2019/01/10の講演のレジメ
大学で非常勤講師を体験して感じた事
大学の講義の話
 90分は長すぎる(緊張を保てないが、昔から1コマは90分)
出席率70%以下に単位を与えてはいけない(文科省の基準)
 休講は許されない(必ず15コマ実施)
 開き直って今の大学ではハッピーマンディの月曜日も講義を行う。だから非常勤講師は月曜日を避ける。
大学生は遊ぶのが仕事
 私は大学から「公欠」を得られなくても事後でも説明できれば公欠扱い。三沢基地の航空祭で米軍のサンダバーズを見たいが「青春18キップ」で2日前に行くので講義に出られない(許可)。その学生と航空祭の話して1コマ潰す。意外と現場はいいかげん。
 講義に出るより、出ない事で得られることが多い。特に人を育てるのは「旅」
人間が学ぶ仕組み(広い意味で記憶(学習)の仕組み)
 1)意味記憶(本を読んだり、調べたり)
 2)経験記憶(湯気でヤケドする経験と加湿器)
 3)訓練記憶(自転車に乗れると一生乗れる)

 今はキーワードをメモしておけば後で「Webで検索」の時代
大学の講義もキーワードを伝えて、調べた者だけが試験で回答できる方式変に変りつつある。講演を聞くときはキーワードのメモが決め手。

アメリカの「コミュニティ・カレッジ」とは
 固定資産税は地域の財源なので、これを使って教育を行う。この仕組みがコミュニティ・カレッジ。地元の溶鉱炉の責任者が定年退職して講座を構えたら元部下が受講する。半分は「カルチャー教室」なのだが、残り半分はアメリカの会社に無いOJTの仕組みをコミュニティ・カレッジで地域で伝承する仕組み

地方議会のICT利用の秘訣
地方議会運営も「コミュニティ」を重視すべき
 ここまでネットが浸透した(発達したとは思わないが)時代に「傍聴席に来てくれ」は無理がある。「ビデオで見てくれ」は時間泥棒。
 国会には「質問主意書」制度がある。
 国会議員なら政党によらず内閣に質問を提出できる。これを巧みに利用したのが鈴木宗男氏で、ある意味で「イヤガラセ」に見えるがこの「質問主意書」で議員の国政活動を有権者に伝えている。質問主意書と内閣の答弁は全文がネットで公開されている。
 文字で残しネットで公開すると後から「検索」が可能になる。知りたいと思った時に知ることができるってのはネットの効果。
 住民からの「質問主意書」制度を設けてはどうだろうか。
 その代わり実名で内容の公開が民主主義の鉄則。
 組長は「行政のトップ」、議会は「立法のトップ」をもう一度明確にしないと地方議会は形骸化する。
 アメリカのトランプ大統領と下院(民主党)の緊張関係が参考になる。但し「大統領令」って伝家の宝刀があるので組長(首長)より権限が強くはなっている。
 選挙の年(2019年)なので弊害もあるが、組長(首長)の選挙での公約は「私はこの地域をこうする」なんて主張はお門違い。
 行政府のトップに立候補したのだから「私は役場の働き方改革を行います。一番働き甲斐がある役場を作って民間に負けない生産性を実現します」であるべきで、出来もしない「この街をこうしたい」なんてのは行政府の長が口にするのは住民に対するフェイク(飛ばし記事)。
 一方、地方議会議員は選挙で、おおいに「この街をこうする。それが私の仕事だ。だから、条例を作る、それが立法府に立候補する私の気概だ!」と言って欲しい。
 「行政府(組長)に対する立法府(地方議会)の睨み」が有るのなら「質問主意書の受け付けと返答」の公開を地方議会でも導入すべき。
去年、これを比布町の町議との会食で提案したら「議会での質問の前に町長と話す機会を設けてくれるので、そこで意見交換してます」だって、それって住民に非公開じゃないかぁ(笑えない)。
 ネットで公開されている「質問主意書」を読んでもらうと、国会(立法府)と内閣(行政府)の攻防は意外とシリアスな関係なのが解かる。
 逆に、NHKの国会中継が議員のパフォーマンスなのが良く解かる。あれは政治の世界では無くて「たけしのテレビタックル」のレベル。

変化は地域のチャンス
チャンスには前髪しかない、後ろ髪は無い。
 チャンスは前に回らないと前髪はつかめない。
前髪を掴んだケーススタディ(事例)
ラルズの横山会長

