憲法は基本的に国民が国家を規定する法律

憲法は法律の法律、では無い
 憲法学者は憲法を通常の法律の上位の法律と説明するが、憲法学者同士の会話なら解るが、国民に憲法を説明するには適語表現では無い。国民が国家を睨む、制約する、縛るのが憲法だ。だから、国家は憲法に背いた活動が出来ない。
 古代、国家は領土と国民と明文化された憲法が成立の条件であった。そのため、古事記や日本書紀を整備して日本が国家の体裁を整えたのだった。現在の日本国憲法は大東亜戦争の終結とともに旧憲法を廃棄し、GHQ主導で新たに作った作文だ。GHQの中にも憲法学者は居なかった、そこに込められた思いは、日本の軍国主義復活の阻止だけだった。他は、アメリカの憲法から丸写しだ。
 これを日本は国会で批准しているので必ずしも「押しつけられた憲法」と表現するのは正しくないが、当時は連合国統治下の日本は独立国家では無く自由な国民を代表する国会が無かったのだから「強制された憲法」と呼んでもさしつかいないだろう。
 そもそも、憲法とは何か。それは主権在民の民主主義国家が国民が国家を規定する法律だ。国民が規定する国家とは何か、それは、司法、立法、行政の三権だ。
 まず、この原点に立ち返らなくては憲法改正論議は始まらない。
 国会議員は国民の総意を受けて憲法を改正できるが、今の憲法96条にはその方法論が記載されていない。安倍晋三総理は前回の総理大臣の時に日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)を成立させ、憲法改正の手順を明確にした。
 国民投票法では改正案を(修正箇所毎に)作り、国会で審議し、国民投票(修正箇所毎に1票毎)により改正の賛否を国民から承認をもらう。改正が承認されると天皇が国民の名において公布する。

国家を司法、立法、行政から規定する
 自由、平等、博愛はフランス国旗のトリコロールの理念だが、憲法も国家の理念を反映したものになるべきだろう。今回、憲法改正を行うのなら、三権にそれぞれ規定しなければいけない国民の意向を取りまとめるべきだ。立法府だけが憲法を改正する原動力では駄目で、あくまで国民主権の考え方に立脚したものでなくてはならない。
 自民党の憲法改正案は一括改正なので、解りずらいが(その新旧対比表がここにある)注意して読まなければならないのが憲法9条なのだが、上が改正案、下が現行憲法だ。読むと、現状の自衛隊を国防軍と定義したもので、特に「憲法9条を絶対死守!」とならない。既成事実を憲法に明文化したもので、いままでも憲法解釈って手法で既成事実を積み重ねてきたのだから。この憲法になって日本が好戦的になるとしたら、それは国民が、それを選択した時だろう。ただし、5項の実質、軍法会議のような項目は間違いだ。三権分離の崩壊を招く。自衛隊(国防軍)だけで裁くのでは大甘の裁定になる。自衛隊法(国防軍法)に基づき司法が裁くべきだろう。もっとも「国防軍」って名称もできが悪い。第二次世界大戦の時のドイツ軍はドイツ国防軍だった。「自衛軍」で十分だろう。
 第八章の地方自治は一歩も前進していない。日本が小さな政府で地方に分散した連邦化することは現在の官僚の利権を奪うので明記されていないのだろう。
 また、直接選挙による大統領制度や衆議院も参議院も残る。
 全体的にてんこ盛りで長すぎるし、明確な国家像が描かれていない憲法だ。妙に細かな文言が出てきて、行間に既得権益保持が見え隠れする。


21世紀の憲法に必要なもの
 今の日本国憲法は20世紀の時代背景を受けてのものだ。もちろん、先に書いたようにアメリカ憲法の丸写しと日本が軍国化しない重しに力点を置いている。当時の日本は経済大国でもなかったし、国土は焼け野原の敗戦国であった。
 戦後復興を歴て、憲法に手を付けなかったのは、そのほうがアメリカの核の傘の下で経済発展を進められるからだ。軍事費に対して国民のアレルギーも強いので政治の課題から意図的に外して来た面もある。憲法改正が党是の自民党が利権政治に陥ったのは、まさに、目的を失った政党だったからだ。
 しかし、時代は21世紀になり、アメリカ頼みの国際情勢は新しい軍事同盟の時代に入っている。冷戦は「誰と組んで平和を維持するか」の時代だったが、現在はまさに蜘蛛の巣のように、Web化した多元な平和条約の時代だ。それがTPPであることは前に書いたので繰り返さないが。
 軍事力が外交カードの1枚であることは事実だが、経済政策も外交カードの1枚になるのがTPPだ。経済が平和を推進していく時代が21世紀だろう。
 その中で、日本国憲法の改正だが、このよな時代背景を踏まえた自民党の「憲法改正素案」とは思えない。落第点だ。作文としてもバランスが悪い。先に書いたように「利権がかいま見られる」自民党的な憲法になっている。
 これでは国民投票で否決される。
 で、国民から憲法改正が否決された時に、何が起きるのだろうか。法律には何も明記されていない。国民の義務まで憲法に明文化するのだから、政策の失敗に責任をとるのか国会議員の義務だろう。公務員の無謬性(むびょうせい)も改めるべきだろう。
 国民の国家観とほど遠い憲法改正論を国会で決議して、国民投票で否決されたら内閣解散か衆議院解散。何も無かったかのように立法府にしがみつづけるのは無し。国民投票法に明記すべきだろう。

button  現在の選挙投票方式は憲法違反だ
button  国民投票法で憲法改正の道筋は出来たが

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2013.05.07 Mint