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日本人拘束は外務省事案か?
テロとの戦いの本質は20世紀まで行われて来た外交による国家間の調整業務で紛争を収拾させていた形式と手法を異にする。国家には代表する政府(統治機能)があり、それぞれの政府には他国との調整窓口の外務省があり、この外務省の交渉で問題を解決してきたのが20世紀の「国家間」の調整機能だった。9.11以降、国家はテロリストと対峙する必要に迫られたが、世界中のどの国家でも国家の機能の中に対テロリストって部署は整備されていない。これはサイバーテロへの対応と同じく、国家の「国民の生命と財産を守る」ために準備している機能が時代の変化に追従できないってことだ。 今回の日本人拘束と身代金要求は外務省が対応するようだが、そもそも、外務省には犯罪捜査の機能は無い。せいぜい情報収集である。つまり、問題解決機能は外務省に備わっていない。日本以外の地域で外国人による犯罪が行われている時に、対応は外務省ってのは組織機能として20世紀のままだ。 佐々淳行氏の著書にあるように、外務省の機能を補佐するために警視庁(広くは警察庁だが)から専門家を派遣してもらい事件に対応するのが過去の外務省のやりかただった。現に佐々淳行氏はシンガポール・シージャック事件では現地に出向き情報収集しながら対応をサジェスチョンしていた。 国家間の調整は外務省の事案だが、国際テロリスト犯罪への対応は今の日本では警察庁(含む警視庁)の範疇ではないのか。その意味で、今回の事案は、まったくの文民である外務省の対応よりも若干軍事色のある警察の対応のほうが的確ではないかと思う。 軍事は外交カードの1枚だが、日本では憲法9条に配慮して外交カードの中に軍事は無い。その一歩手前の治安維持のカードも外交カードには無い。つまり、武力行使とまでは言わないが威嚇活動ですら日本外交の中にカードには無い。個別的自衛権をを判断するのは自衛隊(軍隊)を統率する総理大臣の事案であって外務省の事案では無い。だから、外務省は逆説的に海外での邦人保護への対応は権限外と位置づけて逃げる。 |