「JR北海道再生推進会議」が動き出した

北海道庁の怠慢が原点
 そもそもJR北海道再生推進会議とは何なのか。これはJR北海道旅客鉄道の安全対策の不備が何に起因するかの基本的経営方針の再調査(見直し)を目的に国土交通省が2014年1月に設けた常設の「第三者委員会」である。
 この委員会の委員には北海道庁の高橋はるみ知事も名前を連ねている。
 2015年6月には赤字路線の廃線を含めた経営計画のありかたを提言した。これを受けての「JR北海道旅客鉄道が単独で維持困難な路線」が公表されている。
 前に書いた(と、言っても1年以上前だが)、その路線の「延べ」利用者数を計算して影響度合いを表したのが下記の表だ。

「延べ」ではあるが、100万人の足に影響する課題だ。ちなみに北海道の人口はおおむね560万人と推計されている。
 この記事を掲載した北海道新聞社は「影響の大きさ」を表す表現が皆無だ。ただ「なんか、大変なことになりそうだ」って感覚で書かれている。
 同じく北海道新聞社が同時に記事にしたのが北海道庁の幹部職員の意見だ。
「JR北海道旅客鉄道問題には口を挟まないようにしている。口を出すと金を出せと言われる」って発言が「公然と」掲載されている。
 ここで語られる「金」は誰の財布から出るのか。この幹部職員は「北海道庁の財布」と考えている。本来は道民の、広くは国民の税金である。それを「口を出したら金を出せとなる」って発言は公僕失格だろう。だが、高橋はるみ知事の時代の北海道庁は倹約、縮小路線で、顕著なのが支庁の廃止で地方振興局の設置だろう。職員は減らないし経費は同じなのに権限だけ縮小した役人の考える「合理化」だ。
 そのために気象庁は地震速報の震源地の名称をを全部新たにして、過去のデータとの整合性を堅持するためにデータの変換を余儀なくされた。以前なら「十勝支庁沖」が使えなくなったのだ。ま、私の地震データベースも変換したが、現状は気象庁の「地震で用いる震央地名」を見て欲しい。ま、話題が逸れたが。
 ここでは深く語らないが、支庁が振興局になった影響は地域の統治機構を変えている。地方自治体は個々の競争時代に突入し、支庁との関係が太ければ補助事業を斡旋してもらえる時代では無いと気が付いた。だから、地元の空港から直接東京に飛んで地域の代議士を利用して地方優遇の制度利用をはかる。所謂「支庁枠」の補助金制度が無くなっているので自らの対応を迫られているのだ。
 その結果、何が起きたか。それは「無用の長物の振興局による経費の食いつぶし」である。もちろん、経費とは税金である。
 役所は予算規模と表裏一体なのは財務省を見たら解るだろう。通産省を筆頭に予算を持たない役所の「あがき」は失敗の連続でしかない。札幌市には札幌テクノパークって施設があるが、ここが現在、札幌市のお荷物になっているのは、1985年当時の通産省のΣ計画の拠点化って実現不可能な構想に乗ったのが原因だ。役所が商売すると死屍累々なのは経験則で解っているのだが、予算を持つと役人は張り切る生物なんで、逆に予算を縮小されると「口を出すと金を出せと言われる」って、池井戸潤氏が描く銀行の審査部も驚く行動(冬眠)を始める。
 それを、道民の情報の糧であるべき北海道新聞社は書かない。北海道の「民主主義の発展に貢献する」ような口を利くが、実際は北海道新聞社の「利益に貢献する」紙面編成だ。百歩譲ってそのような事は無いと言うなら、記者や編集者の勉強不足によって情報が本質を突いていないのだから、商業誌たる地位も危ういってことだ。

