安倍晋三総理大臣の4本目の矢は2020東京オリンピック

これは9月5日に書いているが
 2020年のオリンピック開催地が9月8日早朝(日本時間)に決まる。現在招致に動いているのは日本の東京都、スペインのマドリード、トルコのイスタンブールの3都市だ。
 安倍総理大臣もG20を中座してブエノスアイレスの会場に向かう。何故なら東京都のオリンピック招致が成功すれば、消費税増税が可能になると踏んでいるからだ。
 日本の消費税増税には各国とも国際公約と受け止めている。日本の消費税率が先進諸国に比べて低いのは先進諸国には無い赤字国債を発行しているからだ。国の借金とも言える国債がGDPの3倍にも膨らんで、なおかつ未来への減少の道筋であるプライマリーバランスがマイナスであり続ければ、日本は何時とは言わないが財政破綻国になるのが明らかだからだ。
 プライマリーバランスの改善に向けて増税は必須であり、しかも、法律として定めたものが守られないのであれば日本の面子が立たない。と、安倍晋三総理大臣に周辺の財務省関係者は進言しているだろう。  これは1面から見たら正しい。
 しかし、世界のどの国でも消費税に相当するものを増税すると景気は失速する。イギリスが「今度こそ」と対策を様々打ったのにも関わらず経済の失速を招いている。ただ、西欧諸国は「標準税率」方式で、食料品等の税率は別途軽減税率でこれは据え置きである。つまり、諸外国では消費税は昔日本にあった物品税のような方式で、全てに網をかぶせる日本方式は世界では珍しい存在だ。だから、消費税増税が諸外国より国内景気に敏感に響いてくる。
 また、消費税増税でプライマリーバランスが改善するとは財務省関係者は言っていない。いや言えないのだ。そこまでの設計図を持ち合わせていないのと、プライマリーバランスに踏み込むと既得権益の税金の無駄使いが俎上に乗るので避けているのだ。

諸外国の国益と日本の消費税
 諸外国は自らの国益で動くから、日本が消費税を増税して経済にブレーキがかかるのは望ましいのだ。その隙間に自国が入り込めるから。アベノミクスで景気が向上するように見えるが、ブーム先行で実体経済は上向いていない。なんせ原発停止から燃料輸入量が急増して貿易収支が連続して赤字に転落している。つまり、日本の国内の富が海外に流出している状態が止まらない。
 これを取り戻すには輸出の拡大だが、ヒット商品を生み出すようなイノベーションは起きていない。アベノミクスの第三の矢が規制緩和なのだが、これは旧来の自民党の既得権益と真っ向から対立する。矢は放ったが大きく的を外した状態になっている。
 だから、安倍晋三総理大臣は東京のオリンピック招致を成功させ、アベノミクスへのブームを再燃させで来年4月の消費税増税を決断したいところだ。総理大臣就任以来の頻繁な諸外国訪問の副次的効果としての東京へのオリンピック招致活動が含まれている。
 消費税増税は間違いなく日本の景気を後退させる。そして、旧来の自民党的な公共事業での底入れを強いられる。公共事業は建設国債なので償還期間が長く短期的に政権を傷付けることが無いからだ。
 諸外国の思惑と財務官僚の思惑、それに振り回される安倍晋三総理大臣って構造が見えてくるのか、別なところに信念を持つ人が安倍晋三総理大臣なのか、消費税増税はその試金石と言えるだろう。


本命が勝てないオリンピック招致
 NHKの朝のドラマ「あまちゃん」じゃないが東京のオリンピック招致が「奈落」に落ちる可能性が無いわけでは無い。
 過去のオリンピック招致活動で何故か本命は勝てないってジンクスがある。
 2012年大会で本命のパリ、2016年大会で本命だったアメリカのシカゴと連続して本命が落選している。
 加えて日本には福島第一原発の放射能汚染水問題がある。これは日本人が考えているような甘い物では無い。海は世界につながっており、その海に放射能汚染水を垂れ流す行為は国際ルールに違反する。事故から2年半過ぎて日本人は記憶の隅に追いやっているが、福島第一原発の爆発の映像はyou-tubeで全世界に広がっているし、諸外国から見たら福島第一原発事故は現在進行形だ。
 その原発対策を疎かにしてオリンピックにうつつを揚げていて良いのかってのが諸外国の正直な心情だろう。なんでも東電任せの体質も問題があった。なんせ、「水に流して」って放射能汚染水を海に流してしまった。事故の当初も低レベル汚染水を海洋投棄して周辺国には連絡していなかった。このあたりが東京のオリンピック招致の最大のアキレス腱だろう。
 なんにしても、結果は9月8日早朝には解る。その結果を受けて誰がどのような動きをするかに注目しておく必要がある。筆者は五分五分と踏んでいる。消費税増税(延期)も同じく五分五分と見ている。

button  消費税は議員定数を削減したら話を聞いてやろう
button  消費税は何故政治のアキレス腱になるのか



2013.09.05 Mint