北方領土は3島返還が最善の解決策

領土問題はイデオロギー化するが
 日本が抱える領土問題は4つある。西では韓国との竹島問題、中国との尖閣諸島問題。南では沖ノ鳥島を岩であり無人島では経済水域は存在しないと主張する中国との問題。そして、ロシアとの北方領土問題である。
 北方領土問題は先の大東亜戦争の後遺症で反ソ連感情が残っているので容易に解決しない。竹島と同じロシアが実効支配している状態が続いている。
 ここに来て、安倍晋三総理大臣とプーチン大統領が会談して、北方領土問題の解決を行い、日ロ平和条約締結を行おうとの機運が高まっている。
 始めにことわっておくが、タイトルの「3島返還」だが、「2島+α」でググルと何冊も本や論文が出てくる。しかし、筆者は3島返還の立ち位置である。だから「+α」は国後島を考えている。しかも「上手く行ったら国後島も」では無く。明確に歯舞群島、色丹島、国後島の3島である。択捉島は外交的に帰ってこなくてもしょうがないとの立ち位置だ。
 領土問題は日本国内でもイデオロギー化しており、一括四島返還以外の選択肢は無いと決めてかかると子孫に解決策を委ねることになりかねない。昔の学生運動の代々木派、反代々木派、はては革マルとブントみたいなイデオロギー対立を国内で行っていたのでは北方領土問題は解決しない。ここは純粋に外交の基本に立ち返って解決策を考える必要がある。
 1956年の日ソ共同宣言で「平和条約締結後、歯舞・色丹を引き渡す」との合意は出来ている。ロシアもこの合意は反故にするつもりはないようだ。逆に日本が四島一括返還を持ち出して膠着状態に陥ったのだった。
 四島一括返還論の根拠は、北方領土は先の大東亜戦争の時にソ連が不法に侵略し実効支配を始めたもので、元々日本国領土であったとの主張である。
ところが、サンフランシスコ平和条約(1951年)では、千島列島の放棄は確約した。この中に国後島、択捉島が含まれると当時の日本政府は言った。それが1956年には国後島、択捉島は千島列島では無い、日本国有の領土だに主張が変わってしまう。
 実は裏話があって、冷戦構造を明確にしたいアメリカが日本とソ連の友好条約を望まず、日本とソ連の間には未解決の紛争問題を持っているように仕向けたって説がある。大前研一氏は
1956年8月19日にロンドンで行われた重光・ダレス会談がきっかけだった。
 この会談でアメリカのダレス国務長官は、二島妥結による解決を試みようとした重光葵外相に対し、「日本はソ連に四島一括返還を求めるべきだ。二島返還で妥結するなら、沖縄を永久に領有する」と脅した。
と、情報を公開している。
 そこで日本は、国際法上は日本に帰属するって理論を前面に押し出してソ連と対峙する。つまり、「四島一括返還」はアメリカの指示に沿ったもので日本のアイデアではない。絶対に当時のソ連が飲まない主張をアメリカ主導で行ってきた歴史を踏まえておく必要がある。
1964年には「北方領土」の名称が使われ、以後、北方領土問題と称される。

「ひきわけ」は「50:50フィフティ・フィフティ」
 ロシアのプーチン大統領が大統領選挙に再登板する時に北方領土問題を記者から聞かれて「柔道には「ひきわけ」がある」と発言して、プーチン大統領が北方領土の解決に向けてメッセージを送ってきた。これに対して安倍晋三総理大臣は総理就任後、ロシア訪問に向けて森元総理を特使としてロシアのプーチン大統領の元に派遣し、北方領土問題解決に向けた本気度を探った。
 このあたりから情報戦に入り情報を小出しして互いの腹の探り合いや世論の動向の探り合いが始まるのだが「ひきわけ」に続いてロシアが提案したのが領土面積の半分分けだ。既に歯舞群島と色丹の返還は1956年に合意済みなので、ロシア国内を説得する必要は無い。次の+αを領土の面積で行おうとするものだ。これは過去にロシアが国境問題を解決するときに使った手法だ。ただし、これは国境紛争の解決策であり、領土の帰属問題には適用出来ないとロシア側も認めている。
 この面積半分案は択捉島の地面に南西に国境線を引くことになる。3.5島返還などと呼ばれる。これでは日本が地面に国境を持つことになり、はなはだ境界線の管理が難しくなる。また、行政府範囲が文字どうり3.5島に分断される。
 実は2島返還のみでは北方領土の土地は7%の広さしか無いが、海域面積は40%にも達する。さらに国後島が入れば80%まで海域は日本領になる。
 ここは、択捉島をあきらめて、3島返還を確実なものとして、あと0.5を海域確保の+αと位置づけた交渉が必要だろう。
 先に「外交の手法で」と書いたのは、北方領土だけの問題では無く広く国益を考えた上での北方領土の返還交渉とする必要があるからだ。


何故、国後島までか

 択捉島と国後島の間の国後水道に国境である中間線を設けると、大きな島それぞれが相互の経済圏を構築できる。双方が相互補完する市場を形成できる。
 2006年時点で国後島の人口は6,801人。全てロシア国籍である。一方、択捉島は2006年時点で6,739人。ただし、北海道東方沖地震での被害が激しく、人口が急減した。
 択捉島のロシアのインフラ投資は国後島の比では無く、1,500m規模の空港、国防軍がMig-31を20機程度配備している。一方、国後は火山と湖の島でインフラ整備は択捉島程は進んでいない。
 北方領土(3島)返還後、国後島のロシア人が択捉島に移住するのは容易だ。インフラもそれなりに整備されている。また、需給の関係を維持したまま水産加工の工場を移転するのも容易だ。
 択捉島まで日本に帰属させると、当面は日ロの共同管理になり日本資本投入が求められる。現在の北方領土の利用目的は海洋資源とレアメタルと観光くらいなので、極力インフラ整備を行わなく済む国後島までが日本資本投入の経済的な落としどころとなる。
 また、領土問題解決とともに平和条約が結ばれ、相互の投資が促進されれば全体として国益に寄与する。特に天然ガスの供給がロシアから行われ、長いパイプラインを必要としないので廉価に輸入ができる。また、日本の深深度削岩技術は高いのでロシアの天然ガス採掘に日本の技術が輸出できる。
 現在のロシアの経済状況は天然ガスを中心にエネルギー収益で潤っている。その国情を利用して長年の懸案であった北方領土問題を解決し、相互の貿易を振興させる。それが安倍晋三総理大臣に課せられた責務だ。プーチン大統領も北方領土のインフラ整備は頭の痛い問題だ。そもそも、ロシア人が済みたがらない問題もある。
 さらに、中国の出方に対抗するのに日ロの平和条約は国境を接しているロシアにも日本にも価値がある。日本の国防外交にも貢献することになる。
 4島を狙って1島も得ず、にならないように、手を打つのは、今でしょう!

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2013.05.13 Mint