衆議院解散総選挙は「討ち入り選挙」

まるで「討ち入り選挙」である
 時は元禄15年12月14日。丑三つ時に大石内蔵助が率いる赤穂47士が薩摩赤穂藩の主君浅野内匠頭の無念を晴らすために吉良上野介の屋敷に討ち入り、その首を取ったのが人形浄瑠璃と歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』。で、現在は省略されて「忠臣蔵」と呼ばれている。
 この忠臣蔵はその後がおもしろくて当時の江戸城では「主君の無念を晴らしたあっぱれ論」と「江戸幕府に逆らった逆賊論」が拮抗した。結論はご存じのように全員切腹であった。このあたりを描いたのが萬屋金之助の出演した東映の「赤穂城断絶」である。
 赤穂47士に参加した者の中には「再就職」の手段と討ち入りを目論んだ者も多かっただろう。そもそも大石内蔵助すら再就職論だったと思われる。しかし、現在の基準で見ればアルカイダとなんら変わらないテロ集団が赤穂47士なのだ(ま、歴史を現在の基準で見るのは問題もあるが)
 翻って、赤穂47士に切腹を命じた時の幕府は正しい判断をしたのだろうか。実は全員切腹が無ければ「忠臣蔵」はここまで語り継がれていないだろう。長いレンジで考えてみると、幕府は「試合に勝って勝負に負けた」のだ。これが赤穂47士に対する幕府の対応に関する私の歴史観だ。
 さて、その12月14日を投開票日として11月21日に衆議院を解散する安倍晋三総裁が率いる自民党は赤穂浪士側なのか吉良上野介側なのか、はたまた幕府側なのか。
 実は、今回の選挙は極めてテロリズム的な要素を含むと考えられるので赤穂浪士だろう。選挙の争点を明確にする方法もあるが、逆に不明確にして国民の信を得ようとする選挙方法もある。消費税増税延長なんてのは国民全員が賛成だろうから争点にならない。では、何が隠されたまま選挙戦に突入しようとしているのか。何処がテロリズム的ななのかを順を追って説明しよう。

衣の下に鎧が見え隠れ
 安倍政権は長期政権であることを目指している。過去、1年毎に総理大臣が替わっている間に日本はぶれない政策も外交も無いまま世界から孤立してしまった。また、政治情勢が不安定であることが経済の不安定に繋がった。
 安倍政権が長期政権であるためには、これから訪れるハードルを飛び越えなくてはならない。そのハードルとは
1)憲法解釈変更による自衛隊法等の改正
2)原発の再稼働
3)再生エネルギー買い取り停止の容認
4)NSC法案の実施
5)武器輸出(オーストラリアへ潜水艦輸出)
6)特定秘密保護法案の適応
7)普天間基地移設問題
である。どれを取っても国民には不人気な政策分野であり立法のハードルは高い。野党の攻撃も激化するだろう。
 しかし、このハードルを超えないと安倍長期政権は実現しないとすれば助走を長く取って一気に飛び越える。そのためには、具体的に詳細項目が出そろう前に解散して信を問うのが得策ってのが今回の衆議院解散の大義だ。
 表向きは
1)消費税増税延長の是非
2)アベノミクス政策続行の是非
を国民に信を問う、と言っているが、半数のマスコミと多くの野党がそう思っているようだが、全然違う。この2点を争点と捉えると投票時の代議士選択を誤る。
 だから、前述の1)〜7)を隠したテロリズム的な、消防組を偽装した「討ち入り選挙」と言える。
テロリズムは「恐怖による支配」が真髄だが、「テロリズム的な」手法は「情報遮断による支配」だ。これは中国共産党の得意技だが、情報戦の戦法としては確立しており、その意味で「広義の情報戦」を安倍政権は国民に向けて仕掛けてきたのが「討ち入り選挙」の本質である。
 だから、安倍晋三総理は記者会見で「勝敗ラインは」と聞かれて、思わず本音が出て「自民、公明の両党で過半数を確保できなければ辞任します」と答えている。
 今回の選挙で国民に信を問うたのだから、選挙の結果が勝利(過半数超え)だったら上記の任期内で1)〜7)の政策は強行採決も辞さずって宣戦布告と読むのが「過半数に行かなければ辞任」の真意だ。
 橋下徹流の「文句があるなら俺を落選させろ」に近い「テロリズム的」な手法だ。


マスコミとヒョーロン家のリトマス試験紙
 衆議院選挙は選挙期間が12日と短い。この中で投票日を除けば週末は1回だけである。マスコミの政治番組(含む政治バラエティ)は数字を稼げる特需として盛んに評論家を呼んで番組作りをするだろう。野党の数が多いので党首討論はなかなか難しいのでコメンテータと言われる評論家の独壇場になる。
 ここで、特にテレビの場合、そもそも放送免許は政府の許認可事業だから、時の政府に不利になるような番組は作れない。おのずと出演交渉する評論家は政府寄りになる。政府よりだと誰でもが歓迎する「消費税増税引き延ばし」を評価するフリをするだろう。今後、想定される安倍政権の1)〜7)の政治ハードルは口が裂けても話題にしない。
 結果としてテレビを中心にマスコミによる世論操作が行われる。
 そして、来年の今頃には「こんなはずじゃ無かったのに」となる。
 選挙に情報戦はつきものだ。ただ、それは選挙の本質を歪める。ジェファーソンが「情報は民主主義の糧である」と言った基本が損なわれる。
 国民が自らが正しい選択と思って代議士を選ぶには「真実」を知らなくてはならない。「寝ていてくれたほうが良い」発言に見られるように「真実」を伝えずに当選することが選挙手法だと考えている代議士や政党が多い。それでは戦略を忘れて戦術に溺れることになる。まさに「試合に勝って勝負に負ける」である。
 安倍晋三赤穂浪士の「討ち入り選挙」の矢面に立たされるのは国民だ。吉良上野介側と言って良いだろうか。幸い戦術論では攻めるには守る3倍の勢力が必要の鉄則がある。
インタネの発達した現在、ジョン・F・ケネディがテレビでの情報戦で勝利した時代は去り、インタネに情報戦の舞台は移りつつある。我々国民は情報戦に勝利することは可能だ。
一番望ましい政権は「自民党+公明党」の連立与党では無く「自民党+野党第一党」の連立政権だ。
 戦後日本の政治で一番右よりだった自民党のさらに右を行く政党も複数出てきた。なにも大きな政府志向の公明党と組んでいる必要は無い。右に行くほど小さな政府になるのだから。
 自民党は船に例えると「復元力」の大きな集団だ。右に左に揺れてもひっくり返えりはしない。民主党のような少しでも揺れると転覆することは無い。もっと、右寄りと組んでも転覆しないだろう。
 「討ち入り選挙」の全貌が見えていれば防御は容易だが、マスコミやヒョーロン家が仕掛けてくる情報戦はまだまだマスコミがインタネより強靱で、前述の攻撃3倍説と合致するかもしれない。意図的に情報を隠す者、意図的に情報を誘導する者をピックアップするリトマス試験紙が活躍することになる。
 国民にとって政治は茶番劇で何も決まらないのは不幸だ。予算委員会で団扇を振り回して個人攻撃を行うのは「内輪もめ」だ。
 政治が前に進む政治体制を作る選挙にしなくてはいけない。

button  アベノミクスの三本目はブーメラン
button  既得権益岩盤に向けたドリルの刃が斜めった



2014.11.19 Mint