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脱原発は人類の尊厳の放棄
ギリシャ神話で火の神様はプロメテウスだが、神話によると人類が火を手に入れたのは火山の噴火による溶岩からと言われている。一般的に起きる山火事には近づけず、固まり始めた溶岩に木の棒を突っ込んで火を手に入れたのは納得できる説明だ。以来、人類が他の動物と決定的に違うのは「火を使う生物」と言われてきた。「道具を使う生物」って表現もあるが、一部のチンパンジーや鳥には棒を使って食物を得ることがあるので、広い意味で道具を使う生物は人類以外にも居る。もっとも、産業革命で蒸気機関って火をエネルギー源にした機械を生み出すまで、人類といえども火は「照明」や「調理」以外に用途の限られたエネルギー源であった。 日本に黒船が来たのも太平洋海域でクジラを捕獲しロウソク用の油を採取する捕鯨船の燃料と水の補給基地を作りたかったためだ。(油採取のためだけにクジラを捕獲していた西欧が今、クジラの保護姿勢なのは不思議な歴史のパラドックスだが) マンハッタン計画って名前を知っているだろうか。カクテルの名称では無い。第二次世界大戦の頃にエンリコ・フェルミが当時のアメリカ大統領に送った書簡から始まった原子爆弾開発計画である。アメリカがやらなければドイツが完成させるって殺し文句でアメリカは当時未知であった核爆弾製造に取りかかる。 「マンハッタン計画」を私は当時ハヤカワ文庫で読んだが、今もあるのだろうか。面白いのはウランの濃縮のために電力を使うのだが、その電線である銅が戦略物資指定されて供給がままならないので銀で電線を作ることにして「アメリカ財務省の金庫から20トンの銀を供給してくれ」と伝えたら「銀はトロイオンスで重量を量るものだ。トンなんかで表現しない。何を考えているのか」と返答されたこと。 かくして、戦時中の非常事態の中でウランは濃縮されて原子爆弾が製造される。第二次世界大戦の生み出したものが原爆だ。ちなみに、歴史観は多々あると思うが第一次世界大戦が発達させた科学技術が航空機、第二次大戦が発達させた科学技術は電子工学と核と私は考えている。劇的に航空機の技術を発展させたのは戦争であり、それが第一次世界大戦だった。 かくして「マンハッタン計画」によってアメリカはナチスドイツに先がけて核爆弾を完成させる。あくまで、兵器としての核エネルギーの利用である。 歴史の事実として広島にウラン核爆弾が、長崎にプルトニウム核爆弾が投下され爆発する。特に大切なのは長崎に投下されたプルトニウム核爆弾の原材料であるプルトニウムは自然界に存在せず、人類が作り上げた核種だ。プロテメウスから得た火と同じ人類が自ら手にした核の「火」だ。 しかも、アメリカは実験と広島、長崎で原子爆弾を使ったことにより在庫を失ってしまった。急遽ウラン濃縮とプルトニウム製造を行わなければならないが、同時に進めていた無補給で航行を続けられる原子力潜水艦用の原子炉を発電機につないで発電事業を行ってプルトニウムを大量生産することを思いつく。ここで、原子力発電はプルトニウム生産(核兵器生産)のプラントとして位置づけられ以後、変更無く続けられる。 |
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2012.05.21 Mint
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