総理は野田佳彦氏、民主党学級委員会はイメージ投票

民主党は様々な意見の集合体
 自由民主党とは何かを語ろうとする時、綱領(こうりょう)を読めば解ると言えるが、民主党には党としての綱領が無い。作ろうともしない。まとめ上げるだけの統一性が無いから作ることは出来ない。これが、民主党が党として一枚岩になれない最大の弱点だ。
 だから代表が代わる度に政策がコロコロ変わる。選挙のスローガンでは一枚になれても政策では180度意見が違う人間も含んでいるのが民主党だ。寄せ集めの乗り合いバスである民主党は自由闊達な意見交換のために綱領を定めないのだとの意見が内部にあるが実体はまとめ上げる力が党内には無いってことだろう。
 では「政党」とは何だろう。実は前にも書いたが「政党」とは憲法にも書かれていないし、法制度では唯一政党助成金の対象集団として明文化されているだけだ。それを逆手に民主党は選挙活動団体としての政党を維持してきた。綱領の無い政党はそうとしか呼びようが無い烏合の衆だ。
 そのような民主党の現状にあっては、代表によって政策が変わるのだから、せめて代表選挙では政策の違いを明確にすべきだろう。そもそも政党に綱領による基本方針が無いのだから、代表選挙は政策を明確にする戦いでなければならない。国民は選挙の時に綱領の無い民主党に投票したのだから、その代表は大臣に成りたいってだけで互選されるのでは無く、政策を明確にし、誰が誰に投票したか明確にし、国民の次回の選挙での投票行動に結びつける配慮が必要だろう。それが民主主義だ。
 しかし、実際の民主党の代表選挙を見ると「数合わせ」だけ。これは、通常の選挙と同じ「数の論理」を全面に出しているだけ。
 一国の総理大臣を選択する重みは無い。せいぜい、学級委員の投票と生徒会長の投票程度の違いしかない。

組閣がこれまた開いた口が塞がらない
 きわめつけは一川保夫防衛大臣の「防衛には素人だからシビリアンコントロール」だろう。自衛官の息子である野田佳彦総理の組閣した内閣の防衛大臣がこんな見識では話にならない。国民の生命財産を守る防衛省のトップがこれでは現場の自衛官は働く気力を失うだろう。下手すりゃ一川保夫防衛大臣は自民党からの不信任案で更迭になるだろう。
 財務大臣の安住淳氏も同様に財務には素人だ。国難に向かって財源確保が困難な政治課題になっている時に安住淳氏では官僚の言いなりで、とても政治主導にはならない。野田佳彦前財務大臣の官僚への置きみやげのようだ。
 経済産業大臣の鉢呂吉雄氏も頼りない。旧社会党出身で農業畑の能力は培われただろうが工業系への知識はうとい。とても原発の仕組みを理解できるとは思えない。
 ま、内閣も散々だが、その前の党人事にもあきれる。幹事長の輿石東氏は日教組を背景に社会党から政界に入った人物で75歳である。いくら小沢氏に近いと言っても小沢氏より高齢である。暴れ回らないようにあえて高齢議員を当てたのだろうか。保守派と言われる野田佳彦総理が日教組が好きだとは思えない。加えて要請時の輿石東氏の固辞は輿石氏が背景に爆弾を抱えていることを暗示しているのだろう。
 それに輪をかけて滑稽なのは日教組で、日教組が応援する議員が内閣に多いので「組織の締め付け」が進むことを危惧している。これは笑い話だ。

民主党の「政党」としての目的は大臣になること
 民主党は政治家になるのが目的でゴール、あわよくば「大臣」まで駆け込むのが目的。日本国家のために実現したい政策があり、その「手段として」政治家に成ったのでは無い議員が多すぎる。
 そもそも、組織票を背景に当選してくる議員達の使命は組織防衛なので特に現状を変えるって意識はない。そんなことは組織から求められていない。組織を害する政策が出て来たときに働く「働き蜂」みたいなものだ。
 クリエイティブな政策が立案できるはずもない。
 今回の内閣は平均年齢こそ58.3歳でそこそこかもしれないが、高齢者と若手が多く、中堅どころと呼べる人材は少ない。初入閣が10名で再任が4名。大臣の席の持ち回りの感が強い。民間からの入閣が無いのも勢いに欠ける。原発等の特定のテーマを抱える大臣に専門家の起用が必須だろうが、「大臣になる」ことが目的の人間を選定している。
 ここ数年の1年間総理が何故生まれるのかを考えると、内容の明確でない政党から議員内閣制で総理大臣が選ばれる制度疲労を感じる。政党が戦後の東西対立の冷戦構造時代に持っていた引力が急激に弱まったのだろう。すでにベルリンの壁が崩壊してから20年である。その間に日本の政治制度は外的環境が変わったのにも関わらず細かな対応を怠ってきた。
 例えば政党中心の政治が必ずしも現状にそぐわないことに気がつかなかった。政党には複数の派閥があり次期総理大臣を輩出すべく人材育成を行ってきたが民主党ではこの機能が無かった。何とかグループってのは数の論理だけで人材育成の視点はまるで無い。
 世界の政治制度で議院内閣制か大統領制か見ると必ずしもどちらかが優れているとは言い難い。イギリスなどは議院内閣制で上手く機能している。しかし、明文化されない暗黙の了解の「政党」が機能していない日本では、やはり大統領制が必要だろう。政党が自ら律するか大統領制か、それがこれからの日本の政治課題だ。

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2011.09.06 Mint