福島第一原発事故で繰り返される政府の二枚舌

ダブルスタンダードとも言うが
 科学的(技術的)状況判断と政治的状況判断がこれほど乖離しているのが2011年12月16日の野田佳彦総理大臣による福島第一原発事故の復旧行程である「ステップ2」達成記者会見だろう。
 一部のマスコミでは「安全宣言」なんて言葉を使っているが物事の本質を見極められない文系記者の雰囲気だけの提灯記事だ。基本的に「ステップ2」は政府が自分勝手に決めた道標で、それを達成して野田佳彦総理大臣が「やりました」ってドヤ顔しても技術的には何の意味もない通過点でしか無い。
 あの、「ドジョウのドヤ顔オヤジ」の野田総理大臣は物事の分別を判断できるだけの科学的知識を持ち得ているのか国民は不安に思うのだが、加えてマスコミは本質を突くだけの見識を持ち合わせていないようだ。
 そもそも、福島第一原発事故の未曾有の巨大さを政府は国民に隠している。世界で重大な原発事故が過去3回起きたが、福島第一原発事故はその中で最大級であり「人類が過去体験した核事故」の中で最大のものであるって認識がドヤ顔総理の野田佳彦総理大臣には無いようだ。事象だけで言えば広島、長崎に続く日本の第三の被曝が福島第一原発事故だ。
 その事故対策が何やら「ステップ2」に進展したと野田佳彦総理大臣は記者会見で発表したが、マスコミは勝手な判断でこれを「安全宣言」なんて持ち上げている。基本的に福島第一原発事故の発表されている情報を精査すると一定の数値を下回れば安全って感覚はどこかずれている。数値が先行して物事の本質を覆い隠すのは政治の常套手段だ。
 そもそも「冷温停止」って専門用語は、制御下にある原子炉が安全に停止したってことで、専門家の反論を想定して「冷温停止状態」と「状態」をくっつけたのは官僚の詭弁だ。この一言をとっても政府がいかにして国民を騙すかに苦慮していることがわかる。
 今回、野田佳彦総理大臣が記者会見で述べた「ステップ2」達成は自民党の政策発言と大差無い。これは結局我が国は官僚支配政権であることの証左だろう。国が基準を決める天皇で、決めた基準が守られているか審査する。がしかし、決めた基準がデタラメなのは国民は被災地の住民が一番知っている。
 時の中曽総理大臣が「大型間接税は実施しない」と選挙公約して結局「消費税は大型間接税では無い」と実施して竹下内閣がぶっつぶれた歴史に誰も学んでいない。

制御不可能な故障原発が安全なわけが無い
 壊れた機械が壊れたままで安全なわけが無い。ここまで修理できましたってのは修繕の行程報告であって安全にはほど遠い。何故なら、壊れた機械は故障が直るまでは壊れていて本来の機能は果たせない。今回の野田靖彦総理大臣の福島第一原発事故に関する記者会見は、ブレーキが壊れた乗用車のワイパーが動くようになりましたって報告と同じ程度だ。それを「安全宣言」と取られるように会見する政府は二枚舌以外のなにものでも無い。
 ブレーキが壊れても走り続ける乗用車のワイパーが動いても何も安全になっていないのだから。
 制御下にあって、なおかつ修復作業が進展してるのなら解る。しかし、一番の問題点である熔解した核燃料の状態、その重量およそ100トンが現在何処にあってどのような状態なのかエビデンスが無い。圧力容器からは漏れているようだが格納容器の中に留まっているのか、格納容器すら突き破っているのか現在は不明である。
 しかも、熔解した核燃料の所在や状況によって今後の対策が確定するのだから、現在は効果的な対処が立案できない状況であることに変わりはない。完全修復には40年かかかると言われている福島第一原発事故だが、その前段の9ヶ月で何が解ると言うのか。
 末期のガン患者の体温が下がった程度の情報で「国民は安心しろ」てのは政治家の二枚舌で事実を隠蔽している。
 そもそも、事故当初に「放射性物質が大量に出ていると言ったら国民はパニックになるから広報を控えた」とドヤ顔で言う官房長官が居る政府だ。国民のパニックを防いで現地では大量被曝するのが正しい判断なのか。国民の生命・財産よりもパニックを防ぐことが優先するのか。100歩譲っても、情報を隠蔽することにより民主主義が保たれるのか。アメリカの副大統領が言った「情報は民主主義の糧である」ってことを民主党、そして取り巻き官僚はどのように捕らえているのか。
 今回のステップ2到達宣言はまったくの茶番劇だ。政府の責任部分は達成したから、あとは勝手にやってくれって責任逃れの詭弁だ。福島第一原発事故は人災であり国策の過ちなのだ。自民党の置きみやげであったとしても(実は、民主党も前年まではCo2対策で原発推進であった)現在の国策の窓口は民主党である。逃げては通れない。それが政権与党ってことだ。

