消費税は何故政治のアキレス腱になるのか

罪名には事欠かない民主党内閣
 それも全部、破廉恥罪なのだ。親子手当で政治をしていた「脱税王総理大臣、鳩山由紀夫氏」。自ら辞任を表明しながら時期は未定とし同僚にまで罵倒を浴びせられた「ペテン師、菅直人氏」。そしてマニフェストに無い消費税増税に政治生命を賭ける「詐欺師、野田佳彦氏」。
 みなさん、良くもまぁ、ここまで国民の信託を裏切ってくれる。政治家とは何かの原点に立つと、彼らの政治家観は「政治家は選挙で当選したら後は何にも責任は負わない自由人」ってことか。菅直人元総理大臣は福島第一原発事故の国会事故調査委員会で「原発事故は国の責任」と、あたかも自分では無く国の責任を追及するスタンスで答弁し国民は唖然とさせられた。
 消費税の増税に向けて瀬戸際の野田佳彦総理だが、たぶん、政治生命を賭けて取り組んで命運が尽きるだろう。それは感性的エビデンスでの「消費税を上げるには景気が悪すぎる」でも無く「マニフェスト違反」でも無く「税と福祉の一体改革」のスローガンが既に破綻しているからだ。
 税は国の歳入の問題だ。正確には歳入構造の問題だ。一方、福祉は歳出の一部だ。決して税と福祉は同じ土壌で語られるものでは無い。強いて言えば「歳入と歳出の一体化」こそが税制改革に求められる基本原理で、歳出の中から福祉だけ引き出して税制改革を語るのは筋が悪すぎる。だから、福祉が固まらないのに増税路線に見えてしまう。事実、歳出構造は変えずに歳入構造だけ変えようと言うのは「やらずぶったくり」のそしりを免れない。歳出の構造改革は何時やるつもりなのか。

歳入と歳出の一体改革が政治家の仕事
 たぶん、それではテーマ範囲が広すぎて手に余るので、とりあえずの「税と福祉の一体改革」なのだろうが、これではとても国家観を持つべき政治家の手法とは言えない。ま、同じような例を探すと「見識を高める必要があるので、給与の中に図書手当を設けるべきだ」って労組の発想と大差ない。新たに発生する支出には新たな収入を当てるってのは小学生でも考えつく(小学生の方々、揶揄に使って申し訳ありません)。
 本来、国家は歳入を計って歳出を組むのが原則だから、入りと出が直結する特定税制は国家の大計を危うくする。それ故に時限立法にすべきで、揮発油税の暫定税率が延々と引き延ばされている状況はおかしいと、民主党は「ガソリン値下げ隊」なんてへんてこな行動を取ったのではなかったのか。
 そもそも、今回の消費税増税は国の財政構造を抜本的に改める仕組みにはならない。1000兆円におよぶ赤字国債の償還財源としては少ない。一部に福祉目的税化する論調もあるが財務省の入れ知恵なのか、法律で目的税化することへの野田佳彦総理の拒否反応は強い。
 国民から見たら福祉に限った歳出では無く、歳出全般を見直しリブートする政策が無ければこの国は再生しないってのは解りきったことで、中途半端な財務省の既得権行使のような政策に終始する野田佳彦総理大臣は既に国民からはNOを突きつけられている。
 政治家が政治生命を賭けると公言するには野田佳彦総理は、ずいぶん小さなネタを掴んだものだ。

「決まらない政治」は素養が無いから
 内閣改造に合わせて輿石 東氏切りを行わなかった段階で野田佳彦総理の命運は尽きた。2大臣の問責決議案を受けての内閣の絆創膏での治療だったが、実は骨折に絆創膏では治るものも治らない。そして、病原菌の消毒にすら失敗している。
 満身創痍と言えば聞こえが良いが、実際は自ら招いた結果だ。政治生命を賭けるには何が必要か、それは強力なリーダーシップである。しかし、リーダーシップとは菅直人元総理大臣のように率先して自分が前面に出ていくことでは無い。ドラッガーは組織の中でリーダが発揮するリーダシップはリーダの行動エネルギーの10%も無いと語っている。リーダシップとは組織の価値観を同じくしベクトルを合わせることだと語っている。
 おもしろい例え話がある。リーダとは何かと問われた中小企業の社長が「大陽に背を向けて立つ。その時に足下から伸びる影が自分の持つ組織だ。その影は自分を投影したものだ。組織の他の者が横に来る。同じように陰が伸びる。その陰はその人間を投影したものだ。何人来ても自分の足下からは自分の陰しか伸びない。でも、皆の陰の方向は同じだ」
 そう、リーダシップとは組織のベクトルを合わせること。日本では 聖徳太子十七条憲法以来の伝統で「和(やわらぎ)を以て貴しと為し」(第1条)とあるが、諸外国では組織は目的を達する集合体で、組織のベクトルに合わない者は外していく。最後に残った集団で達成出来なかった時はリーダが責任をとって辞める。それがリーダ論だ。
 組織のベクトルを合わせることに失敗し、さて、すでにリーダシップを失った野田佳彦総理大臣は次に討って出る策は無いだろう。
 残念ながら6月21日をもって、野田佳彦総理大臣の政治生命は尽きることになる。

button  政権交代は政治家のリトマス試験紙
button  赤字国債で消費税を代替していた国策を知らない民主党



2012.06.07 Mint