トランプ外交は「4ブロック+1」方式

政治をビジネスするトランプ
 民主党政権時代だったか「政治を科学する」って総理大臣が生まれた。ま、政治は科学では無いのは自明で、現在進行形状態が政治で、誰でもが追試で事象を再確認できない。ましてや、科学は他の学問と矛盾する部分があっても調整を必要としない。
 相対性理論を学ぶときに一番理解できないのは「真空中では光はどの空間でも同じ速度」ってことだ、光の速度で走ってる車のヘッドライトの光は倍の速度になるんじゃないかって経験則を打破しないと理解できない。
 で、このことを述べると「相対性理論の話をしている時に経験則を言うな」とたしなめられる。経験則との整合性を取る気持なんかサラサラないから相対性理論は成立する。ま、成立と言うのは変な表現で、科学なので「存在する」というのが適語表現かもしれない。
 しかし、政治は「経験則」の塊である。決して「科学」の手法とは相いれないのだ。
 ところが、ここ数週間のアメリカ大統領トランプ氏の行動及び周辺の活動を見ていると「政治を科学する」では無くて「政治をビジネスする」と見える。表現を調整すると「政治の手法にビジネスの手法を適用する」って柱が一本見えてくる。テレビのヒョーロン家なんかは「ビジネスマンのはったりが出てますね」と言うが、厳密にはビジネスマンは「はったり」では行動しない。セールスマンは行動するかもしれないが。そもそも、そのヒョーロン家の先生はビジネスでの経験を一切有していない。せいぜい保険の勧誘のセールスマンくらいしか知らないで「ビジネス」を語っているようだ。
 ビジネスとセールスの違いの典型的な逸話を紹介しておこう。ソニーが初めてトランジスタ・ラジオを量産してアメリカでの売り込みを目指した時にアメリカの流通大手に「わが社のブランドとして生産してもらえる、なら発注する」と言われてSonyの名が付かないなら供給しないと決めた。
でも、製品を売らなければ(つまり、製品を商品化しなければ)利益は得られない。そこで、売り方のプロ(つまりセールスのプロ)に販売を委託した。すると飛ぶように売れた。
 Sonyは不思議に思いセールスのプロに聞いた「何故、そんなに売ることが出来るのだ?」、セールスは「ポケット・ラジオってキャッチコピーで、ほら、ワイシャツの胸ポケットに入るだろうってセールスした」とワイシャツの胸ポケットにSonyのラジオを入れて答えた。
 「君の着ているワイシャツの胸ポケットって」、「そうさ、縫い直してもらって大きくしたので、このトランジスタ・ラジオが入るんだ」
 井深さんは自伝の中で書いているが「製品を作るのが技術者の使命、製品を売るのが営業の使命、って事が解った体験だった」と語っている。
 トランプ氏を身近に付き合っているセールスマンと同等にヒョーロンしていると、技術と営業を統括する「経営」を行っていることを見誤るだろう。

