年末の衆議院の解散総選挙はあるのか?

有ると言っておけば無難だが
 マスコミは「売れてナンボ」の精神から急遽、年末の衆議院の解散総選挙が有るとはやし立てている。そのほうが「数が稼げる」ってのは第一にある。で、そのための理論武装が後から付いてくる。
 まずは消費税10%への増税を延期せざるを得ないだろうとの憶測で、そのためには法改正が必要なので国民に真を問うために解散だと繋げる。また、今年末を逃すと衆議院の解散は時期が自民党に不利になる状態しか残されていないので、今が自民党が議席数を若干減らしてでも衆議院を解散する好機だとも言う。
 はては野党の準備不足で今なら勝てるとか、既に公明党には連絡したとか、怪情報も飛び交っている。意図的に怪情報を流してる向きもあるのだろうが、事実は皆目解らない。
 それでも、解散が有ると言っていれば政局が活性化するので、嘘も方便と言えると考えているのだろう。確かに政治家にとって選挙は最大の関心事項だろう。国会議員を続けられるかどうかが死活問題なことは解る。その意味で「政治家は落選したらただの人」は確かだが、所詮、政治家は国民の代議士であって、主権は国民にあり、選挙は主権者である国民が意思表示を行う機会なのが本来の選挙の意味だ。「只の人の当落」は国民主権から見たら「個人的な事柄だ」。
 そもそも政治は「政策と政局」に分かれるのだが、マスコミは政治は政局であるときに「数を稼げる」と思っている(事実、国民もそう反応するのだが)。実際は政治を良くするためには、政策を語らなくてはならない。その意味では今のマスコミは「政治を良くする」なんて使命感は無く、「只の人の数字稼ぎ」を優先している。だから、日本の政治が良くならないし、国民は政策を知る機会を失っている。
 今回は書かないが派遣法の改定には清濁あるが、少なくとも給与不払いを派生させないために派遣先企業の余剰資本のハードルを設置したのは評価できる。また、野党の「同一労働、同一賃金」は検証のハードルは高いが正しい政策立案だろう。だが、マスコミは「3年以上継続可能」が改悪だとかき立てるが政策内容については伝えない。

ずばり「年末解散総選挙は無い!」
 政治は一寸先は闇なので、断定的に言い切るのは危険なので「年末解散総選挙は無い!?」に改めておく。
 まず、衆議院解散に大儀が無いことが上げられる。
 過去10年の内閣は「国民の支持率が低い」故の追い込まれ解散だった。支持率の低いときに解散総選挙するのはオウンゴールを招く。しかし、民主党の3代続いた総理大臣の体たらくで、政権交代が起きる可能性はゼロになっている。唯一、選挙結果によっては読みが外れて安倍晋三自民党総裁が石破氏に交代する可能性はゼロでは無い。
 また、準備不足の公明党が議席を減らして「活きの良い」少数野党が増えるかもしれない。が、これは自民党の亜流的右側政党で民主党が躍進する可能性はゼロだ。
 つまり、今、衆議院の解散総選挙を行ってもほとんど情勢の変化は無い。ならば衆議院を解散して国民に何の真を問うのか。まさに、焦点である大儀が無い解散になる。
 次に、安倍晋三総理大臣に絶対の自信があるのなら、安倍晋三長期政権に向けて何も2年程で解散する意味は無い。何かを再構築する必要がある具体的な党内事情も無い。しいて言えば衆議院の解散総選挙があればその後の臨時国会までの内閣改造があるので、少しは大臣待機組には有利かもしれない。そんな思惑が噂を流してるのかもしれない。
 消費税の増税は理由にならない。これは3党合意で引かれた路線で、これを履行するのは安倍晋三総理にとって痛くも痒くもない。逆に延期するのなら、かえっていらぬ火の粉をかぶることになる。ここは予定通り消費税を10%にして、再来年からのマイナンバーを使って低所得者に消費税相当分還付、いわゆるベーシックインカムを導入したほうが良い。逆に、この制度があれば消費税を20%にしても貧困層の税負担は回避されるので有効な手順となる。ただ、その時までに公明党が与党に残っていればだが。
 とにかく、8%の消費税はメンドウクサイ。10%にしたほうが余計な税計算が無くなるので経済効率は上がるだろう。国内消費が落ち込むのは確かだが、長期的な日本の経済力を考えれば10%までは許容範囲だろう。この僅か2%のことで衆議院を解散して国民に真を問うなんてのは政治パフォーマンスでしか無い。
 結局、衆議院を解散して選挙を行う理由は無い。少なくとも国民は求めていない。


アベノミクスは成功していない
 経済の回復はおもわしく無く、アメリカに引き回されて結果的にラッキーな感じで輸出企業を中心に過去最高の利益を生み出しているが、これは為替相場の妙で政策の結果では無い。唯一、インフラターゲットを叫ぶことにより金持ちの資金の流動性が上がったように見えるが、実態は違う。
 国内消費を支えているのは外国人観光客で、実際の日本人の消費は発表される数字よりもさらに悪い。細かく統計を読むとデパートで高級品の売り上げが回復している。また、特異的なのは化粧品の売り上げが増えている。これは全て外国人、特に中国人の購買力だ。日本では免税店が少ないので消費税はレシートをまとめて精算するが、円安と購買力の強さから免税額はたいしたことは無い(8%だから)、それより本国で買うより圧倒的に安いか本国では手に入らない。
 数年前に新千歳空港のレラで背広を購入していた中国人が居たが「これ、中国製ですよ」と言ったら「こんな良い中国製は日本でしか買えない」と言われた。つまり、日本人バイヤーが仕入れた中国製品は中国国内よりも品質が良いのだ。だから、レラで中国人が中国製の背広を買う。
 外国人観光客が1000万人を超えて、国内消費の数字を下支えしているのが実態だ。実際に国内消費はさらに落ち込んでいる。
 それを衆議院の解散総選挙で回復させることが出来るだろうか。
 唯一、消費税10%を先送りして、国内の増税感を薄めることはできるだろうが、衆議院を解散させなくても可能だ。また、国民は先送りを望んでいるが、その是非を決めるような政策論争にはなっていない。極端なことを言えば「安倍晋三総理大臣がなんとかしてくれる」って雰囲気だ。
 政治は政策と政局だが、政局やっている場合では無い。とすれば、年末の衆議院解散総選挙が有るとすれば、安倍晋三総理大臣が政治は政局だと思っているってことになる。それはちょっと考えにくい。

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2014.10.29 Mint