危惧されるこれからの「想定外」
 3.11の時から何も改善していないと思って良い。前にも述べたが原子力事故は初動体制が肝心だ。何故なら、可逆不可能な反応が核反応で、これを制御下に置くために様々な抑制制御を積み重ねるのが原子力発電の技術だ。放置すれば核爆発(核連鎖反応拡大)するエネルギー源を制御するのが原子力の平和利用の基本なのだから。
 今の福島第一原発は制御下にあるかと言えば、制御不能状態で若干対処療法が効果を上げている程度と言える。肝心の100トン近いセラミック状の核燃料棒が、現在、どのような状況にあるのかは解っていない。唯一、何処かにある核燃料棒が熔解した後の塊の表面の温度が100度以下になっている「らしい」って情報しか無い。
 再度になるが「想定外」って言葉は「頭が悪くて想像力に乏しく、考えが及ばなかった故に陥った判断ミス」って意味だ。安易に「おばか宣言」して許されるものでは無い。職務怠慢を自ら認めているってことだ。裁判では十分証拠採用される発言なのだ。
 で、政府や官僚が知ってか知らずか今後の「想定外」は現実問題として以下のように存在する。
 四号機使用済み核燃料プールの崩壊
 三号機の水素漏れのトバッチリを受けて四号機の建屋も水素爆発した。これ自体一号機の水素爆発から類推して防げる事象だったのだが自らがパニックに陥った時の政府は無策であった。
 原子炉の使用済み燃料は引き取り手が無いので原子炉建屋の最上階(なんで地下で無いのか、これも設計時の危機管理意識の欠如だと思う)にプールを作って沈めてある。特に四号機は水素爆発が建屋の上部で起こり(実態は不明なのが四号機の水素爆発なのだが)損傷が建屋の構造体にまで及んでいる。
 今後、余震により損傷が拡大すれば、最悪使用済み燃料棒格納プールの崩壊が起きて使用済み核燃料の拡散が起きる。石炭を燃やした後の石炭ガラなら良いが、使用済み核燃料棒と言うが、使用前の放射性物質は発電で数パーセント消費するだけで大半は使用前と同等だ。そもそも、原子炉の核燃料を交換するのは、核反応によって中性子の活動を阻害する核物質が生成されるので反応が鈍くなって効率が落ちるからであって、燃え尽きたから取り出すのでは無い。一般的な表現をあえて行うなら使用前核燃料棒と使用済み核燃料棒はほとんど同じと言える。含まれる核種が変化するが、核分裂によって自然界には無い同位元素が使用前より多く含まれるのが使用済み核燃料だ。それが飛散したら悲惨な事になる(冗談を言っている場合では無い)
 原子炉内部の様子
 熔解した核燃料が何処にあるかも今後の事態の進展を左右する。
 現在まで原子炉の状況は不明と言って良い。各種センサーとシミュレーションで憶測するだけで実態は把握されていない。地下水への核物質の浸透が有るのか無いのか、東電はシミュレーションの結果で無いと言っているだけである。もちろん、それを誰も検証していない。
 海洋への低濃度(非常時だから低濃度と呼ぶが、通常はあってはならない高濃度)の廃液を放出したが、今後、核燃料由来の放射性物質が地下水経由で海洋に流れ出したら防ぎようが無い。しかも3〜40年も海洋汚染は続く。
 原子炉の実態が不明な状態でステップ2が完了したと言われても何も安心できる材料では無い。まして、海洋への浸食は国際問題である。漁業資源が壊滅的な被害を受ける事態に発展する。
 原子炉の状況が判明した時点で対策が明確になるのだから、今後40年の廃炉に向けた作業の前段に取りかかったと正直に言うべきだろう。
 野田佳彦ドヤ顔総理大臣は、エベレスト遠征隊が成田空港を飛び立っただけなのにエベレスト登山隊は確実に登頂に向けて前進していると述べただけが。ブレーキの壊れた車のワイパーが動いただけでは物事の解決になんら前身は無いと明確に表明しない二枚舌ドヤ顔なのだ。信用出来ない野田。

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