熊本地震はどんな地震なのか(1)

珍しい断層地震が熊本地震
 今回の熊本地震で亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに被災された多くの方へお見舞い申し上げます。直接支援の手を差し伸べられませんが、今回の地震の様子を情報でお伝えしたいと思います。
 本記事に利用した図表は国土交通省・国土地理院の「最近の地殻変動情報」http://mekira.gsi.go.jp/project/f3/ja/index.htmlより引用・加工させていただいています。
 今回の熊本地震は過去の多くの地震が海洋を震源とするプレート型地震だったのに比べて内陸型断層地震であることが特徴である。これだけの規模の内陸型地震は珍しく、余震と予震と本震が後から解る事態にもなった。
 地球表面は「地殻」で覆われており、その厚さは海洋底で数km、陸地では山岳の高さと同じだけ潜っているので数10kmにもなる。その「地殻」が浮いているのがマントル。地球の半径が6,000kmだから我々が「地に足を付けている」「地殻」は非常に薄いものだ。このあたりの地球全体の構造を良く説明している動画があるので、参考にされたい。https://www.youtube.com/watch?v=3yfen-t49eI&feature=youtu.be
 マントルは地球内部の熱で対流しており、このマントルに乗って地殻(地面)も流れていく。人間の時間軸では想像が難しいが、蜂蜜の上に豆腐が載った状態がマントルと「地殻」の関係と考えると良い。その蜂蜜がゆっくりと流れて地下に潜って行く境目では豆腐は引き込まれないように時々潜っていく蜂蜜に逆らって浮き上がる。これが海洋型のプレート型の地震を引き起こす。
 一方、断層型の地震は、大きな平たい豆腐の右と左で蜂蜜の流れる方向が違い、豆腐自身が引きちぎれる現象だ。これが起きた場所に活断層と呼ばれる断層帯が出来る。実は今回の熊本地震は西日本を貫く断層帯である中央構造線の上で起きている。
中央構造線と今回の地震の予兆については後付の熊本地震の予兆で書いているので興味があったら参考にして欲しい。

熊本地震の直前、直後
地震直前の九州の地殻変動の状況
4/2 国土地理院では全国各地にGPSの観測点を設けて、各地の「相対的な」地表面の動きを情報発信している。主に測量の自動化に寄与するのが目的であるが地殻変動の様子を知ることができる。
 地震直前の4/2の画像は2015年4月2日から1年間の各地のGPS観測地を図示している。観測起点を熊本にしているので矢印が右向いてるとか左向いてるはあまり意味が無い。あくまで、熊本に対して各地のGPS測定値はどのようになっているかを読み取る必要がある。
 四国(豆腐)はフィリピンプレート(蜂蜜)によって押されているので北西に移動しているので起点として熊本を用いるのは直感的に解りやすいだろう。
 押されても行き場が無ければ(進み難いなら)豆腐は歪んで力を分散させる。それが、中国地方の矢印が北東に向かっていることで読み取れる。
 さて、九州だが、複雑な動きをしている。宮崎から熊本に向かった歪みは熊本の南辺りから方向を変えて90度左折したあとに鹿児島の辺りでは逆方向の向かっている。一方、熊本の北では逆の右折して中国地方に向かっている。
 既に、熊本近辺で豆腐が千切れる必然が読み取れる。
 問題はそれがスロースリップとして群発地震程度で左右にずれるのか、今回のようにマグニチュード7.3の地震を起こすのかは、歪みに蓄えられたエネルギーが一気に発散するか徐々に発散するかによる。
 この差は豆腐が堅いか柔らかいかだが、実は地殻や断層の中にアスペリティと呼ばれる「引っ掛かり」が有るかどうかだ。
 例えば東日本大震災では「富士山規模のアスペリティが歪みに耐えられずに折れた(割れた)」と言われている。今回のMJ7.3でも中規模の山一つ規模のアウペリティが折れたことになる。


地震直後のGPS測定データ
4/2 地震直後の4月16日のデータだが、熊本近辺で西南西と東北東の方向に地面が動いたことが解る。その他の地域では地震による変動は地震前と変化がない。
 先の画像と起点を変えてあるので、多少の方向の違いはあるが、変化が無いと言っても良いだろう。
 地震が起きたのは
2016年4月14日21:26 MJ6.5
2016年4月16日01:25 MJ7.3
画像を見ると2回の地震で局地的に地表の移動は起きたが、これはアスペリティが壊れた程度で、大きな地震ではあったが地表面の変動は少ない。
 ところが、これに続く地震はアスペリティが壊れた後の蓄積された歪の開放だったことが解る。
4/2 最初の2回の地震から1週間経過した状況が左の地表面の移動に現れている。
最初は局所的な断層の移動だったのが広範囲な移動に変化している。
最初は東西への横移動の断層地震だったのが、その後、アスペリティの崩壊によって、蓄積された歪み(豆腐の方)が活発になり、東西方向の地表面の移動が起きている。
同じ地点を起点にしているのに四国地方の移動方向が異なっているのは起点も移動していることによる。また、この図は移動の数値が大きいのでひとつ前の画像で使っている移動量表示50%を20%に縮小している。画像の中の1cm例示の長さの違いにも着目して欲しい。
南北に延びる地表面の移動は何なのか。実は地殻(豆腐)は引っ張られて動くことはほとんど無い。複数の方向から押されて千切れる感じはある。その意味で、南北への移動は熊本近くでアスペリティが壊れて解放されたエネルギーが向かった方向を表していると言えるだろう。
国土地理院のデータは詳細を分析して2週間遅れで公表される。そのため、現状を把握するのは2週間遅れる。その後のデータを見た(2)に続く。

button  後付の熊本地震の予兆
button  GPS測定値から地震を予測するのは可能か?


2016/06/02
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