原発廃止論者は今ある核のゴミをどうするつもり

福島事故が無くても原発は停止
 自民党の河野太郎議員が3.11の1年ほど前に調べていたのだが、当時の原発は使用済み核燃料を原発建屋の中に保管していて古い原発は原発内の使用済み核燃料貯蔵量が限界に達し、今後燃料交換が出来なくなることを突き止めた。古い原発だと数年後には燃料貯蔵庫が満杯になるが、そのために手を打っているのは東京電力だけであった。
 六ヶ所村の燃料貯蔵庫はほとんどが東京電力の使用済み核燃料用に確保されていたので、他の電力会社は六ヶ所村の新しい使用済み核燃料貯蔵庫の設置を国に働きかけていたのだが実現には時間はかかりそうだった。
 「なーんだ、ほっておいても原発止まるな」ってのが当時の河野太郎氏のtwitterでの発言だった。
 現在の原発は核燃料を1年毎の定期点検時に入れ替える。但し全部を入れ替えるのでは無くPWR(加圧水型)で全体の1/4をBWR(沸騰水型)で全体の1/3を入れ替える。この入れ替えに伴い取り出されたのが「使用済み核燃料」だ。
 本来は5年ほど原子炉内の使用済み核燃料貯蔵プールで除熱と放射線量を落として、六ヶ所村に運び込み、核燃料サイクルの原料として再処理を行いプルトニウムを取り出す。「もんじゅ」でこのプルトニウムを燃やしてウランに戻してまた核燃料にする予定だった。
 ただ「もんじゅ」が実用稼働2050年なんて計画になっているので、現在は六ヶ所村でプルトニウムを含む核燃料を作成してこれを通常の原子炉でMOX燃料として燃やす計画も平行して進んでいる。これがプルサーマル計画だ。福島第一原発の3号機はMOX燃料を用いたプルサーマル炉だったのだが、他の原子炉と事故時の状況が違ったのかどうか事故調査報告書には書かれていない。(2号機の姉妹機なので比較は可能なのだが)
 しかし、この六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場は稼働の目処が立っていない。

福島第一4号機の核燃料
 現在再稼働予定の原発でも再稼働が始まれば新たな使用済み核燃料が出てくるが、それ以前に今まで溜まった核燃料が問題だ。廃炉が決まっている福島第一原発の4号機の使用済み核燃料貯蔵プールだけでも、今後交換し使用予定の事前貯蔵の新燃料が202体、使用済みの旧燃料が1331体残っている(現在、取り出し中でかなり減っているが)。その作業状況はここで週1回更新の頻度で公開されている。4号機の新燃料は使っていないので福島第二原発の使用済み核燃料貯蔵プールに運ぶ予定変更があった。東電は福島第二は再稼働可能と考えてるからの措置だが、福島第一も第二も廃炉にするのが政府の方針だったはずだが?
 たまたま、福島第一4号機は定期点検中で原子炉内には核燃料棒が入っていなかったが、1,2,3号機では使用済み核燃料貯蔵プールに使用済み核燃料が、原子炉本体でメルトダウンして形状も解らない使用中核燃料の塊(と、思われる)が原子炉格納容器の中にある。
 また、1,2,3号機では使用済み核燃料貯蔵プールの中に3.11以前に「損傷した使用済み核燃料」が確認されてる。その数は爆発以前の状況で1号機292体、2号機3体、3号機4体で、特殊な工具を作らないと取り出せないと判断されていた。これに加えて三号機の水素爆発では使用済み核燃料貯蔵プールの上部の使用済み核燃料棒の先端が吹き飛ばされてガレキの中に混じっている可能性が高い。そうでなければガレキの放射線の高線量を説明できない。また、20kmも離れた楢葉町ではその燃料棒のペレットの一部とみられる部品が見つかったが、これがを東電は持ち帰り分析を行ったが結果は発表されていない。
 今後、処理しなければならない放射性物質は福島だけでは無い。建設から40年を過ぎた原発は基本的に使用停止して廃炉に取りかからなければならない。40年前の誤操作で損傷した燃料棒なんてのも出てくるだろう。そもそも、核燃料以外の放射線を浴びて放射能物質になった廃材を解体する技術も確立してない。
 原発をトイレの無いマンションなんて言うヒョーロンカが居るが、正直、肛門の無い生物なのだ。


原発止めてゴミは海にでも捨てますか?
 現在原発を止めても、再稼働しても、原発から出る核のゴミを処理する技術開発は必要だ。夢のような核リサイクルは妄想だったのだ。仮に妄想でないとしても「もんじゅ」の稼働は現時点で2050年だ。それまでに確立しなければならない技術は多岐に渡る。
 そんな面倒なことを子孫に残すわけには行かないとしたら、方法は二つしかない。
 1)核のゴミを一箇所にまとめて、ブルトーザで海に捨てる
 2)核種変換を行って無害化、もしくは低毒化した放射性物質に変換する
 そもそも、核再稼働に反対する人は1)をやりたいのか。それは無責任過ぎるだろう。そして2)をやるためには核に関わる研究を進め技術開発を行わなくてはならない。それには金が要る。
現状は必要とされる研究開発の原資すら化石燃料購入費用として外国に流出していて、技術開発には手が付けられない。化石燃料購入費用は「国富」を守る為では無くて、「国富」を壊す結果になってると考えるべきだろう。
 結局、原発を稼働させてその売り上げで技術開発を進め、イノベーションを起こすしか核のゴミ問題の解決策は無い。それが電力会社と政府の「国策民営」の行き着く落としどころだ。(ブルトーザで海に捨てる事を除けば)
 最近、気になっているのは「トリウム原発」関連の書籍が出てきていることだ。世界の潮流はFUKUSHIMA以降、より安全な原発は何かに流れている。核エネルギーの利用をより安全にって方向で、放棄は選択肢には無い。(日本の常識、世界の非常識の一例だ)
 一番の問題は中国の原発増設問題である。ずさんな原子炉運営で事故を起こされたら世界中が放射性物質で汚染される。原発は分裂後の放射性物質を内部にため込むので原爆に比べて保有する放射性物質が他種類で大量になる。その種類は原爆の大気圏内爆発実験の比では無い。様々な放射性物質が核分裂の結果貯まっている。
 そもそもアイゼンハワー大統領の「核の平和利用」が宣言されたときに、固体燃料の核燃料(燃料棒)から液体燃料(溶融塩)を使うようにトリウムを燃料にした液体原子炉が考案された、1960年代に実証実験も行われて無事3年の連続運転も終了している。ただ、核兵器の原料であるプルトニウムを生まない原発だったので政治的に闇に葬りさられた。
 このトリウム原発を技術開発して実用化し、核のゴミの核種変換を行うしか人類に選択肢は無いだろう。そのためには、もっともっと原発を研究してイノベーションを起こして行かなくてはならない。
 「原発イラナイ、貯まった核のゴミは誰かがなんとかしてくれる」の、お花畑な発想では何も解決しない。そのような人に自分が使った今までの原発由来電力を自転車の発電機でも回して社会に還元して貰いたい。

button  原子力平和利用のプリンシプルを再確立すべき
button  日本のエネルギー政策には「戦略性」が無い


2014.06.19 Mint