電力不足はピーク時対応力のキャパシティ
電気は蓄積しておくことが出来ない。一部は可能で実際に利用しているが消費量の大きさに比べて蓄積能力は3桁も少ない。揚水発電とか風力発電で使われるNAS電池が電力の蓄積機能である。最近はEV(電気駆動自動車)のバッテリー利用も検討されているが家庭の電力を賄う程度である。工業で使う電力は必要に応じて発電して供給することになる。
日本の電力の品質が高いのは、戦後経済復興の中で製紙業が大きなウエイトを占めていた時代、紙を漉く(引く)電力の周波数に変動があれば均一な厚さに出来ないので電力会社に厳しく電力(周波数)変動を抑えるように要求した名残である。今は多くの電気機器がインバータを解して直流に変換してから利用しているので周波数の変動はかなり許容される時代ではあるのだが。
日本は明治維新以降の電力整備にヨーロッパメーカーとアメリカメーカが参画したので西日本の電力の周波数は60Hz、東日本の電力の周波数は50Hzとなっているが、先の需要に見合った発電を手抜きすると電圧降下とともに周波数変動を引き起こす。このため、日本の電力会社は需要に見合った発電に世界で最高の制御を行っている。
さて、この需要に見合った発電を考えると発電設備は需要のピークに対応できなければ「電力不足」が発生する。発電の総量が不足するのでは無く、ピーク時対応発電能力が不足するのが「電力不足」だ。これを科学的事実として押さえておいて欲しい。
では、ピーク時と総供給電力にはどれくらい差があるのだろうか。
ピーク時電力を検証する
関西電力のピーク時電力の説明
ピーク時電力のグラフを見ると夜間の最低電力とピーク時電力には倍程の違いがある(電力のグラフを見ると夜間の最低電力とピーク時電力には倍程の違いがある(図はデフォルメされているので空気的事実ではあるが傾向は読み取れる))。昼間の電力に窪みがあるのは昼休みに機械を止める事業所や事務所の照明を消す事業所が多いからである。
現在は原発による発電が止まっているので下の緑色の原子力発電のゲタは外されている状態だ。
先に述べたように電力需給は富士山のような格好の一日の電力需要の形態で変動分のさらに富士山の頂上に対して「電力不足」が何万キロワットと言っているのだ。その富士山の頂上も3,774メートルと国土地理院が計測して普遍なものでは無く、日々変動する。そしてその変動幅は本州の場合、夏場の冷房電力がピークを押し上げるので気温の高い夏場の昼間が最も山頂の高い時になる。それは「予測」するしか無い。その予測した山頂に対して「電力不足」が何万キロワットと伝えられる。
昼間の数時間の需要に対応するために関西電力は全発電設備を保持しているのだが、夜間はほとんど使われない。余った(本来出力調整の出来ない原発の夜間需要が少ないときの文字通り「余った」電力)電力は揚水発電に回され昼間のピーク対応に利用される。揚水発電は原発と表裏一体と呼ばれる所以である。
さて、知恵の部分である。電力がピーク時対応するには発電能力が不足するのであればピークを下げる、分散する知恵を出す必要がある。これが合理的で経済的で民主的な知恵の使い方である。
大飯原発再稼働しか選択肢は無いってのは空気的エビデンス(根拠)に基づく誤った判断である。他の選択肢を意図的に隠蔽しているとしか思えない。
こと原発に関しては空気的エビデンス(根拠)優先で判断することが多すぎる。
例えば「脱原発」であるが、原子力発電を止めればリスクが回避されるような空気的エビデンス(根拠)を持ち出すがこれは間違い。
過去に貯まった行き先のない使用済み核燃料の始末を誤ると大変なリスクになることは福島第一原発4号機の使用済み(これから使う燃料も沈められているが)核燃料プールの水が減った(偶然、減っただけで済んだが)だけで大規模地域への放射能汚染が進むのは学習したはずだ。これが、万トン単位に各原発に保管されている。この始末をしないで「原子力から手を引け」ってのは無責任このうえ無い。これも空気的エビデンスの最たる物である。
原発全体については長くなるので項を改めることにする。
発明家「藤村靖之」さんこの情報なんかも「電力不足」にためになる。