」の国会議員が見えてくる。若手が多いのは小沢戦略の明確な排除の論理が「過去の役職者は使わない」にあるから。引退した方が良いのではって森喜朗氏を筆頭に長老は間違いなく排除の論理の対象だ。国難解決内閣が仕事を進めるのにリーダは少数で良い。
 そもそも民主党を構成する大学院生並の経験しか無い面々は気がついていないのだが、リーダーシップはリーダが発揮するものでは無い。リーダがグループをまとめ上げてグループ全体で担うのがリーダーシップだ。菅直人総理を筆頭に組織を動かせない人間にリーダーシップが発揮できない所以だ。「もしドラ」の爪の垢でも煎じて飲めば良い。

年内に新政権参上!
 菅直人総理大臣はおめでたいと思うのは、ここまで傍若無人に振る舞っても暗殺されないと信じていることだ。暗殺までは行かなくても後ろから刺される危惧も感じていない。自らが市民運動から発して他人を踏み台にして総理大臣まで上りつめた経験は、人を後ろから撃つことは出来ても自分が後ろから撃たれるイメージが沸かないのだろう。
 市川房枝氏が終始菅直人氏を嫌っていたのは残された図書から明らかだ。にも関わらず平気で「私の政治の原点は市川房枝さんだ」などと言う。事実を知るものがドンビキしているのに気にかけない。いや、市川房枝氏周辺は怒りすら覚えているのだ。
 脇の甘さでは天下一品だと思うが、民主党の次期リーダと目される人に、これに切り込む鉄砲玉的な人が居ない。攻撃は最大の防御なり。これは政治の世界では鉄則だ。自分だけ知らされてない政局面に引き込まれると場合によっては政治生命を失うことになる。過去の排除の倫理の時の【ムーミン】武村正義氏や、郵政解散を100%無いと言い切った亀井静香氏なんかが、その後に再起するのに(一部、再起不能だったが)消耗したエネルギーは甚大だ。
 今の政局の流れを読まずに「小沢一郎氏がなんとかしてくれる。俺はその後を狙う」なんてのは天下を取れない。
 政治は勢いが必要だ。それは総理大臣になってからでは無く、総理大臣になる勢いだ。チキンレースを繰り広げている下馬評の面々には総理の席は回ってこない。
 小沢一郎の次の一手は海江田万里経産相の辞任騒ぎだろう。そして、年内に新しい政治局面が訪れる。

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2011.08.03 Mint