GPS測定値から地震を予測するのは可能か?

国土地理院のデータは公開済み
 最近の測量にはGPSデータ利用が欠かせないが、この精度の補正のために国土地理院は全国20km間隔で約1240点の観測所を設けて電子基準点を設置している。この電子基準点の移動状況がすなわち地表面の移動状況で、その概要はここで目にすることができる
 各種補正処理を行う必要があるので発表は1ヶ月程遅れる。他の仕事が忙しいと数ヶ月放置されることもある。このデータから北海道札幌市を起点とした地表面の動きを時系列に追ったHPがここにある。北海道については下段にあり、右側の日付(測定データ対象日付)をクリックで、その変化を知ることができる。
 2月2日に十勝地方中部地域で深度120km(速報値)でマグニチュード6.4(速報値)の地震が起きた。内陸地震だったのと深度が深かったので地震の揺れは広範囲に及び、最大震度は浦幌町、釧路市、根室市で震度5強を観測した。
 以下はこの地震の様子を日本気象協会のホームページより引用したものである。


地震の原因になるアスペリティの有無
 中学校の理科の時間に学習するが、地球は中心から地表に向けて、内核、外殻(ここまでは液体)、マントル、地殻と特徴的な層で形成されている。本来マントルは個体なのだが、長い時間を前提にすると対流を起こす液体(純粋な液体と区別するために以後「流体」と呼ぶ)である。このマントル対流によって地表面の地殻が移動するのが大陸移動である。プレートテクトニクス(プレート理論)が、この原理を唱え一般化したのは1964年、東京オリンピックの頃だった。有名な小松左京氏の「日本沈没」の理論補強にも使われている。
 プレート型地震と呼ばれる地震はマントル対流の上に乗った大陸が他の大陸とぶつかり、下に沈み込む所で起きることはテレビ等の単純化された映像で何度も目にしている。
 長い時間をかけてゆっくり歪んでいくなら急激な地震は起きないはずである。個体と思われているガラスもゆっくりと変形させると割れることなく曲がる(ガラスも数年単位で見れば「流体」である)。テレビの海洋のプレートが大陸のプレートの下に沈み込み、あるとき跳ね上がって地震が起きるって図解も、「あるとき」が何かは教えてくれない。
 実は、地震はアスペリティと呼ばれる場所で起きる。プレートとプレートの境界面ではスムースに滑りあえない固着(ひっかかり)部分で発生する。固着するのでプレート同士の移動が止められ、ここに移動のエネルギーが岩盤の圧縮の形で蓄積される。この場所がアスペリティである。そして、アスペリティに貯まったエネルギーが破壊に耐えられなくなって割れた時に地震が発生する。
 これを日常目にすることの多い場面に、たとえてみよう。
 川の河口付近でゴミの浮いた水が流れている。よく見ると均一に流れるのではなく、水面下に何かあるのか一部で左右に分かれてながれている。この「水面下の何か」が川の流れを阻害するアスペリティだ。これを先の国土地理院の電子標準点の動き、すなわち川の流れと移動状態(流れの阻害)で読み取れないだろうか。これが今回の考察の趣旨だ。


2012年12月から少し変化がある
 下図は2012年12月08日の1年前との平均値比較の状態

 下図は2013年01月26日の1年前との平均値比較の状態

 これを比較検討するには先に書いたホームページで右の日付をクリックするとよく解る。
 上下を比べると、東日本大震災の影響で西側に南に向かう動きがあるが、全体として左上、つまり北西に向かって北海道は動いている(流れている)。ところが、下の図をよく見ると、北西に向かっていた流れの一部に乱れが生じている。
 具体的に道北地方の天塩あたりで北西に進む流れを阻止して東に向かわせる流れ。富良野あたりでは急激な北西への流れが読み取れる。今回公開されたデータは1月26日までなので十勝地方中部地域で2月2日に起きた地震の影響は反映されていない。逆に言うと地震前の状況を表している。
 今後2週間ほどで2月2日の地震後の様子が発表になるが、この地表の移動の乱れが地下のアスペリティによるものかどうか、あと1ヶ月経ったら、この項に加筆して確認してみたいと思う。
次回、3月上旬に続く

2013年2月の北海道のGPS情報
 2013年2月26日加筆
 2013年2月2日の十勝地方中部地域の地震は震源が深かったこともあり、2月9日の国土地理院のデータでは確認ができない。
 2月9日の北海道地域のGPSの移動状況
この図で注意を引くところは石狩当別のGPSの標準点の移動が短期間で北方向から南西方向に変化していること。
 2月9日の北海道地域のGPSの移動状況
 地下のアスペリティで移動方向を変えられたのだろうか。だとすると暑寒別岳方面に地震の傾向があるってことになるが、実はこのあたりは北海道でも有数の無地震地帯なんだよなぁ。
ただ、ここには30年以内の活動がほぼ0〜2%の当別断層はあるのだが。

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2013.02.12 Mint