既得権益岩盤に向けたドリルの刃が斜めった

既得権益の岩盤
 アベノミクスの三本の矢のうち1本目(金融緩和)と2本目(機動的財政出動、つまり公共事業型予算編成)は放つことができた。その成果は「未来を明るくした」程度の雰囲気的成果ではあるが、今までの民主党内閣に比べればゼロと0.01を比べるように、とにかく何かある状態まではこぎ着けている。
 そして3本目は(経済成長)である。かねがね述べているように役人が考える経済成長で成功したものは皆無だ。多くは利権がらみで中間搾取が大きく(これから政治家へフィードバックされる)実効力は非力だからである。
 今回の経済成長には「既得権益の岩盤にドリルで穴を開ける」との規制緩和が盛り込まれる予定であったが、そんな「身勝手」を自民党の既得権益議員が許す訳もなく、目標とする岩盤はあれやこれやで前面に出てこない。そもそも、目的の岩盤としてジャンルを明確にしているものは「医療、農業、電力」の3分野と息巻いたが、今はその陰もない。
 医療では、制度改革が進まず既得権益の権益拡大ばかり進んでいる。良い例が向精神薬と高血圧の薬の適合だろう。「男性にも更年期障害がある」って暴論を振り回して向精神薬の保険適用を認めさせ、統計上の鬱病を倍増させたり、「高血圧は最高血圧130以上から」と今までの最高血圧を下げて「擬似的高血圧患者」のマーケットを広げて降圧剤をジャブジャブ処方したりと厚労省は本当に国民の健康を考えている役所なんだろうかと疑う事態が多々起きている。
 農業では永久的農地指定制度があれば法人が農地を取得しても転用出来ないのだが、これだと既存の農家が周辺が宅地化して農地を宅地として売り払おうとしても出来なくなるので農家の思惑とかけ離れる。それゆえに法人が農業に参画するための土地の取得に難癖を付けて何時までも改革が進まない。もっとも、農業法人を設立して農地を取得し農業法人を倒産させて大規模団地造成なんてのは企業の常套手段なので警戒を要するが。
 電力は原発の廃炉作業の経費負担が定まらず、廃炉費用の負担を何処が行うかが決まらないうちは発送電分離なんか議論の土俵にも上らない。加えて使用済み核燃料の処置も決まらない。このような負の遺産を未解決なまま背負った状態で電力改革など出来る訳が無い。
 つまり、ドリルを向けたら既にグスグスに崩壊していた、ただし、過去のしがらみでネバりついていたものを岩盤と勘違いしたのだ。しかもドリルを入れたとたんにドリルの刃はネバネバにからみつかれて回転を停止したってのが現状だろう。

新経済成長は「武器と原発と外国人労働者」
 最近、既得権益が無く政府が政令変更で対応できるタイトルのような分野が3本目の矢の成長戦略として語られ始めた。法律の縛りが強く手を伸ばすことが出来ないので既得権益が発生していない分野だ。
 ただし、こちらには野党を筆頭に反自民党政策の反対勢力が存在する。
 ここで問題になるのは「外国人労働者」だろう。他の問題は多分に工学的問題を含むので政治的イデオロギーのプロ市民ならいざしらず、成長戦略の分野として異論は無いだろう。
 外国人労働者問題は3Kとか5Kとか日本の若年労働者の嫌う建築分野への外国人労働者の雇用である。最近の東京の深夜のコンビニのレジは「ワン」さんや「キン」さんのレジ担当ばかりだが、このような分野は留学生のアルバイトの範囲になる。
 政府が語っている外国人労働者はアルバイトの話では無い。大量に外国人労働者を日本の特に建築の現場に受け入れようとの話だ。だが、ちょっと待って欲しい。外国人労働者に賃金を支払うのは外国への賃金の流出だ。なんで、それが経済成長戦略になるだろうか。
 外国人労働者の受け入れが経済成長戦略に繋がるためには外国人労働者の日本国内への永住が推奨されることになる。当然、国内の平均的賃金水準となるから安い労働力ではなくなる。社会参加の要求も高まるだろうから日本が多民族国家になるってことだ。それは経済戦略の下で語られる話では無いだろう。日本の国家2000年の歴史への挑戦って問題だ。このあたりは安倍晋三総理大臣は良く理解しているいおうだが。
 外国人の工事関連への就業で顕著だったのが、長野冬期オリンピックだ。競技施設の建設に人手が足りなくてその多くはブラジルからの労働者を受け入れた。この時のブラジル人達が群馬県や浜松市の自動車工業に流れていった。そして今はブラジル帰国してブラジル進出の日本企業で働いている。
 このような好循環が今後期待できない日本経済の現状を考えると、外国人労働者を受け入れても国内で人種間の騒動の種になるだけと思われる。
 しかも、経済成長には決して繋がらない。ただし、岩盤が無いのでドリルで容易に破壊できるのはたしかなのだが。
 年間20万人の受け入れで日本の人口は1億2000万人を確保できるってのが自民党の「コピペ脳」議員の言い分だが、数と質のはき違えだ。現にイギリスは人口減にも関わらずGDPは維持されている。要は工夫の問題だ。そして工夫こそが政治なんだが。


