日本の組織の英語表記には矛盾が多い

海上保安庁の名称矛盾
 海上保安庁の英語表記はJapan Coast Guardだ。装備品に明記されている英語名称は Coast Guardとなっている。これの日本語訳は「沿岸警備隊」だ。
 つまり、海上保安庁→英語表記→Japan Coast Guard→日本語表記→沿岸警備隊となる。
 組織が出来た当時は警察予備隊」現在の「海上自衛隊」と区別する意味で「軍」の色の無い名称である「Maritime Safety Agency Japan」だったのだが、2000年に海上保安庁の活動を広く広めるためと称して、ロゴの統一等をはかった時に英語表記が改訂された。この時は国会で問題にされなかった。ま、密かに改訂とは言わないが国会での議論の対象にはならなかった。
 日本語では「軍隊」と「警備隊」は違うものとしておきながら英語表記では軍隊になっている。アメリカではCoast Guardは、陸軍、海軍、空軍、海兵隊につぐ5番目の軍隊と位置づけられている。同一名称を使えば海上保安庁も陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊に次ぐ4番目の軍隊となる。
 そもそも、自衛隊だが「Japan Self-Defense Forces」英語表記するが「Forces」は「隊」の意味では無い。隊は「Unit」が適語である。「Team」も適語かもしれない。規模を表したいのなら「Group」でも良いだろう。ことさら武力を連想させる「Forces」は使わない方がよい。「Forces」の意味は、 諸力, 戦, 軍, 兵 が該当する。が、これもまた国会で論議されることは無い。
 つまり、自衛隊→英語表記→Self-Defense Forces→日本語表記→自衛軍
である。  いまさら、「自衛隊」を「自衛軍」にするとかしないとか名称だけに限って言えば無意味な議論である。で、国防軍だと少し意味合いが違ってくる。英語表記はNational Defense Forceが一般的だ。

国防軍と自衛隊(自衛軍)の違い
 国防軍はその名称の中には「自衛」を含むが、広い意味では「国益を守る」も国防軍の範疇に入る。ナチス・ドイツの時代のドイツの軍隊は「ドイツ国防軍」と日本語に訳されている。専守防衛とはほど遠い活動であったが「国防軍」とはそうしたものだ。
 政治情勢により侵略軍ともなりえるのが国防軍である。
 何故、自民党はあえて世界の常識の「自衛軍」では無くて「国防軍」に名称を変えたいのか。それはとりもなおさず「専守防衛」の現在の自衛隊のドクトリンの変更も含むのか。そのあたりの説明がなされないまま「国防軍」の言葉ばかりが一人歩きしているのは、今に始まったことでは無く、数十年培われた政治の無作為の伝統である。
 内容が明確で無いものを選挙の公約にして国民に選べと言っているのは言語道断である。また、原発ゼロなどと出来もしないことを公約にして選挙で当選したらどうするのか、自爆テロの自作自演ではないのか。
 「国防軍」に変える大きな目的は「専守防衛」を一歩進めて「集団的自衛権」を担うことが可能な軍隊にする目的が見え隠れしている。
 さらに加えて、政治家がシビリアンコントロールの美名の元、使いやすい軍隊を保持することを意味する。現在の自衛隊は政治家が使いこなせない。諸外国は日本の外交カードの中に軍隊が含まれていないのを見抜いているから、日本の外交には力が無い。
 国防軍は外交カードたるだけの汎用性のある軍隊を企図している。
 政治家に軍隊を任せて良いのか。これが、「国防軍」創設に向けた大きな国民的課題である。民主党に政権を任せて良いと思って、結果、このていたらくだったのだから。

専守防衛がこれからの軍隊のありかた
 国益のために軍事力を使う時代は歴史の中に過ぎ去ったことではないか。圧倒的に軍事力優位の時代は去りつつある。何故ならば、背景に核兵器の技術進歩がある。核兵器は廉価なコストパフォーマンスの高い兵器である。使う場面は無い戦略兵器である。あの北朝鮮であっても簡単に作れる。そもそも、プルトニウムやウランを強奪した後、核兵器に加工するのはサリンを作ったオウム真理教でも出来る。
 日本の技術をもってすれば1年もかからない。(実証実験がやっかいだが)
 専守防衛は究極的に戦略兵器によって平和を維持する方法論になる。「怒らせたら怖いでぇ」って人を常識有る人は怒らせない。報復攻撃が可能であると威嚇することが戦略核兵器の用途である。
 「集団的自衛権」の発揮は高度な政治判断を伴う。軍事同盟って考え方自体、既に歴史の中に埋没しているのかもしれない。日本は世界の戦争から学んでいないので軍事戦略については実戦無き理論派が大半を占めている。これから先の国際紛争の動向に鑑みて戦略を決めていかねばならないが、対中国との関係を考えると短期的には集団的自衛権、長期的には自主防衛が必要だろう。
 つまり、将来的な日本の核武装だ。
 経済協力で貢いだり、相手の要求に屈服しないためにも、長期的な核武装構想を考えておく必要がある。
 そもそも、歴史に学ぶと、菅原道真が遣唐使を廃止してから(白紙(894)に戻す遣唐使)日本は自国内の文化が大きく育った。あまり、中国と取引していても良いことは無い。唐は907年に滅亡している。長期的な展望で国交と軍備を考えるべきだ。
 短期的に「自衛軍」長期的に「国防軍」が正しい選択ではないか。


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2012.12.14 Mint