札幌冬季オリンピック招致に大反対する

冬期オリンピックは都市開催
 既に、現在の市長によって広報されている予算計画は、国から金を引張り出して、自己負担はこれくらいで経済効果はこれくらいだと数字を示している。
 まず、初めに断っておくが北海道新聞社の用いる「経済効果」は統計学で言う「経済波及効果」のことである。つまり、ナンボ「金が流通するか」であって、なんぼ「儲かるか」では無い。一部の北海道新聞社の編集部ではその基本もわからないで「だから儲かる」みたいな記事の書き方をしている。まともな文系の知識すらないのをに欺されてはいけない。
 現役引退した記者が「これから花火大会は有料大会が増えるだろう。3,000円取っても5,000人入れば1,500万円の経済効果だ」と何の疑いもなく話している。経済効果は、花火大会に来る人々の交通費、飲食する屋台の売り上げ、屋台が仕入れる原材料等々を全て積み上げて出すもので、入場料だけで測れるものでは無い。本来消費される花火の仕入れも積み上げるのだ。一般的にはイベントで人々が消費する金額の3倍程度が「経済波及効果」の金額になる。「産業関連表」ってのは経済指標の一丁目一番地なのだが、その知識すら無いで良く記事が書けるものだ。
 投入する金額がどれだけ市中で回るか(経済波及効果)が、どんだけ儲かるかに読み替えられて紙面を飾るのに欺されてはいけない。
 くだらない新聞批判で時間を浪費してしまった。
 本来、冬期オリンピックは都市開催が基本だが、昨今は規模拡大で都市内に収まらず実質的に国が開催することになる。先のソチでの冬期オリンピックでは開催都市の開催宣言をプーチン大統領が行ったことはオリンピック憲章違反だが、だれも何も言わない。
 夏期オリンピックでも韓国、中国の頃から都市開催が実質的に国開催に変化してきた。
 そして、国の威信を掛けてとなって、特に冬期オリンピックではスポーツの祭典からスポーツ会場の祭典になりつつある。
 政治的に言えば、オリンピックは地方の政治を離れた中央集権政治の権化なのだ。

スノーボードが有る冬期オリンピック
 先のソチでの冬期オリンピックを見て驚くのはスノーボードの競技の多さである。最後の都市開催冬期オリンピックと言えるグルノーブル・オリンピックでは無かった種目である。リレハンメルも都市開催の雰囲気が強かったが、これに共通するのは競技種目が限られていたからだ。その意味では札幌冬季オリンピック1972年も長野冬季オリンピック1998年もコンパクトであった。(ま、長野は長野市なのか長野県なのかあいまいな面はあるが)
 つまり、「ミズスマシ」と揶揄されたスケートリンク数カ所と、一般スキー場を拡張したゲレンデ、そしてリュージュ・ボブスレー、ジャンプ台の競技インフラがあれば冬期オリンピックは開催できた。
 しかし、先のソチ冬期オリンピックで度肝を抜かれたのはジャンプ台が2,3個入るのではないかと思われるほど大規模なスノーボード競技用ゲレンデだった。
 普通のスキーリゾートに毛が生えた程度の競技場イフンラでは冬期オリンピックは開催出来ない規模に膨れあがった。このあたりの読みが札幌冬季オリンピック1972年の経験がなまじあるだけに現在の冬期オリンピックとは何かを読み違えているのではないか。
 スノーボード競技場は後にスキーのゲレンデに戻すにしても、集客を見込めない大きさだ。また、幅の広さは通常のゲレンデ整備の何倍もの手間がかかる。ましてや北海道の札幌では一晩で50cmの雪が降るのはシーズン中に数回あるが、そのたびにゲレンデを閉鎖にするのか。
 跡地利用問題が1972年の札幌冬季オリンピックからいまだに終了していない現実に目を向けるべきだ。


つわものどもの夢の跡
 札幌冬期オリンピック1972年では、スケートを中心にした真駒内会場、ノルディック競技の距離競技に白旗山会場、ジャンプ競技は宮ノ森、大倉山ジャンプ台、アルペン競技を中心に手稲山会場、そして、標高差が稼げないのでスキーの滑降競技用に恵庭岳コースを整備した。手稲山会場にはボブスレーコースも作られた。
 これらが今、どうなっているか。
 真駒内は選手村が分譲住宅として再利用されているが、耐用年数が近づいている。そもそも地下鉄真駒内駅を中心とした商店街形成を邪魔している。真駒内アイスアリーナーもプロレス中継で良く使われたが今は利用の機会が少ない。ここの屋外スケート競技場は市民に開放されているが氷のコンディション不良で閉鎖されていることが多い。
 手稲山はスキー場として一時は賑わったが今は細々と営業している。テイネオリンピアも加森観光に週末運営が委託されている。宮ノ森、大倉山のジャンプ台はシーズンに加えてワールドカップでも使われ今でも現役でいる。
 さてさて、負の遺産だが、最悪は手稲山のボブスレーコースだろう。オリンピック後の現状復帰の予定もないので荒れ放題で、選手小屋は屋根すら吹き飛んで廃屋だ。ま、雑草に覆われて周辺から見えないのが救いかもしれないが。
 本来、現状復帰計画の有った無理して作った恵庭岳滑降コースは今でも麓の支笏湖から見上げるとコース跡が見える。あれから、42年も過ぎているのに植生は回復していない。昨今、このコースにそって大雨の時に崖崩れが起きて、ますますはっきり見えるようになってきた気がする。
 恵庭岳の滑降コースについて言えば、大変な自然破壊を行ったのに誰も責任取らない状況が続いている。
 このような先のオリンピックの競技跡地に加えて、今回の札幌冬季オリンピックで必要とされるのがスノーボード競技場だ。大きさとしては札幌の藻岩山と円山を足したくらいのコースを必要とする。今のところ、札幌市内では唯一南区の山林を伐採して作ることが可能だが、これはコストと跡地利用で難しいだろう。交通アクセスの面でも問題が大きい。唯一造成可能なのは定山渓の札幌国際スキー場から小樽市の春香山に抜ける区間を伐採してゴールを春香山側に作ることだろう。
 これらを冬期オリンピック後に跡地利用出来るのではないか?
 残念ながら少子高齢化で人口減少の現状では跡地利用は無理だろう。外国人観光客と言っても、交通インフラの整備されたニセコ以外では新幹線が通れば小樽の天狗山か。(実は、天狗山は小樽の天神町に新幹線駅が出来れば、スキー場駅ともなる。但し、朝里温泉に駅が出来る公算が高いが)
 札幌冬季オリンピックには大儀が無い。政治色があるだけだ。しかも、その開催は大いなる自然破壊を招くことは42年前の経験で解っている。
 だから、札幌冬季オリンピック招致に大反対する
政治は「招致するなら金をくれ!」の現場を良く知ることだ。

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2014.10.29 Mint