北朝鮮へのパワーバランスが崩れた

金正男暗殺がトリガーになる
 北朝鮮の核問題に外交的解決策を見出そうと始まった6ヶ国協議だが、実績を残せないまま北朝鮮の原爆、水爆の開発実験およびSLBMによる核ミサイルの開発を手をこまねいてみているだけになっている。
 6ヶ国協議は北朝鮮、韓国、日本、中国、米国、ロシアの各国だが、各国の思惑とパワーバランスの中で三すくみ(六すくみ?)状態で事態は解決に向かって遅々として進まない。
 北朝鮮に対する経済制裁だけが外交カードでは限界があるのと中国が実質的な経済制裁を発動していないのが影響していた。しかし、ここに来て北朝鮮から中国への輸出の半分を占める石炭の年内輸入禁止を中国が行った。一方では中国国内で国境を接する地域の炭鉱が北朝鮮からの安い石炭によって経済的打撃を受けているので国内対応との見方もあるが、外交的には中国が北朝鮮に対して強い外交カードを切ったと見られている。
 このタイミングが北朝鮮主導と見られている「金正男暗殺事件」と連動するのか微妙だが、経済のパワーバランスに変化が生じるのは明らかだ。
 6ヶ国協議のメンバを見ると中国、米国、ロシアが大国であるが隣接する韓国は自らの政情不安も含めて機能していない。日本は拉致事件の関連と軍事外交カードを持たないのでパワーバランスのバランス側になる。つまり、実質的に中国、米国、ロシアのパワーバランスが北朝鮮を支点に揺れ動いていることになる。
 各国とも弱小な北朝鮮は韓国に主導権を与えて任せておけば良いと考えていたようだが、そもそも朴大統領の影の側近である崔順実氏は元々北朝鮮出身者の娘で、北朝鮮に通じていた。このような政治状況ではヘタすると北朝鮮が主導する朝鮮半島の統一になりかねない。それは、核保有国を広げる結果となり3か国にとっては都合が悪い。特に中国にとっては未知の脅威の発生である。
 その膠着状態に加えて今回の北朝鮮主導と見られる金正男氏(と、思われる)の暗殺事件発生である。
 北朝鮮を殲滅するのが3ヶ国の利害にかなうと考え、水面下での調整が活発化している。

大国の描く新北朝鮮体制
 金正恩体制を崩壊させるのは3ヶ国、特に中国とアメリカにとっては簡単な事だ。ただ、その後の統治方法を間違うと大量の難民が韓国や中国に流れ込み無政府状態の中でかつてのソ連崩壊が引き起こしたように第三国に兵器の技術が流出する。核ミサイルを保持する国家が増えるのでは問題のすげ替えで解決には程遠い。
 そこでアメリカは金正恩体制を崩壊後の北朝鮮を中国、ロシア、アメリカの3ヶ国による「信託統治」にしようと考えているふしがある。第二次世界大戦(日本名、大東亜戦争)終了時に朝鮮半島を当時のソ連とアメリカの共同信託統治国にしようとしたと同じ考え方だ。当時のソ連とアメリカの話し合いが決裂し朝鮮戦争にまで至った原因にもなったアイデアだ。
 国連で制裁決議を何度も繰り返していても何も進展しない北朝鮮問題は、核ミサイル開発により3ヶ国共通の「目の上のタンコブ」になったのだ。しかも、雇用至上主義のトランプ大統領は不得手な外交を周辺メンバーに丸投げせざるを得なかった。そして、親ロシア、反中国の構成員でアメリカの外交が固まりつつある。
 信託統治には将来の独立を託す傀儡政権がつきものだが、まず、金正男氏を「正当な白頭山出身者」として利用しようとしたが、この情報を察した金正恩氏により殺害されてしまった。次はこの金正男氏の息子の金ハンソル氏を利用する作戦にでるであろう。
 マレーシアでささやかれている噂話に「金正男暗殺事件の警察の対応を見てると、俺たちの国の警察ってこんなに優秀だったっけ」ってジョークがある。今回のマレーシア警察の対応は「らしく無い」のだ。それは、とりもなおさずアメリカが陰ですべてのお膳立てをしている証左だろう。
 日本のマスコミのインテリジェンスも弱いので現地でのみ情報収集しているが、マレーシアの現地では正確な情報が把握できず、誤報の連続で真実から遠ざかる報道ばかりなのは承知の通りだ。アメリカが把握している情報に接している報道機関は皆無で、2週間待ったが、確実な情報はマスコミ経由では入手が困難だ。一部、ネットで裏事情に接する事が可能な人間の情報を集めるしかない。
 中国を巻き込むには韓国へのTHAAD配備の取り消し(北朝鮮が崩壊すれば必要が無くなる)、ロシアには北朝鮮のレアメタルを中心にした地下資源の利用、の飴玉を使えば、今度は3ヶ国の信託統治は可能性が高まる。また、金ハンソル氏を親アメリカで育てていけば、アメリカの影響力を削ぐことは無い。
 で、その時に日本は何を担わされるのか。

アメリカは日本を利用する
 地勢的状況からアメリカは在日米軍が存在しても北朝鮮の3ヶ国による信託統治に日本を噛ませておく必要がある。アメリカにとって、好都合な事に2002年の小泉総理大臣訪朝の時に『日朝平壌宣言』を進め、国交が正常化したら1兆円規模の経済協力を公約している。
 名目上は韓国にだけ支払った戦時賠償を北朝鮮にも払う用意があるって事を政治用語で「経済協力」とオブラートに包んだものだ。これは、北朝鮮の現政権では実現しないと踏んだ小泉純一郎氏の大風呂敷だったのかもしれないが、北朝鮮政権崩壊とともにゾンビのように復活してくる(アメリカの圧力によって)。
 その準備はしてあるのだろう。アメリカからは既に再打診されたようだから。
 このようなアメリカの水面下での外交とインテリジェンスが崩れるとしたら、3月に「ちゃぶ台返し」が起きるかどうかだ。
 懸念は二つある。
 一つは暗殺された金正男氏(と思われる男性)のDNA鑑定結果で本人では無くて「影武者」と判明すること。この場合、一気に本物の金正男氏を祭り上げて、北朝鮮外国暫定政府擁立が脱北者を中心に巻き起こる可能性がある。現在の韓国の親北派も流れていくだろう。「めんどくさい」韓国主導の流れが起きた場合の対応は難しい。そもそも韓国の政治は実質親北朝鮮派に牛耳られているのだから。
 もう一つは3月に予定されている米韓軍事演習の最中に金正恩氏がハワイとアメリカ本土の間の公海上にミサイルを撃ち込むことだ(これも、有りえない話では無い)。
 この場合、アメリカは自国防衛のために北朝鮮爆撃を行うだろう(これも、トランプ政権下では有りえない話では無い)。中国は猛反対する(姿勢を取る)、ロシアは静観だろう。日本は「朝鮮戦争の特需再来」を期待してアメリカ追従の姿勢を取るだろう。
 この2つの「ちゃぶ台返し」の可能性も五分五分だろう。
 「火の無い所に煙は立たず」と言うが、すでに煙が上がっていると覚悟して外交手腕を発揮しなければ、韓国と同じ蚊帳の外にされてしまう。

button  小泉純一郎首相の訪朝は外交では無い
button  北のミサイルは貿易品なのか



2017/02/28
Mint