ウクライナ問題は政治腐敗が根源、失敗国家の後始末

失敗国家続出の21世紀
 200近い国が国連に加盟しているが、国家として自律している国が全てとは言い難い。そもそも国家とは為政者の企図で顕在化するので、為政者が国連に加盟したいと思えば国連加盟国になる。
 民主主義国家であることが国連加盟の条件では無い。まして、国民の総意が国連加盟の条件でも無い。多くの国は国会のような組織の「批准」で加盟する。
 昨今のマスコミの報道を見ると「ウクライナがEU寄りになったのでロシアが親露政権をクリミア半島自治区にうち立てて武力弾圧をしている」の表現だが、現実は違うのではないか。
 そもそもヤヌコビッチ大統領が国内の経済衰退に対してEUに資金援助を要請し、実態は自分の懐を潤す汚職資金として蓄積したことに端を発する。つまり、ウクライナの政治腐敗が発端にある。これは、ヤヌコビッチ大統領逃亡のあとに釈放された政敵のティモシェンコ元首相が抗議行動で演説したが民衆は盛り上がらなかったってエビデンスを見ても解るだろう。つまり、為政者ってのは同じ穴のムジナとウクライナ市民は思っている。政治家はみんな汚職の巣に集まる蜂ってウクライナの国民感覚をマスコミは伝えていない。
 で、EUからの借金を私的に蓄財したヤヌコビッチ大統領だが、返済が出来ないので急遽、ロシアに救済を求めた。この時点でロシアはエネルギー供給で得ていたユーロをウクライナに貸し付ける。
 これも、ヤヌコビッチ大統領の懐を経由する訳だ。
 現在のウクライナは債務超過で国家財政が破綻している。それを、お人好しに支えると言っているEUは滑稽だが、ウクライナの国民にとっては国家運営を誤り、私財の蓄積ばかりに熱心なヤヌコビッチ大統領への不満が鬱積してきたのだ。
 それが、キエフでのデモだ。EUからロシアに方針を変えたヤヌコビッチ大統領への抗議では無い。政治の腐敗への抗議だ。
 この点を「国民がEU加盟を求めてデモ」なんて書いているマスコミが居るが、完全な誤報だ。

パトロン探しのヤヌコビッチ大統領
 ここが肝心な所なのだが、国家は全て同じ土俵で運営されているのでは無い。北朝鮮や中国を見て解るように、国家が存在する定義は「領土、国民、憲法」でしか無い。この三種の神器を持てば対外的に国家といえる。
 世界にはこの定義だけによって国家と呼ばれる国が存在する。朝日新聞出版の「カラシニコフ」の本に書かれているが「大統領府の半径500mだけが平穏な国家」も多数存在する。特にアフリカ諸国には多い。
 ソ連(ソビエト連邦)って枠組みで一地方を任じていたウクライナが独立国家として運営出来ていたのか、はなはだ疑問だ。共産主義国家の中央集権一党独裁体質が溶けて行くには時間がかかる。しかも、国家運営は企業経営と同じ経済行為だ。
 これに失敗したのが企業で言うCEOのヤヌコビッチ大統領だ。
 で、EUから借金し、その肩代わりをロシアに求めた。
 その流れの中に「私財蓄積」が含まれていたのがウクライナ国民の反ヤヌコビッチ大統領を推進した。決して、EUかロシアかのバイナリーな選択問題では無い。
 結局、ヤヌコビッチ大統領はロシアに亡命したが、ロシアはロシアで国益を考える。「失敗国家」に自国の資産を預けておけるはずがない。
 かつて日露戦争でバルチック艦隊の母港であったクリミア半島の軍港を訳の解らない政治勢力に左右されたくない。まして、EU加盟とNATO加盟はリンケージしている。ロシア海軍の一丁目1番地がNATOに支配され事態は防ぎたい。
 国家の運営に失敗したヤヌコビッチ大統領にも使い道はあるかもしれないが、そもそも基本はロシアの国益である。その意味で旧バルチック艦隊の母港であるクリミア半島はロシアの利権が保たれなければ国益を損じる。
 失敗国家のトバッチリを受けないためにもクリミア半島のロシアが望む「平定」は当然の「国益保持」だろう。但し、旧日本軍も同じ論理で満州に派兵したのだが。


失敗国家を戦利品には出来ない
 ウクライナ本土(クリミア半島を除いた部分)にロシアが侵攻するかと言えば可能性は限りなくゼロに近い。そもそも、ウクライナは失敗国家であると同時に経済破綻国家でもある。その回避策にEUとの連合協定に調印すると威嚇しながら2013年12月14日に当時のヤヌコビッチ大統領とプーチン大統領が会談して150億ドル(現物はユーロ建て)の融資と格安な価格でのガス提供で合意した。これは新しいパトロン探しに成功したかに見えるが、ロシアの国益からすると艦隊の基地を保全するのに負担は大きい。まして、EUが攻勢をを仕掛けてくるウクライナ本土はロシアから見たら国家としての価値は少ない。
 EUからの借金の肩代わりをロシアがするのはお門違いだ。
 ウクライナを巡ってEUとロシアの駆け引きは、先に融資したEU側に債務があり、ロシアはまだ融資していないので債務は無い。このまま放置すればウクライナ本土とEUの間で借金の後始末をする運びになりロシアは傷つかない。
 国連軍を組織してクリミア半島を奪還するにも国連軍を組織することにロシアが拒否権を使うのは目に見えている。では、アメリカなりイギリスなりが1国で奪還作戦を行えるかと言えば、これは明らかな国連憲章違反である。しかも、奪還地はロシア最大の軍港である。グーグルアースで見ると湾内は戦艦で埋め尽くされている様子がわかる。
 外交の観点からは明らかにプーチンが上手(うわて)であった。
 ウクライナ国民がEU加盟を求めているって報道は必ずしも的を射ていない。その状況を正しく読んでクリミア半島のみ制圧(元々準ウクライナでクリミア独立共和国として存在していた)して、後は野となれ山となれのプーチン戦略にEUは負けた。
 今後、クリミア独立共和国を完全樹立(ロシアに帰属する是非の国民投票は予定されている)して民主的でロシアよりのクリミア民衆の合意が出来れば、EUは手も足も出なくなる。そして、失敗国家のみがEUの手に残される。

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2014.03.07 Mint