軽減税率は官僚の仕事増やしに終始する悪法

官僚は仕事を増やしたがる
 軽減税率の議論が出ているが、所得に応じた負担が原則の税制に所得に関係なく徴税する消費税を増税すると低所得者ほど税負担割合が高くなるからだ。このため生活に必要な品目を指定して軽減税率を適用し低所得者負担を軽減する仕組みが消費税の軽減税率制度だ。
 食品全般と新聞・書籍を軽減税率対象にする案が公明党から出ている。新聞・書籍もかなり範疇の絞り込みが難しいが食品全般に至っては定義のしようが無いだろう。
 実際に諸外国でも軽減税率は取り入れられてるが、例えば、「お召し上がり」の場合と「お持ち帰り」の場合で税率が違ったり、5個以上買うと税率が変わったりと非常に複雑化する。何故なら、目の前で食べれば食品だが、持ち帰ったら贈答品になる可能性がある。また、5個までは自分で食べるのだろうが、5個以上の分は誰かに贈答するのだろうとなる。
 もはや屁理屈を積み重ねた喜劇のような税制になる。
 しかし、役所の感覚は民間では考えられない不効率が好きである。徴税コストの軽減に努力するって感覚が役所に無いからこんな制度を持ち出す。役所には利益って発想が無いから法律で決まった税金は低コストであれ高コストであれ徴収するって感覚だ。
 考えて欲しいのは、その徴税コストは税金から支払われるってことだ。
 税率を上げて、徴税コストを上げれば役人の火事場の丸儲けでしかない。
 2015年に本格稼働を予定(たぶん、延期されるが)のマイナンバーを利用した直接給付制(ベーシックインカム)を検討することで、軽減税率なんて複雑な仕組みを作らなくても良い。今後、消費税を15%や20%に上げるときもベーシクインカムを増やせば良いので憲法に書かれている健康で文化的な生活を保障することができる。なによりも、徴税コスト上昇を招かなくてすみのだ。

マイナンバーの出遅れ
 資料は内閣府にある
 どうやら法案成立次は2015年稼働となっていたが2016年に伸びている。これだけの全国民を巻き込んだ制度のシステムを構築するには時間がかかる。消費税10%には間に合わないのは確かだ。
 最新の予定では
 2013年11月15日頃 仕様提示
 2014年1月14日頃 提案書受付
 2014年2月中旬  業者確定
 2017年1月 システム稼働
となっている。
 NTTデータが受注する公算が高いようだ。システム規模1兆円の巨大システムだ。
 関連するICカードやカードリーダの市場も加えると総額3兆円の巨大事業と言われている。このシステムが完全に稼働すれば、国民の所得の把握が可能になり、低所得者への影響を極力避けるベーシックインカム制度の導入が可能になる。また、正確に低所得者であればベーシックインカムは貯蓄されずに真水として消費に回るので経済波及効果は高い。
 今までの、地域振興券とか子供手当は貯蓄に回って経済波及効果は0.9程度しか無い。しかし、食料品購入だけでも、スーパーの仕入れ、商品の輸送、集荷選果、生産者とお金が回り経済波及効果は3.0程度になる。的確な経済効果をもたらすだろう。
 身近な例では運転免許証のICカード化がほぼ完了する。当初の目的は偽造免許証の摘発だが、コスト対効果はいまいちだが、確実に偽造免許証を摘発している。また、レンタル店なのでは免許証のコピーを取られるが、採ったコピーが何処に流れるともしれず、今後ICカード利用になる可能性がある。実は本人確認をしなければならないと法律で義務付けられている業務は多いが、完全実施にはなっていないのが現状だ。今後ともIC免許証の普及は広がると思われる。
 ちなみに、ICカード免許証には電子化された顔写真が収載されていて、後から写真を貼り替えた免許証は瞬時に偽造が判明するようになっている。
 住民記録カードは中途半端で普及しなかったが、マイナンバーは給与天引きの社保料等の電子データとして会社から役所に連絡されるので、確実に利用が進む。出生から入学、転勤、就職まで幅広く同じカードが利用される。しかも、各コンピュータに蓄積される。
 これを、所得把握に使うってのは役人の発想で、民間なら収税コスト削減にどう使うかに頭を使うのだが。


医療とのドッキングは見送られた
 セキュリティの面からと、国民の医療機関利用結果を国が管理する是非の議論が進まないので医療情報とのドッキングは見送られた。もしくは、先延ばしにされた。
 今でも医療情報は電子レセプトとして審査支払機関から保険者(健康保険組合等)に送られている。その電子化率は、ほぼ100%となっている。これのキーは保険証番号になっている。既に支払いは電子化されているが病名、症状の管理は各医療機関の紙の診療録に手書きで記載されているものも多い。
 この部分は診療医のメモであり、公的な機関が共有データとすることは不可能だ。
 だから、支払段階で把握するデータにマイナンバーを加えても医療機関を受診しない(経済的理由かどうか不明だが)のデータは取れない。今後、自由診療との兼ね合いで議論が煮詰まっていない分野だ。
 マイナンバーは構想が大きすぎる割にシステム準備期間が短く、預貯金の利子、個人事業主の所得等の取りこぼしがあるが(ま、実際に把握する方法も無いのだが)徴税コストの軽減とともに、高度利用をはかってもらいたい。役人のする仕事にはPDCA(Plan Do Check Action)が無い。PDだけだ。つまり、「思いつき」と「やりっぱなし」だ。
 軽減税率で徴税コストを上げるのでは無く、また政治家の既得権益を広げるのでは無く、マイナンバーの有効利用を考えるのが先決だろう。

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2013.11.26 Mint