簡易な再発防止策が提言可能
各種の調査報告から見えてくるのは「事故原因」よりも「事故の拡大」を防止できなかった反省である。
百歩譲って事故原因は1000年に一度の地震と津波でも良い。しかし、その「自然災害」を「人災」に拡大した原因は調査報告書から読み取れるし、その対策を講じるのは容易だ。
何も原発の設計図を持ち出して構造上の安全性審査まで遡る必要は無い。安全な(はず)のものを安全に運用できなかった原因こそが福島第一原発の教訓であり、再発防止に生かさなければならない論拠なのだから。
様々な報告書からは「事故の拡大」の要因が読み取れる。
まず、「事故原因」と「事故対応」(の拙さによる事故拡大)を分けて分析しておこう。
1)「事故原因」は設備の脆弱性による。
そもそも、アメリカで設計された沸騰水型原発(BWR)の設計思想は「放射性物質を格納容器で閉じ込める」って考え方で、現在の設計理論からすると古臭い発想だ。実際、福島第一原発は稼働から40年。設計段階から考えると50年も昔の知見で設計されている。その最たるものが非常用電源の設置場所だろう。津波なんて無いアメリカでは重量物を地下に設置するのが常識で、その設計思想が津波を考慮していなかったのが設計の問題点の「そのいち」
そもそも、沸騰水型原発(BWR)は軽水炉と区分けされるように、水を利用して高速中性子を低速中性子に減速しウラン238の核に当て核分裂を持続させる。しかし加圧水型原発(PWR)型に比べて格納容器による閉じ込めや、急減圧によるボイド(泡)の発生時に中性子制御が負に働き高速中性子を格納容器を越えて放出する設計上の欠陥がある。そのため、世界の潮流、そして原子力推進の空母や潜水艦には加圧水型原発(PWR)が使われている。福島第一原発は知見得られていない頃の設計による沸騰水型原発(BWR)である。
再稼働が優先的に審査されている原発は全て加圧水型原発(PWR)な理由をマスコミは報道しない。
次は外部交流電源の喪失にある。福島第一原発は東北電力から受電する構造になっていた。そもそも、発電した電力は東北電力の電力網に流れ、一部は東北電力にも供給されていた。半端なヒョーロン家が「東京の電力を賄うために東北に負担をかけた」ってのは間違いで福島第一原発で発電された電力の一部は東北電力に供給され、東北で消費されている。
その送電鉄塔が地震で倒壊して福島第一原発が電力を受電できなくなった場合の対策(リダンダンシー)が非常用電源だけだったのが設計の問題だろう。通常、コンピュータのデータセンターを設置する時には2系統の変電所からの電力供給を前提に設計する。変電所事故は必ずしも稀では無く、そのために停電にならないように2系統を設計する。加えて自己発電設備も完備しておく。
ちなみに守秘義務に抵触しないと思うが、札幌のテクノパークは2系統を同一変電所から引いているまったく危機管理の無い送電設計になっている(余談)
2)「事故対応」は練習不足
体育会系の競技で「練習でも出来ない事が出来た」なんて言ってる場面に遭遇するが正直言って「練習で出来たことを忘れていたけど、本番で出来た」が正しい。
各事業所には火災訓練なんかを定期的義務付けているけれど、お祭り騒ぎで参加しているかもしれないが「練習で出来ない事は本番でも出来ない」のだ。
大きな問題点は福島第一原発の一号機の全電源喪失時に稼働するIC(アイソレーション・コンデンサー)が稼働してるかどうかを現場の誰も(所長も含めて)確認できなかったことだろう。本来ICの稼働訓練を行い、動作確認すべきだが「すさまじい音が出るので、周辺住民を不安にさせる」ってことで訓練で稼働させたことが無く、そのため、現場の作業員がICが稼働しているかどうかを物理的(危機管理は計器が故障しても現場の実態を把握できる必要がある)に把握できなかった。訓練不足、いや、訓練計画のミスがあった。
もう一つは三号機の水素爆発である。粉飾決済(ま、不適切会計処理と言うらしいが)で評判の悪い当時の佐々木則夫東芝社長だが、一号機が水素爆発した時に首相官邸に詰めていて「三号機も同じになるからブローアウトパネルが高線量で近づいて開けられないのなら高圧放水で原発建屋の壁をぶち破る必要がある」と提言していた。
同時期に福島第一原発の吉田所長も「三号機の水素抜くには壁をぶち抜く高圧放水車回してくれ」と言っている。二人の技術者が別々に三号機の爆発を防ぐ方法に気が付いたのだけれど、当時の政権は三号機が水素爆発しても「一号機と同じ事象なんで、ただちに危険は無い」などとほざいていたのだ。
そのために、三号機の燃料貯蔵庫が漏水したら東京も避難対象地域になる可能性が高まった(と、アメリカは読んでいた)。是非とも三号機の爆発を防がなくてはならないって、一号機の水素爆発から2日も余裕があったのに対処できなかった。そのために、廃炉に向けての工程にどんだけ多額の撤去作業費用が積み上げられた事か。
再稼働の時間稼ぎは官僚の甘い汁
実は、福島第一原発の事故を受けて全国の原発が停止しているの現状を、ほくそえんで見ている官僚や政治家が居る。出来れば国益に反してでも原発の再稼働は阻止したいのだ。
マスコミも気が付いていないのだが、実は日本の原発が吐き出す核のゴミ。いわゆる使用済み核燃料を保管する場所が福島第一原発の事故の時点で残り1年分しか無かった。
核燃料サイクル以前に、使用済み核燃料が原発に保管されているには苦肉の策で、実際には原発では不要になった使用済み核燃料を運び出して保管する場所が無いのだ。
それは電力会社の責任かと言えば、国の無作為によって原子力発電を電力会社に行わせる代わりに使用済み核燃料の始末は国が責任を持つと大見得切ったのだが実現していない。それを先延ばしするのに好都合なのが「原発再稼働審査」であり、再稼働への時間引き延ばしだ。官僚にとって都合が良いのは当時の総理大臣だった菅直人氏は「感情のシト」なので原発停止(正確には発電停止で、原子炉自体は冷温稼働状態で動いている)に積極的だった。それを官僚は最大限に利用した。
引き延ばしている間に自分は定年になってどっか(出来れば核関連を避けて)天下れば何ら悩むことも無いし責任も追及されない。そのためのシナリオが「厳密な審査による時間稼ぎ」なのだって国民を騙した官僚の無作為が大手を振っている。この現状にマスコミは触れない。
まともに原発が動いたら使用済み核燃料は何処に運べば良いのか。その政策を誤っているから各電力会社はリスクを犯して使用済み核燃料を原発で保管している。放射線量が低くなるまでの処置なんてのは嘘っぱちで、運び出し先が無いから保管しているのだ。
この件は福島第一原発事故の前に河野太郎氏が気が付き追及しようとしたが潰された経緯がある。
いいかげん、反原発派も原発推進派も目を覚ましたら良い。
イデオロギーに終始している段階を隠れ蓑に国は原発問題を次世代に託して逃げ切ろうとしている現実を直視すべきだ!
納税者が国のペテンに乗せられているのに気が付け!
それを伝えろ>マスコミ!