橋下流戦略は「船中八策」から「暗中模索」への手法

橋下流はぶれないだろうが
 最初に述べておくが大阪維新の会ならびに橋下徹大阪市長に特に感じるものは無い。例えるならば高校の生徒会で勢いのある奴が居るな程度の感覚だ。
先に書いたように政治の手法が選挙での次回当選を目的にした政治屋による政治に陥ったのは、日本の戦後民主主義の進むべき方向の過ちだった。その旗頭の自民党が民主党によって政権交代した。しかし、未熟、未経験では済まされない日本の立法府が抱える問題点を自民党と民主党の相乗効果で国民に「見える化」した。政治主導が出来ないほど政治家は国家観を失い、官僚は着々と個別対応を積み上げてきたのだ。それが、現在の日本の統治形態だ。
 新しい政治、新しい統治機構は最終的に国民が作っていくしか無く、行政府に引きずり回される立法府を国民の手に取り戻す1手法として橋下流は存在意義がある。国民は新しい流れに着目こそすれ是々非々で橋下流に対応するのが賢明だってのが僕の立ち位置だ。
 現在の国家議員の船中八策に対するコメントは情けないほど器量の狭いものが多い。国を背負っている意識が無いのが明らかだ。石原伸晃幹事長にいたっては「維新八策の実現には憲法改正が必要だから難しいだろう」ってコメントだ。自民党の要綱には憲法改正があるではないか。その自民党の要職である幹事長を務める石原伸晃氏が「憲法改正は難しい」と言うのは敵前逃亡の戦犯だ。鴻池祥肇参議院議員なら「獄門打ち首、市中引き回し」の刑に処するだろう。
 国民生活に立脚して「生活が第一」としてマニフェストを編纂し選挙にて政権交代を実現した民主党政権だが、3年弱の期間で国防は米軍基地移転を含めて対米対応がメロメロ、外交は尖閣諸島を筆頭に領土防衛すら危険水域に入っている。
 国のあるべき姿からアプローチする政治手法が今の世の中に求められているのは事実だ。そして、それを打ち出せない現在の政治家や政治屋は維新・八策に迎合しようとしても藤原正彦氏の言う「立脚する論理の出発点」が違っているのだから、正直に行動するならs船中八策には大反対しか選択肢は無いだろう。
 弁護士出身の橋下徹氏は一度掲げた錦の御旗を容易には下げない。例え100%勝ち取れなくても少しでも実現すれば前進と考えるタイプだ。その意味では現在の政治屋には無いブレナイ姿勢は絶対堅持するタイプだ。

議論の場を作るのが弁護士の手法
 橋下流の物事の進め方はゴールを示してから議論を始める。弁護士出身なので法廷闘争の常套手段としてゴールを常人(裁判官や検察官)の土俵の外に設定する。ほとんど180度ベクトルが違うのが望ましいし、それが見つかると橋下氏本人はワクワクするようだ。そのゴールを先に述べる手法が当事者には過激に聞こえる。橋下氏本人のゴールとは、数学用語で言えばベクトル値であってスカラー値では無い。解りやすく言うと方向を示したもので、量的なものは刺身のツマのようなものだ。先に橋下氏がブレナイと言ったのは方向がブレナイのであって、目標数値はマチャクチャにブレル。でも、橋下氏はそれをよしとしている。
 これは100%の無罪ってのは無いが、無罪の方向と無罪の度合いが裁判において重視されるからだ。民事訴訟で多い双方の過失割合あたりの話だ。市中金融の取り立て代行まがいの裁判が多かった弁護士としてはさもありなんな行動規範だろう。
 相手は直球しか投げてこない。この直球を曲げることはしない。しかし、打ち返すのは100%ホームランである必要は無い。ポテンヒットでもピッチャーゴロでもバントでも相手は「抑えてやった」と満足する。至極、扱いやすい対象ではないか。
 出来ない理由を並べて議論をするのは前向きでは無い。相手だって出来ないことは承知している。ただ、議論がしたいのだ。だから180%違うベクトルで攻めてくる。それを実現するにはこれが必要だ、しかし、これはなかなか入手が困難だとかみ砕いていくのが議論の方法として好ましいだろう。
 最初から「憲法改正なんてできっこない」ってブーメランで墓穴を掘るような真似だけはしてはいけない。

船中八策で暗中模索は100%想定内
 橋下徹大阪市長はしたたかだと思うのは上記の様相もさることながら、全て計算ずくで反論の余地を残さないこと。いや、正確には反論させながら追い込み先にしっかり落とすこと。彼にとって敵は自分を盛り上げる存在で極論すれば彼の発言全てがリトマス試験紙なのだ。うかつに返答していては何もかも失う。
 そもそも、議論で飯を食ってきた弁護士に、その有能無能はあるにしても、太刀打ちできると考えるのがおかしいのかもしれない。最近橋下徹氏の攻撃の方向は学者先生に向けられているが学者は現場主義で論破出来ると踏んだからだろう。ここにも橋下徹氏の計算の緻密さがある。この学者先生攻撃キャンペーンで橋下徹氏への攻撃を断念したチキンな学者先生は多い。一見、相手せずに見えるが、実体はこれ以上橋下徹氏に関わったら自分の名声が傷つくって消極策しか散見されない。
 実は船中八策を最初に言い出したのは石原慎太郎東京都知事だ。これを受けて橋下徹氏が維新・八策のネーミングを行った。もちろん、本文を読むと政策のてんこもりである。実現可能性を考慮していないのは、ベクトルを示せば良いからだ。現に、坂本龍馬が起案したと言われる船中八策もガイドラインは書いてあるが個々の細かいことは書いていない。ま、昨今の政治家は議員定数削減が80なのか5なのか、消費税が何%なのか細かい数値の落としどころばかり考えてるからベクトル的政策にはついて行けないのかもしれない。
 既存の政治家が付いてこれないのも橋下徹氏の計算だろう。
 既存の政治をぶっ壊すには、船中八策で暗中模索に追い込むのが近道だろう。政局と選挙にしか関心が無い今の政治家や政治屋はとうやって勝ち馬に乗るかと維新八策を睨んでいるが、今までの政治家が経験したことのない手法で仕掛けられた政策に絡み取られて場外ホームランのボールと化して場外に退場させられるのが関の山だろう。

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2012.02.29 Mint