第三の矢は規制緩和で既得権益の破壊で十分

 前にも書いたが、成長戦略を阻害しているものは過去の自民党が地盤としてきた既得権益。ここに第三の矢を撃ち込まなくてはならないのだから、自民党から見たらブーメランになる。
 参議院選挙を迎えてアベノミクスの正否を政策論議に入れているが、まだ、始まったばかりの改革を今の時点で評価するのは為にする論議でしか無い。株の乱高下も調整局面の変動幅が大きいだけで、これは今まで休んでいた個人投資家が関係している。高齢になった個人投資家は年単位なんて気の長いことを言ってられないので上がればすぐ売り、下がれば買う。この資金が昔よりも株価を乱高下させているのだ。
 そもそも、参議院選挙は国盗り物語では無いので、対立軸が見えにくいが、アベノミクスを持ち出して経済問題を政治課題にするには無理がある。この国の形を指し示すようなビジョンが下地にあり、その具体的な戦術を述べるのが先だろう。その意味で選挙の投票基準は1)地方分権政策の進展、2)防衛外交力の強化、3)憲法の形、あたりの順番で経済問題はすでに方向性が出ている。ただ、自民党が発表した改正憲法は全面改定で、その中に軍事裁判が入っているので不合格になるが。

がんじがらめの既得権益
 TPPについては21世紀型の軍事同盟と考えているので締結でWin-Winの間柄になれるのは好ましいことだ。Win-Winの関係構築なのだから一方的な「一人勝ち」な制度は受け入れられない。ただ、日本の市場開放が一部の既得権益と化して経済成長を阻害している事案が多々ある。TPPを導入しながら成長戦略の第三の矢をこの既得権益崩壊に向けたものにすれば経済成長に国が投資するような金のかかることはしなくて良い。
 国が金を使うと言うが、結局、役人が金を使うのであって、今回の復興予算の使われ方を見れば、あまりにも節操のない金の使い方に国民はあきれかえっている。つまり、役人に金を使わせると、新たな既得権益を作り、それが政治にフィードバックされて長期政権を支えるって旧来の自民党が作ってきた立法と行政の境目のない権益形成だ。その権益を手放したくないので、防御のために回りを新たな既得権益で囲む。こんなことを日本の政治は戦後一貫して続けてきたのだ。そのために社会が膠着状態になってしまった。
 規制緩和と言うと小泉純一郎内閣当時の竹中平蔵氏の専売特許のように言われているが、実は、竹中平蔵氏は成長戦略なんかは作っていない、その後の内閣が毎年「成長戦略」の作文を書き直して、日本の経済は縮小を繰り返し、未だに日の目を見ない詮索なのだ。恒例の予算獲得のために書かれた役人の後付作文でしか無い。それが、今年から急に馬力を発揮して日本経済を拡大するとは経験則からも思えないのだ。
 一般に竹中平蔵氏は新市場主義者で規制緩和で格差拡大を招いたと言われているが、実際には真逆で金融機関の不良債権解消のために力ずくで規制強化を行った人だ。ま、本人の望むところで無かったかもしれないが、竹中平蔵氏は「規制強化の実績」を持った人なのだ。
 G8で安倍晋三総理は「各国からアベノミクスの説明してくれと言われて説明してきた」と鼻が高いが、各国の受け止め方は「そんな事は誰でも知ってるんだよぉ。それが実行出来ないからみんな悩んでいるんじゃないか」って反応だったようだ。日本のマスコミは相手の受け止め方を聞き出す技術がないので、一人鼻高々の安倍晋三総理の談話しか書かないが。
 で、各国とも、結局、経済成長には規制緩和しか無いと考えている。産業政策で国が産業育成する構造は20世紀のもので、その間に積み上がった既得権益が逆にどんな産業政策を行っても無駄金に終わってしまうのだ。
 農業改革の目玉として市町村が農地を集約して企業に貸す農地政策がある。企業は投資と回収の事業体だ。土地を富ませて収量を上げる投資を借りた土地に行うのは効率が悪い。そもそも、1世代かかって開墾して改良して収益を改修する形態の農業は単年度決算の企業には向かない。まったく、役人の作文で終わるだろう。それより、企業が将来工場を建てるのか農業をやるのか、はたまた事業資金に戻すのか、現在の内部留保を土地取得に向けさせる政策を取れば良い。農地取得して農業事業を行う企業の3年間減税とかだ。とにかく、役人が土地取引(この場合、賃貸)にからんで権益を得ようとするものは20世紀に置いてくればよい。


輸出農業へ企業参入が必須
 これも前に書いたがTPPで輸出農産品の筆頭になるのが米だ。これは日本の米が品質で世界一だからだ。香港のライス市場では日本米(ジャポニカ米)は別格で1俵(60kg)で2万円以上の値が付く。現在の国内では安いものは1俵1万円を切るのが現状なのだが。
 米作りに関する機械化は十分進んでいる。休耕田もそれこそ山ほどある。ここに企業が参画して米を一大輸出産業にするのが経済成長戦略だ。
 そのために既得権益は壊さなければならない。戦前の地主と小作のイメージで企業の土地所有、特に農地所有を牽制するが、今は地主と小作のような制度は商業的に成り立たない。下請法が適用されて小作側が保護されているのだから。企業も四六時中農地を見張っているのはコスト高になるのでICTの活用で必要な時に必要な措置を行えるようにするだろう。広域化を楽にすすめることになる。
 雇用確保のためには、一部を施設園芸にして農閑期は植物工場で地場向け産品を作り、実りの秋には一気に労働力を集約して米を収穫する。そのためには施設園芸と共存する水田農家形式が生まれるかもしれない。
 既得権益が成長戦略と合致しているのなら良いが、多くのアイデアが規制と既得権益に阻まれて事業化出来ていない。
 10年ほどまえだが日本食が世界に広まっているので、正しい日本食の店を認定しよう。そのために日本食認定財団を作ろうって農水省の企画があった。結局、天下り財団を作るって話なのだが、そもそも日本食は地元での親和性(アボガドの寿司とか)があって広まったのだから、認定なんか余計なお世話なのだ。
 とにかく、国に金を使わせると既得権益構築に回される。国は金を使わないで規制緩和を行え。20世紀型の政治が21世紀型に生まれ変わらないと日本の成長戦略は実行に移せない。
 第二の矢の公共事業も成長戦略に繋がる公共事業に絞り込むべきだ。箱物作って社会資本整備って言っていたのは、これまた20世紀の政策だ。
 中国がバッタもののofficeを作ったように、せめて役所で使うofficeは自治体仕様で国産化して廉価で使わせる。そんな社会資本整備が必要なのが21世紀だ。j-office。仕様を固めるだけであとは民間にやらせれば良い。そもそもエクセルに入っている逆行列関数なんて購入者の何パーセントが使っているのか。その代金まで払わされるのは納得がいかないだろう。役所なんて四則演算に毛の生えたような計算しか必要なのだから。

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2013.07.04 Mint