外交は国益最優先のビジネス
 発想をまず変えなくてはいけないと思う。歴代の国と国の関係、つまり外交は武力カードと経済カードのババ抜きだった。つまり、自分の強いカードを相手に引かせて負けを認めさせる。そこで、強みを前面に出して自国の利益を確立する。最近気が付いたのだけれど紅茶の国であるイギリスは自国で紅茶を製造していない。全て旧植民地からの「製品」として仕入れ、これを「商品」として世界各国に販売してる。
 私はコクのあるハイアッサムのフアンなのだが、これは最近は中国製らしいので敬遠してる。
 で、安倍首相が訪米して歓待された構造を考えてみる。正直言ってトランプ大統領は外交音痴である。有名な話に「おじき」と呼ばれる経済評論家(らしき)須田 慎一郎氏が大統領選挙開始前にトランプ氏に会った時の開口一番は「お前の国の習近平だがなぁ」て言われたそうだ。歴代の大統領と同じ(含むオバマ大統領)でアジア地域の知識は得るすべもないのか情報が不足している。
 そこで、出てくるのがオバマ大統領の大国柱にある「ビジネス感覚」である。以後、「ビジネス」と簡略化して書くが決して「セール」では無い事はここまで読まれ方は理解いただけると思う。
 事業家が世界の事業運営を任されたときに何を思うだろうか。
永遠の謎だと思う。ただ、確かな事はビジネスは組織で運営される事に着目すべきだろう。過去の律令制度は王国制度とか独裁制度を招いたが基本的にトップを頂点とした構造で運営されていた。トップの権限は誰にも移譲されず組織の方針はトップの決済によって決定されていた。
 企業では組織が大きくなると(民間企業では社員数500人以上)トップが全てを把握しきれなく「事業部制」って組織運営が行われる。最近では更に進んで「持ち株会社」制度で株主(狭義のステークホルダー)と組織を分離する考え方が主流になりつつある。
 アメリカ大統領のトランプ氏の発想は外交にこの「事業部制」を持ち込む挑戦だろう。アメリカが世界の警察を担えないのは明らかだが、その段階で世界の外交に地勢的要因による事業部制を広めよと画策しているのがアメリカ大統領トランプ氏ではないだろうか。
 その最たるものが、今回の安倍晋三総理大臣の訪米での待遇だろう。極論すればトランプ大統領はゴルフでコースを回る間に「アベ、アジアはお前がやれ!」と言ったかもしれない。
 世界を地勢的に事業部制を敷くとすると、
ブロック地域事業本部長
南北アメリカ大陸当然、トランプ大統領
アジア地域日本、安倍晋三
ユーラシアロシア、プーチン
ヨーロッパ(EU)フランスかドイツ
 アフリカ歴史的にフランスとイギリスの統治責任
+1イギリスここだけは特別扱い

と、区分される。
つまり「4ブロック+1」の外交である(事業部制と言っても良いだろう)。

資本本位経済外交の終着点
 国益を最優先するのが外交だが、過去の歴史を振り返ると、長期的国益を優先せずに、短絡的な国益を狙っていた外交が多かった。
 実は過去50年のGDPを比較するとその0.1%でも多い国が現在において他の国のGDPを凌駕していることが解る。つまり、短期的な経済政策でGDPを延ばしても、GDPは長距離競技で国力であり10年、いや、30年ほど先に結果が出る。
 資本本位社会(「資本主義社会」なんて用語は誤用である。そんなイデオロギー(主義)は存在しない)が行き着く所は自国の国益の追究である。文字通り自国の富の蓄積である。
 本来、経済は富の蓄積では無い。
 現在社会で言えば貨幣の流通量の拡大が経済規模の拡大である。このあたりを正確に報道できる力量は今の日本のマスコミには期待できないが「富の偏り」って表現は、経済が一部の層に滞留し、市場で流通しない状態なのだ。決して「富が集中」したのでは無い。富が拡散できなくて経済が滞留してるってのが正しい経済論だ。
 その「富」が滞留しないような経済圏を作るには、全地球をブロック分けして、それぞれに担う担当者を決めるってのはビジネスの基本だ。世界征服を一つの団体が担うってのは美しい倫理だが効率的では無い。その意味で、アメリカ大統領のトランプ氏はブロック統括責任者を決めているのだろう。そんなこと対等な外交政策では許されないと思う古い発想は一蹴される。何故なら、外交が政治家生活を歩んできた政治家屋や官僚一筋の役人が体験したことが無い世界にトランプ氏は引き込もうとしているのだから。
 兼ねてからの「外務省」なんてのはトランプ大統領の前では吹き飛ばされてしまう。国益を叫びながら調整を主眼としてきた組織は役人の世界では存在価値があるかもしれないが、ビジネスの世界では非効率で存在しえない。そんな組織を抱えたら企業は潰れてしまう。
 結局、国益、自国ファーストを選択したら、それは武力による統治では無くて、経済による統治に行き着く。何故ならば、平和こそが経済を下支えするからだ。
 中国が「二つの制度」を導入した段階でイデオロギーによる外交や国内統治は破綻したのだ。その結果が見える形になるにはまだ時間がかかるかもしれなしが、イデオロギーが国際社会を支配していた冷戦構造が1989年のベルリンの壁の崩壊から再構築されて久しい。
 世界の外交は政治のプロ(政治しか知らない単細胞)の手を離れて、ビジネス外交の世界に変化している。旧来の政治屋と官僚による制度疲労が、トランプ氏による「政治をビジネスする」手法で明確になるだろう。

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2017/02/14
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