本家がリヤカーで外国はリムジン
 原発の輸出は日本に最大の経済成長をもたらすと言ったら「なにをアナクロな事を。福島第一原発の事故を受けて原発には未来が無い」と反論する人も多いだろう。
 最近の日本社会は自分で考えるより他人の考え方を「コピペ」する「コピペ脳」が蔓延している。電車の乗り降り時までスマホとにらめっこしていれば考える時間なんか無くなってしまう。その余裕の無くなった脳の知識欲を満たしてくれるのが「コピペ脳」だ。
 だから、福島第一原発の事故を受けて「原発はもう未来は無い」と単純に納得してしまう。だが、福島第一原発は何時稼働を始めた原発か考えたら良い。既に稼働から40年を経て事故を起こしたのだ。
 自分の年齢に40歳を足してみたら解りやすい。その年齢の親戚なり先輩が生まれた年の科学技術で作られた原発だ。もちろん、当時はスマホは無い。テレビはチャンネルをギャチャガチャ回して選局していた。「チャネル争い」ってのは文字通りチャネルの捻り合いだったのだ。リモコンの奪い合いでは無い。その時期に出来た原発が福島第一原発だ。
 その後、40年の人類の英知は同じ沸騰水型の原発でもABWR(改良型沸騰水原子炉)を生み出している。「原発」と十把一絡げに「コピペ」するが、多様な技術革新を経て、少なくとも40年前の原発技術よりも最新の原発技術のほうが効率的で安全性が高くなっている。
 その最新の効率が良く安全性が高い原発を海外に輸出して、本家の日本はあいかわらず薪ストーブ炊いた風呂に入るので良いのだろうか。
 さらに言うと、原発はまだまだ発展途上でビル・ゲイツと東芝が考えている燃料の入れ替えの不要なキャンドル炉(東芝名「4S」炉)。ウランでは無くてトリウムを利用したトリウム原発。さらに不要なプルトニウムを10年で核種変更する高速トリウム原発と多彩なバリエーションがある。
 原発の輸出よりも国内のリヤカー原発をリムジン原発に換えるのが成長戦略では無いのか。そして、多様な原発技術に柔軟に対応できる科学技術の育成が長期的な成長戦略だろう。
 武器についてはいまさら言うまでも無い。集団的自衛権が確立するってことは武器の相互利用が生じる訳で、ここで禁輸なんて実質的に意味を持たない制度を残す意味はない。ちなみに、ネットでNATO弾(5.56mm)を検索したら一箱数千円で自宅に届く仕組みがアメリカでは出来ている。もはや武器は民生品扱いで、誰でも帰る商品なのが国際標準だ。日本だけがカリカリしているとこの分野でも後退を余儀なくされる。
 日本では自衛隊のNATO弾が1発800円もするが、通販でアメリカから買えば1発150円程だ。ここにも国内の利権が潜んでいる。ドリルでは無くM16-A2にNATO弾を詰めてフルオ−トでなぎ倒したらええのや!

button  アベノミクスの三本目はブーメラン
button  第三の矢は規制緩和で既得権益の破壊で十分



2014.04.21 Mint