TPPは外圧による改革推進方策
TPPを受け入れてアメリカの属国になるのかとの批判をプロ市民の面々が口にするが、対等な条件の国が対等に付き合う枠組みがTPPだ。だから、アメリカが主導するのでは無い。アメリカが一人勝ち出来る訳でも無い。その構造は先に書いたとおりだ。
一番影響が大きい農業だが、これはTPP議論の前に改革が進まなかった農業の問題を包含している。「TPPの論議→農業問題→平均就業年齢が65歳に迫る農業→農業改革が必要だ」の流れになってTPP問題を話していたはずなのに、いつしか農業改革問題に議論が移ってしまう討論番組が多い。それは当然で、TPPは農業改革を進める黒船で、そのことを安部晋三総理大臣は100も承知でTPPを農業改革のトリガーにしているのだ。
先に書いたように日本のコメは、実は国際競争力がある。高い品質と経済発展が続くアジアの米需要に合致するからだ。あと一歩で輸出産業に変身できる。但し、現在のような兼業で自家消費+余剰分を出荷なんて制度下では海外に打ってでられない。商社に代表されるような大規模で品質が均一な製品としてのコメを造り集荷しなくてはならない。それには農業の法人化が避けて通れない。それに気がつく農協がある地域はコメは作付けを拡大して国際貿易商品に育っていくだろう。
小麦と砂糖関連はまったく国際競争力が無い。こちらはコメとは逆に量の農業から質の農業に転換せざるを得ない。ただし、そのことにいち早く気がついた農協がある地域では植物工場化を進め「量の農業」を高品質で多品種な「質の農業」に替えていくだろう。
農家は自分の農地の一部を宅地や商店街に転用し、残った農地で植物工場を運営し収益をあげることになる。1年に1回収穫する農業から通年栽培の農業への展開だ。北海道の大規模農地は量から質の農業に変換する時に大量の土地を提供できる。本州のニュータウンが数戸の農家の農地を集めると出来てしまうのだから。
自民党が集票のために甘やかした農業を自らの力で変革出来ないのなら外圧を使うしか無いってのは、これまた安部晋三総理大臣は100も承知のことだ。
国内の不満を反日に名を借りて海外に持ち出すのは中国の専売特許のように言われるが、国内政治が行き詰まれば国外を利用するのはどこの国でもやっている事だ。
それを正面切って言わないだけだ。本来、マスコミがそこに気がついて一大キャンペーンを張れば良いのだが、今の我が国のマスコミにはその思考力が欠如している。
TPPは21世紀の軍事同盟だ
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」は初代ドイツ帝国宰相のビスマルクの言葉だが我々は歴史に縛られてはいけない。TPPは古き時代の軍事同盟を21世紀に焼き直したものだ。
冷戦の時代まで国は安全保障のためにどちらかのグループの安全保障(軍事同盟)に属さなければ存続の危機に立たされることになった。その意味でNATOとかワルシャワ条約機構が存在している。最近はNATOが日本と相互関係を結ぶなんて昔は考えられなかった関係が構築されつつある。もはや地勢的問題を超えて世界が一つになる時代が来ている。サイバー・テロは戦場が遠いか近いかの地勢的要因は関係ないのだから。
安部晋三総理大臣がTPPの効能を100も承知なのは上記の事柄に加えて憲法改革にまでおよんでいる。日米で物事が解決できる時代は冷戦の時代までで、これからは多方面とWin-Winになる時代になる。そのためのTPPであるが、一方日本の懸案の自主憲法もその中で語られる。先に民主主義で自由経済で法の支配が確立が3条件と書いたが、日本は法の支配がなされているが、憲法だけは独立国状態とは言えない。憲法を改正する力があることが真の民主主義であり法治国家なのだ。現在の日本国憲法では放置国家でしか無い。
国民の力で憲法を変えられる。それが真の民主国家である。そこまでたどり着くためには日本は先の大東亜戦争での敗戦時と同じ世の中のガラガラポンが必要になる。それがTPPなのだ。
あの当時のように急激では無いが、日本の既得権益構造が崩れる。改革がかけ声だけでは無く実際に肌に感じあるほど身近で起きる。その機運に自主憲法を乗せるには今から仕掛けが必要だ。
TPPにより間違いなく日本に維新が来る。その仕掛け人が安部晋三総理大臣であり、安部晋三総理大臣が目指す日本国家像はポストTPPで起きる新しい日本そのものなのだ。
皮相的な経済問題にして損得勘定で考えているうちは我々は「B層」に成り下がってしまう。