ポジティブな弁護士とネガティブな組合委員長

誰のことか解ると思うが
 危機管理への対応の側面から政治家を見ると本質が良く見えてくる。普段の行動が危機において180度違ったり、普段通りだったりするのは良く経験することである。
 ポジティブな弁護士は橋下徹大阪市長、ネガティブな組合委員長は輿石東民主党幹事長である。
 橋下徹大阪市長が迫れた危機管理は「橋下徹スチワーデス物語」で自らドジでノロマな亀に追い込まれるのを防いだポジティブな対応である。自らの茶髪弁護士時代を市民に思い起こさせて、これから家に帰って奥さんになんと攻められるか、娘に制服着ろとは言えない。と政治家の問題から家庭の問題に方向修正し、今回ばかりはバカ文春とは言えないと休戦協定まで発効する。
 さらに、スキャンダルの総合商社みたいな国会議員達を自陣に取り込んで国政への第一歩である政党を立ち上げたら、総合商社達が自分たち国会議員は地方議員より上と、何様のつもりかしらないが反旗を翻す。この時も、維新の会のトップは俺だとつっぱねる。橋下人気にすがりついてきた事は読み筋であるし、それを利用しない手は無いと清濁飲み込んだ橋下徹大阪市長としては、適当に泳がすのが得策と踏んでいるのだろう。
 一方の組合委員長は危機に際しても何もしない。いや、何かすると新たな危機が発生すると考えて死んだふりの先延ばしを選択している。民主党、自民党共に代表選挙が行われ、加えて民主党は内閣改造を行って国務大臣が入れ替わったのだから、国会で行政府のトップが立法府のトップと対峙する場面が必要だ。それが三権分立の民主主義の常識だ。しかし、国会を開催すると有ること無いこと色々起きるので臨時国会を開催しない。
 有ることの最大のものは衆議院解散だ。衆議院を解散すると民主党政権は過半数を失うのは明らかで政権を失う。解散しなければとりあえず来年(2013)まで政権は手放さなく良い。その間に起死回生策もあるかもしれないって淡い期待で臨時国会を先延ばしする。
 そもそも野党第一党の自民党の石破幹事長と輿石東幹事長はほとんど面識が無く、党首討論の声をかけるにしても橋渡ししてくれる人材も居ない。
 ま、寝たふりしていれば誰かが何かしてくれると、これまた淡い期待頼みの民主党幹事長なのだ。

危機管理は臨機応変の逐次対応
 弁護士、特に民事に長ける弁護士は相手の出方を逆手に取る手法が得意技だ。相手の意見の矛盾を突く所から議論が始まるので自らがボロを出さないために仕掛けない。橋下徹大阪市長の論議は何時もこの手法だ。「あなたはどう思うんだ」、「あなたはこんな事を知ってるか」である。この手法に「聞いているのはこっちだ」と言える記者は少ない。テレビで一番恥をかかされたのが北大の山口二郎氏だろう。2012年1月15日のテレ朝「報道ステーションSUNDAY」で、この罠に飛び込んでコテンパにやられている。
 実は人と人との間の危機管理の手法として衆人の前で議論をして優位と思わせるには橋下徹市長の手法は典型的なものだ。それに乗った山口二郎氏は危機管理能力で負けたってことだろう。最近のアメリカ大統領の公開討論も同じ手法が使われている。相手に質問して「知ってるか?」と聞いて「知らない」と引き出せばあとは一気呵成に責め立てることができる。この場合、「知らない」とは口が裂けても言わないことだ。言わさせられない状況に土俵を変えるべきだ。このあたり、田中前防衛大臣を責めたクイズ質問はやりかたが稚拙だったが田中元防衛大臣は「知らない」と答えてしまった。
 自分が窮地に陥っても起死回生の一発を放つことができる。
 一方、委員長を歴任、特に公務員の集団の委員長には危機管理は求められない。一番求められるのは調整能力である。また、危機管理の場を招かない能力である。その意味で衆議院の解散を望まない組合員(民主党)の意向をくむには何もしないことだ。何かすると危機管理の場を招くことになる。
 その手法で過去乗り切ったのだが、今回は場面が違う。相手はこれまた危機管理に精通した安倍晋三自民党壮総裁であり石破茂幹事長だから。しかも、橋下徹大阪市長と違い正論で正面から攻めてくるので何もしないでいると本丸まで到達してしまう。危機管理に一番必要な状況を読んで優先順位を付け逐次対応していくって基本が輿石東幹事長には意識が無いようだ。

衆議院投票は12月9日に設定
 野党である自民党の石破茂幹事長が勝手に決めている日付が12月9日投票説だ。現段階で臨時国会を開いて衆議院の定数是正法案、臨時公債法案を成立させて解散ってスケジュールは実現可能だ。実現可能なアドバルンを上げて民主党の対応をはかる。もし実行しなければ攻めの一手になる。これに民主党は黙殺で対応できるだろうか。
 民主党には選挙制度改革法案が仮に10月中に通ったとしても準備に時間がかかり選挙は1月以降にずれこむ、そもそも12月9日投票は実現不可能な案との意見もある。ま、自民党が民主党を攻めるネタなのだから実現可能性は無ければ無いほど良いって戦術なのだから反論しても意味がない。
 「近いうちに解散」は8月8日に野田佳彦総理大臣が発したのは国民の知るところであり、日にちが経つにつれて「遠くなる」ので民主党は追い込まれていく。そもそも、特例公債法案を通さないと行政府の運営が立ち行かなくなる。これは政権与党の責任になり、現場が資金不足に陥るってのは大失態となる。
 何もしないでいると刻々と危機管理の土俵に足を踏み入れることになるのだが、委員長出身の輿石東民主党幹事長は気が付いていないようだ。もしくは『危機に於いては必ず誰かが助けてくれる。今までもそうだった』と思っているのだろうか。いやしくも与党の幹事長の地位にある人間がそんな意識だとしたら、福島第一原発事故、沖縄普天間移転問題、先の国会での問責決議案、すべて一触即発の危機だったって勉強が出来ていないことになる。
 まさに「いまそこにある危機」これをポジティブに橋下徹大阪市長のように乗り切るのか、ネガティブに委員長の手腕で乗り切るのか、民主党政権の千秋楽はどちらにしても近い。


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2012.10.10 Mint