TPPはアメリカの苦肉の政策でオバマ政権復活ドラマ

日本はTPPで政治空転している場合では無い
 震災および原発事故からの復興が最大の政治課題と言って登場した野田佳彦総理だがTPP参加が政治問題になって政治の世界は復興政策を横に置いておいてTPP問題一色になっている。
 今日(11/9)にもTPP参加表明の記者会見を行うだろうが、これで政治混乱を招いて政治空白で国会は空転するだろう。混乱を避けてハワイのAPECで直接参加表明なんぞしたら、羽田空港に帰ってこれない事態にもなりかねない。
 そもそも何故TPPに参加するかと言えば動機は単純で「オバマ大統領に頼まれたから」にほかならない。来年の大統領選挙を控えて支持率向上のためにはアメリカの雇用問題(9%の失業率)そしてニューヨークを中心に起きている「Occupy(占拠)行動」を解消する必要がある。「日本を巻き込んでアメリカのマーケットを開拓した」と表明したいオバマ大統領のせっぱ詰まった事情が日本にTPP参加を「強要」しているのだ。
 そもそも、アメリカの失業問題は金融特化で借金してまで外国の商品を買いあさった結果である。産業が空洞化して物作りをしなくなったアメリカが金融に産業をシフトさせ、当初は経済も回っていたが、所詮紙切れのやりとりでは何処かに矛盾が、それも大きな矛盾が生じて経済の縮小を招いた。
 しかも、富の分配が労働者ではなくデスクワークの一部の人間に集中し、国の富の半分を1%の人間が所有し、残りの99%が生活に窮する、病気になっても病院に行くと1回5万円(邦貨換算)もかかる社会を作ってしまった。
 「Occupy(占拠)行動」の「I am 99%」のスローガンはこの事態を訴えている。
 ちなみに「Occupy(占拠)行動」は「アラブの春」にヒントを得ている。独裁政権が長く続いたから「アラブの春」が起きたのでは無い。独裁政権が富を独占したから「アラブの春」が起きた。その状況はアメリカでも同じである。
 ちなみにニュヨークのウォール街を占拠した群衆を警察が排除するかどうかが今後の展開を左右する。強制排除に踏み切った時にオバマ大統領の支持率は地に落ちる。それを避けるためにも国民を説得するのに当面、オバマ大統領が日本のマーケットをこじ開けたとのプロバガンダをしたいのだ。

後からの参加は飛んで火に入る夏の虫
 「話し合いに参加するのだ」と言うのだが、日本をTPPに参加させるには現在の参加国の賛成が必要になる。貿易大臣の決裁で済む国もあれば議会の承認を必要とする国もある。アメリカは議会の承認を必要とする。政府と議会の事前協議を経て正式の議題になり協議され議決されるまでに半年はかかる。
 今のTPP参加国は日本が参加して会議のテーブルにつくのを待ってくれるわけでは無い。24分野でのTPPの協議は来年春に決着するべく議論を進めている。日本が参加する頃にはTPPの概要は固まっている。
 現在の議題で既にオーストラリアが脱退を臭わせている。また米韓FTAは韓国議会の承認を得られる見通しが立っていない。共に、アメリカに有利な不平等条項が国民の知るところとなったからだ。
 議会の承認を得られない韓国大統領と同じ場面に野田佳彦総理が追い込まれるのは自明だろう。
 参加するには日本でも議会による条約の承認が必要だが、どのみちアメリカが仕掛けてきた不平等貿易条約が国民の知るところとなったときに国会は条約を批准できない。それに強引にTPP参加を進めれば内閣不信任案で対抗してくるだろう。そして民主党の懸案であった薩長連合を崩壊させ政界再編成が行われる。
 その意味で歴史に学べば黒船来襲によって大政奉還により明治政府が出来た後、山県有朋らの活躍により日米不平等貿易条約を解消したと同じ轍を踏むことになる。
 TPPという黒船に蹂躙されている今の日本は150年あまり何も学んでこなかったのだろうか。特に近代史に学んでいないのは日本の教育が歴史を正確に教えていない弊害なのだろう。ま、これは別な話だが。

アメリカの52番目の州になるつもりか
 ちなみに米韓FTAを批准したら51番目の州は韓国に取られるので残りは52番目となる。
 アメリカから見たら「貿易障壁」に見える制度も日本から見たら国内保護の砦である。最たるもの米だが、そもそも日本は大化の改新以来、米を経済の指標にし貨幣と同等に扱ってきた。「石高」なんて単位は米を中心にした経済が日本の文化の一部になっている証左だ。
 アメリカにとっては米1kgも大豆1kgも同じ農産品かもしれないが、日本文化では両者は大きく違う。米を700%を超える関税で保護しているのは単に農業政策だけでは無く、日本の文化の砦でもある。例えばTPPで大量にカリフォルニア米が入ったとして「米は八十八の手間をかけてお百姓さんが育てたもの。大切にしなくてはいけない」なんて日本文化は吹っ飛んでしまう。
 TPPが相互障壁を無くする分野は24分野あり、米だけでは無い。
TPP24分野
1.主席交渉官協議
2.市場アクセス(工業)
3.市場アクセス(繊維・衣料品)
4.市場アクセス(農業)
4.5 市場アクセス(医療・医薬)(米豪FTA)
5.原産地規制
6.貿易円滑化(税関手続きの簡略化)
7.SPS(衛生植物検疫)
8.TBT(貿易の技術的障害協定)
9.貿易救済措置(セーフガード)
10.政府調達
11.知的財産権
12.競争政策
13.越境サービス貿易(クロスボーダー)
14.電気通信サービス(規格の統一)
15.サービス(一時入国)
16.サービス(金融)
17.電子商取(e-commerce)
18.投資
19.環境
20.労働(医療従事者等)
21.制度的事項(二国間協議の余地)
22.紛争解決 (ISD条項、治外法権)
23.協力
24.横断的事項特別部会
の広範囲に及ぶ。
 既得権益がムラとしてはびこる分野もあるが、総じて国民生活の隅々におよぶ。そして共通と言いながら実質アメリカ化だ。オーストラリアで反対運動が起きているのは広範囲に及ぶ故に「文化まで売り渡す必要は無い」との論理だ。
 TPPは米と車の問題では無く、経済問題でも無く、文化土壌の問題に発展する。
 野田佳彦総理大臣はドジョウだそうだが、文化土壌を守れなくて何が一国の総理大臣かと思う。そもそもTPPは自国文化の問題だとの認識があるのか。
 中国がTPPに無関心なのは知的所有権の問題もあるが、基本的に自国文化はアメリカとは相容れないって判断があるから。インドも同じである。
 まして民主党がとなえる東アジア経済圏にはアメリカを一員にすることは出来ないはず。文化の似通った国同士が互いに自国の国益を相互補完するのが東アジア経済圏のポリシーだ。アメリカはその輸出国ではあっても、アメリカが土足で踏み込んでくるものは受け入れるコンセンサスは無い。
 日本は縄文の時代から大陸からの侵入(移民)を受けてきたが柔軟に融合することで世界に類を見ない長寿文化圏を形成してきた。日本の皇族の系統が2700年に迫る長さは世界第一位である。その文化を我々の代で壊す必要は無いだろう。

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