統治機構を変えないと制度疲労は直らない

三重立法府は何も担保しない
 先に書いておきたいと言ったのだけれど、かなり時間が経ちました。
東京都知事選挙がドラスティックだったこともあって、地方議会に批判的な意見を構築するのを躊躇った面は確かにあります。ただ、三権分立の統治制度の中で司法は全国区で最高裁、高等裁判所、地方裁判所となっている。行政府は予算の関係から市町村単位に運営される。立法府が全国区の国会、都道府県の県議会(北海道では道議会)、自治体単位の市町村議会と分かれている。
 何故、三権の中で立法府が三重構造なのだろうか。行政府も市町村に立脚するが予算は全国区からの地方交付金に依存している。これはまた、別な機会に矛盾点を書いてみたいと思う。
 「立法府」ってのは法律を作る機能だ。その機能が三重構造になっている今の統治制度は矛盾を多くはらんでいる。例えば、小池百合子氏が当選した東京都だが、立法機能は「区議会、都議会」と二重構造になっている。しかもそれぞれが独立しているので、今回の築地の豊洲への移転問題は区議会決議で行われる。
 もっと、本質的な話をすれば立法府である議会が行政府である役所をコントロールする機関になってしまい、本来タックスペーイヤ(納税者)の意向である立法府への税金が単なる立法府のコントロール(利権構造構築)機能に使われている。
 「議員さんの決めたことに職員は逆らえない」ってのは三権分離の原則を逸脱するのだが、これが東京都だけでは無くて市町村議会でも横行してる。大きな理由は職員は役所に雇用された労働者で、議員は選挙で選ばれた特別職なことだ。有期雇用と無期限雇用では、実は有期雇用のほうがやりたい放題できる。
 基本論に戻れば、地方行政の監視役としての地方議会は本来の機能なのだろうか。立法の機能とは別次元な機能を我々は選挙で選んでいないだろうか。
 憲法に逸脱しなければ地方の特徴ある法律はバンバン作れるのが市町村議会だ。が、その機能を発揮していないのは地方自治制度が発足して71年間に経験として実感されている。にも拘わらず、何故、無意味な地方議会が存続するのだろうか。

報酬に値しないなら経費削減を
 市町村議会にも「政務調査費」なる費用が議員報酬とは別に支給されている。本来の意味は立法に関わる行為を補佐するための特別経費だろう。しかし、市町村議会が行うのは立法には程遠く、地方自治体の予算の監視だ。しかも、利権として予算をねじ曲げる以外はスルーパス状態だ。しいて言えば、利権予算のゴリオシしか介入の余地はない。
 そもそも市町村議会が立法府機能を発揮するには現在の国の行政府の許認可権が立ちふさがる。特区は市町村議会が起案するのでは無く、内閣府に認可してもらうのだ。「当地はワイン産業育成のために、明日からワインからは酒税を徴収しない」とか言っても実現するには国の何故か「行政府」の許可を受けなくてはならない。
 基本的に市町村議会に立法権限なんか許されていない。にも関わらず市町村議会を設置し、運営するのは何故か。それは既得権益であり都道府県議会及び国会への予備校だ。
 先に、都道府県の最適数による再編成を書いたが、(以後、「新都道府県」)市町村議会が独自で立法して他市町村との競争を計るには規模の大小のバラツキが大きすぎる。競争は対等な規模間で発生するもので、大小に差があると、所詮、大は小を飲み込む。
 民主主義は手続き論に陥りやすく、維持管理に手間暇がかかり、経費(国民の税金)も多大になるが、この見直しは既得権益側にしか出来ないので、パーキンソンの法則どおりに拡大の方向にしか進まない。
 行政府である地方自治体側にも問題がある。現在の会計基準が議会を通った予算の30%以内なら別名目に使えることだ。競争入札で業者に予算の70%で落札させ、残った30%は現場で自由に使える金に化ける。なんせ、予算がインターネットで公開されているので業者は予算の70%の金額で入札が「義務」で、競争入札が最後は抽選で決着って事が札幌市なんかで発生している。他市町村も同様な状況だ。
 つまり、市町村議会が予算を精査しても30%は行政府の判断で使われる70%議会なのだ。
 PCが一人一台の時代なのに予算管理はドンブリ勘定で、しかも原課によっては30%の自由裁量が残される。特に印刷業務に70%入札が多いのは利益吐き出しても仕事欲しいって業界の弱みを知っているからだ。
 サーバで集中的に予算の予実管理を行い、議会で承認された予算の消化率を常に把握し、余ったものは議会でプールし、足りないものの負担行為申請は議会で判断する(ま、100万円以上はとの縛りを入れても良いが)仕組みを作るのは容易だ。是非とも、そうして国民の税金を使うのだから予実管理をしてもらいたい。
「それでは議員の仕事が増える」なんて意見が出てくる。そもそも、仕事してないのに何おかいわんやだ。
 興味のある方は市町村で競争入札の結果を公開しているホームページが多いので予算書(これも公開されてるのが多い)の金額と比較してみたら良い。楽しくてワクワクするのを保証する。


市町村議会は再構築を
 新都道府県議会は立法の機能を果たす余地はある。地域特性は地勢的理由により全国一律では無いからだ。本来の政府の使命である国防と外交以外はすべて担っても良いと思う。省庁の機能は新都道府県に移管しても良いだろう。
 しかし、市町村議会は地方自治体の予算の立案、執行、決算の監視機能として大幅に縮小すべきだろう。現在は都道府県議会が機能不全だから市町村議会も機能不全のまま残る。新都道府県議会が設立されると、地域独自の政策が競争原理に沿って行われるので活性化し、市町村議会は機能を失う。
 では、どのように市町村議会を再構築するのか。
 まず、監査機能の強化だ。税理士、会計士、中小企業診断士のような経営を客観視する機能を半分、住民の意思を代表する一般議員を半分にして市町村議員投票を行う。人数には市町村の規模によらず上限があり、両者20名で40名とする。日本一の規模の企業だって監査機能はこの程度だし、一部、外部機関を使っても良い。現在40名以下の市町村議会は隣接する市町村議会に業務を委託し、現在人数の監査員を選挙で選ぶ。
 市町村の組長は現在と同じく住民の直接選挙で選ぶ。これは行政府のトップであり、新市町村議会とは対峙する関係になる。
 これで、立法機能の三段構造(そのほとんどが機能していないムダ金を生んでいるのだが)が解消される。
 では、そのような統治機構を誰が作るのか。それは、不作為の国会議員集団を抱える既存政党ではできない。何故なら、既得権益に首まで漬かっているからだ。
 統治機構の改革は新党にしかできない。
 あるべき日本の姿のイメージを持っていない国会議員は落選させ、統治機構のイメージを描ける国会議員を送り込まなくては「改革」はいつまでも絵に描いた餅のままだ。

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2016/09/07
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