青函トンネルの利用状況に目を向けよ
 函館までしか来ていないのに北海道新幹線と言っても良いかどうか迷う人も居るだろうが、実は新青森駅から先はJR北海道が管理する路線なので、新函館駅までの路線は「北海道新幹線」と言っても問題は無い。
 では、このJR北海道(以後、長くなるが、主張の本質を解ってもらうために、現在、北海道新聞社が「JR」「JR」と活字にする会社は「JR北海道旅客鉄道」を長いが正確に明記する。ここに問題の本質隠しが有る気がするので)が利用ている新幹線の本数と物流を本業とするJR貨物の列車本数はどちらが主流なのだろうか。
 一般的な数値だがJR貨物は26両編成を一人の運転手が牽引している。これも平均値だが荷物(コンテナー)の総重量は搬送する荷物で1600tになる。10tトラック160台分(ま、トラックは海を進めないが)になる。これが青函トンネルを23編成(2016年の貨物時刻表による)通過しているのだ。
 一方、旅客を乗せた北海道新幹線は開業当初を別にすれば運搬旅客数では3本、往復6本で十分な需要である。一方JR貨物は平均すると(これは、物流の特性で幅が大きい)26本、往復52本が常時利用している。
 ま、旅客と貨物を同列に扱えない(荷物は待たされても文句言わない(笑い))が極端に旅客輸送と物資輸送に差がある。それに着目する必要があるとは前(と、言っても動きが無かったので1年も前だが)から言っている。
 JR貨物が検討の土俵に乗ってこないのは何故か。ここが最大の政治的な運動の結果なのかもしれない。
 つまり「鉄路」は「旅客収入」で運営されるもので「物流」は「おまけ」って発想だ。これが、東京の霞が関で窓を背景にふんぞり返る下級官僚(課長クラス)のマーケットを見ないパソコンのエクセルの画面の数値の辻褄合わせの発想しか無い統治機構の犠牲に北海道がなっている元凶だ。
 日本の国土の22%(含む北方領土)を占める北海道を少子高齢化と過疎で放棄するのか。それが国策なのか、を問いたい。
 坂本龍馬が「いろは丸」の賠償金を得て北海道開発を目指した(実際は暗殺されて岩崎弥太郎の三菱財閥設立の原資になったのだが)精神は国土の22%を発展拡大する意義だった。その時代を経て戦後の白洲次郎の傾斜経済を含めて国家の22%の大地からの「物流」が、どれだけ国策に必須なのかを考えると鉄路の見直しは自ずと「合理的で経済的で民主的」な結論に帰着しなくていけない。
 国土の22%を捨てるのかどうかが国政に迫られている事案なのだが、北海道庁は「わしの財布(実は国民の税金の私物化)に期待しないで」って無責任を今後も続けるようだ。

国はシナリオを待っている
 JR旅客鉄道の株主である国土交通省が北海道庁をターゲットにするのは明確だろう。それを忖度出来なほど高橋はるみ知事を筆頭に北海道庁の役人は行政感覚に不自由な欠陥行政マンだ。
 JR旅客鉄道が「独自維持が困難」と公表したのは1年前だ。民間企業が負担に耐えられないって宣言だ。これを受けて北海道庁は「会計の明確化が不十分」と先延ばしした。実際にJR旅客鉄道の会計は不明確では無く複雑過ぎて理解不能なのだ(その理由は国鉄から民営化した時に「民営」出来ない部分の辻褄合わせがあり、それが拡大しているのが原因だが)。
 ここで一例だけあげておくと、青函トンネルの維持経費の「会計」である。この記事の記載を要約すると北海道新幹線(この時点では新青森と青函トンネルを経由しての新函館まので路線)の維持時は58億円の赤字ってことだが、赤字は収支の差で実際はJR東日本の負担する22億円とかの収入がある。
 これがJR北海道旅客鉄道の会計の複雑さだ(不透明と言うのは的確では無く、事業の性格から様々な収入が存在するのが現実だ)。それを北海道庁は「不明確」と片付けて1年間塩漬けにした。
 で、話を全然別な事案に移して例示しよう。先の「JR北海道「旅客」鉄道再生会議」で、有志(これも役人の無謬性担保で誰にも責任は無い構造になっている)の発言の中に「北海道拓殖銀行とJR北海道旅客鉄道(実際には「JR北海道」と言った)には似ている所がある」って発言があった。
 この瞬間に私は忖度した(笑い)。
 つまり、国は(正確には中央官庁の官僚)JR北海道旅客鉄道に負わせておけないほど北海道の鉄路問題は深刻だと認識しているようだ(あくまで、憶測)。そのために、国が1民間企業であるJR北海道旅客鉄道を支援するシナリオを北海道庁に書かせたかったのだが、まったく当事者意識の無い行政機関である北海道庁に「あきれかえった」ってのが本音だろう。
 国土の22%を占める北海道の輸送網に対して国が補助する仕組みを作るのは国家の大計として当然である。まして、今後北方領土を含めてロシアとの関係が変化する時に「切ったはった」の収支の赤黒の土俵に北海道の鉄道網は無いのだ。
 国益の土俵で語られるべき事案が、北海道庁によって「一企業の収支」にすり替えられた、そえれは高橋はるみ知事の了見の狭さに起因してる。
 やはり、通産省の役人が行政を運営するには「私、失敗しないですから」と内面の改革しか手を出せないのだろう。
 ここに、統治機構の欠陥がある。国は当事者なので外部からのシナリオ提示を求めたのに黙殺した高橋はるみ知事の無謬性を超えた責任は重い。
 路線存続の話は続編にします。

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2017/12/09
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