中国の尖閣占領は日本のファシズム台頭を広報

外交には活発なロビー活動が必須
 中国が本気で尖閣諸島を取りに来ている。本気と言うのはフィリピンやベトナムで展開した戦略と違った戦略を組み立てて活発に行動している点を指す。
 中国の過去の手段は漁船での領海侵犯、漁民の上陸、漁民保護のための海洋監視船の派遣、常駐、軍事力の行使。の順番だ。日本領の尖閣諸島を取るには、この方法では難しい。日本には日米安全保障条約があり、アメリカのご機嫌を伺わないとボタンを掛け違える。
 そこで中国が本気でやっているのがアメリカ国内に向けての「日本のファシズムの再来」キャンペーンだ。日本人は日本のことはよく知っているが諸外国の実情はなかなか解らない。いや、白紙状態と言っても良いだろう。同様にアメリカの国民は日本の国情は詳しくない。同様に白紙に近い。そこに、日本の戦前の行状をあげつらって、また、あの時代が来るぞとキャンペンを張る。これが中国の本気だ。
 従軍慰安婦問題で韓国が同様な方法で成果を上げていることを踏まえてのものかもしれない。
 尖閣諸島に中国軍(本物の人民解放軍)が常駐した時に日米安全保障条約の対象である「日本領」から尖閣諸島が外れるのは自明だ。にも関わらず集団的自衛権を行使するにしても、アメリカは民主主義の国だから大統領の発動指令が(正確には議会の)必要になるが、アメリカ国民を「日本のファシズムの再来」で洗脳しておけば、アメリカの若者が日本のために血を流す必然性が乏しいと国民は、その意見を集約する議会は賛成しないだろう。これが中国の描く尖閣諸島取りのシナリオだ。
 アメリカ世論を懐柔しておこうって政治判断は相当高度な手法だ。しかし、かつて日清、日露の戦争では日本が得意とした外交手法であった。明石元二郎(大佐)に当時の金で100万円(現行邦貨では400億円強)を持たせて銃後の世論、この場合はロシア王朝に敵対する勢力を懐柔したのだった。

日本ファシズムの再来と非難
 中国は自国が共産党一党独裁で、国民の人権も尊重されていない社会であり、一方日本は国政選挙があり国会議員は国民に選ばれてる曲がりなりにも民主主義国家だが、こと紛争が起きた場合、どちらが「正義」かは非常に相対的なものになる。
 そもそも、武力紛争はどちらも「正義」と思っているので、問題は部外者にどう見えるかだけである。さらに加えると部外者はどちらに付いたら自分は有利かってことだけだ。
 第二次世界大戦の時もアメリカは国論としては大戦不参加であった。時のルーズベルト大統領がチャーチルの要請に対して武器の輸出は行うが自国の青年を戦闘に出せなかったのは世論の影響が大きい。
 それが日本軍の真珠湾攻撃をある意味チャンスとして参戦したのは歴史上の事実だ。歴史にifは無いが、アメリカの参戦が無ければバトル・オブ・ブリテンでイギリス軍がドイツ軍を食い止められたか疑問である。
 つまり、歴史に良い手本があるのだ。国論こそがアメリカのある意味で弱点であり、それが民主主義の手間のかかる所だ。特に対中国となると、国民個々の考えに加えて経済界の「どちらに付いたら自分は有利か」も大きく影響する。10数億人のマーケットと1億数千万のマーケットでは選択肢は限られる。
 この事態を民主党に限らず日本の政治家は理解しているだろうか。特に気になるのは石原慎太郎東京都知事、橋下徹大阪市長そして自民党総裁の安倍晋三氏の言動である。
 国内向けに強気で発言した事柄が中国に筒抜けで先の「日本のファシズム再来」キャンペーンに利用される。
 だから言動を控えろと言うつもりは無い。ただ、自らが相手を有利にする愚行は避けて貰いたいのだ。その配慮を忘れるととんでもないことになる。

尖閣諸島への警察官の常駐が必要
 期が熟したと見たら中国は過去に行ったと同様に漁船の大量(1000隻なんか簡単な国だ)領海侵犯、上陸を行ってくるだろう。この時に海上警備だけで上陸阻止は難しい。まして生身で泳いで上陸したら船舶を体当たりさせる訳にも行かない。
 自衛隊に海上警備行動で出動させるのは相手の思うつぼだ。国際的に自衛隊は軍隊なので中国の民間と国家の交戦権である軍隊の戦いになってしまう。
 だから、ここは警察の出番になる。何千人上陸しても出入国管理法違反で検挙していくのだ。いわゆる拿捕を警察が主、海上保安庁が従で行う。拿捕した船舶は自衛隊の魚雷防御ネットで囲った水域で係留する。
 まずは、紛争状態を軍隊無しで作り出す。そして、外交である。この場合、外交は暗に武力行使のカードをちらつかせなくてはいけない。最初から武力行使(自衛隊発動)を使わないのはこのためだ。
 で、残念ながらここでアメリカ頼りになる。国連に国際紛争地帯と訴えるにしてもアメリカの力が必要である。
 ここで、最後の扉を開いたら、「アメリカ国民は、日本のために血を流したりはしないよ、だって日本はファシズムの国なんでしょう」ではどうにもならない。
 それなら最初から全力で自衛隊投入のほうがましになってしまう。ただ、尖閣諸島紛争を自ら終焉に導くだけ日本に外交力は無いのが実情だが。
 日本は外交が下手だとかアメリカ依存だとか言われるが、中国が後ろ盾であるアメリカに働きかけている事実を正面から受け止めて政治家は微力でも外交を過たない配慮が必要になる。
 「歴史的に日本の領土だ」なんて寝言は国際社会では通用する論理では無いってことを肝に銘じるべきだ。


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2012.10.23 Mint