 北海道芦別高等学校卒業後、明治鉱業芦別炭鉱で2年間炭鉱夫(私は事務職だったと推測するが、本人の「武勇伝」は炭鉱夫)として働いたのち退職して北大水産学部を卒業して流通業界(大丸スーパー)に就職。
 炭鉱夫の同僚が「石油ストーブに変えたんだけど、これって便利だぜぇ。ボタンを押すとストーブが動くんだ」って会話を聞いて石炭の未来を悲観して離職。北大水産学部に。
 お配りした私の経歴書には調査事業での事例に医療関係が多いのでプライバシー保護(調査した医療機関名)の面で書けないが、大学の非常勤講師ってのは自分の勉強の元であって、実際は多くの仕事を調査事業に費やして来ました。
 国の調査業務は3か年計画、その報告書が出てから実施まではさらに5年。だから着手時は10年後を想定して取り掛かる。
 で、実は介護保険制度は北海道発の制度。介護の度合いを数値化するMDS(アメリカの介護度の尺度を数値化した仕組み)を利用した調査(札幌地域で2000名の当時の老人病院の入所者をアセスメント(2年で4回、延べ8000データ)して「介護度は測れる」のかの実証実験。その開始から10年後に制度設計を経て現在の介護保険で実現。
 当時、一緒に調査した担当者は、山崎史郎さん。現在はリトアニア大使。多くのユダヤ人にビザを発給したリトアニア大使館に相応しい存在。
 ここから今回の講演の本題です(前段が長いって!)

北海道新幹線の課題
 路線の60%がトンネルでビジネスユースは耐えられるが鉄路そのものは観光の魅力が乏しい。
昔、熊本血液センターに行く時に大阪−熊本便が欠航して代替交通の山陽新幹線に乗ることになった。疲れていたのだがあの新幹線は苦痛以外の何物でもない。寝ようとするとトンネルで「バァン」って気圧変化で目が覚めてしまう(当時の車両)。やっと博多(福岡)に辿り着き、熊本まではL特急に乗りかえった(当時は新幹線は博多まで)のだが、車窓から見える雨の田園風景が素晴らしかった。
札幌まで延伸する新幹線は実は「地下鉄」なんだって現実を知っておくべき。
新幹線の「倶知安駅」の強み
 川端康成氏「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」感動の青函トンネル、八雲からのトンネルに飽きた頃に羊蹄山が見える。南から来ると最初に北海道の景色に触れられるのは倶知安駅。駅に停車すると、その右手に羊蹄山がそびえている。
JAPN RAIL PASSに着目
 本州からの観光+海外からの観光の外国籍者(一部、日本国籍でも海外居住が10年以上なら該当)定額でJR鉄道6社が乗り放題。昔の「周遊券」の外国人向けヴァージョン。新幹線も在来線と同じ扱いになっている。だから、本州からの北海道新幹線の最初の便で函館北斗駅に到着した旅客の半分は外国人だった。
 札幌に来たら「ちょっと倶知安まで行ってみるかぁ」の需要が満たされる。新幹線の小樽駅は「イマイチ」を通り越している。小樽運河に行くなら新幹線じゃなくて在来線、倶知安町に行くなら新幹線。
 羊蹄山麓を札幌、石狩平野(実は道民の2/3がこの地域に住んでいる)のマーケットを羊蹄山麓に誘導するのが新幹線の札幌延伸。東京と繋がるは妄想。新千歳空港と繋がらなくては東京と繋がるは実現しないが、新幹線は札幌と繋がる。極端な話だが羊蹄山麓が札幌の通勤圏になる。歴史的に小樽市や余市町が札幌の商圏をブロックしてきた。だが、羊蹄山麓は新幹線で壁を突き抜ける。
 岩見沢方面に向かっていた札幌の住宅事情が羊蹄山麓にも訪れる。
キロ運賃制度から変動運賃制度へ。
 LCC(Low Cost Carrier)は何故安い(実は安くない)。空いてる時に安くして乗客を増やす。繁忙期は高い。
 現在の航空運賃は上限と下限を届け出るだけで認可される。
 旧国鉄のJR北海道もLCC料金体系の制度になるのは10年先時代の規制緩和があれば実現可能。
 距離運賃制の制度は鉄路でも適応されている。南千歳と新千歳の間は建設費の償還があるので2.6Kmで310円。路線建設費での積算料金制度の弊害。
 南千歳で降りて歩くと310円儲かる。(実は、私は出張の時にヒッチハイクして南千歳まで乗せてもらった)

ワイン観光の将来像を描くこれからの20年
 北海道のワイン製造事業者は20年前は4社(サッポロビール、池田ワイン研究所、乙部ワイン、富良野ワイン)しか無かったが今は35社で増加中。毎年数社立ち上がっている。主に後志と岩見沢方面。
マイクロワイナリー
 元通産(当時)の札幌商工部長の田村修一さんの「ばんけい峠のワイナリー」がマイクロワイナリーの先駆。
 ワインを飲むには自家用車では無くて公共交通機関が必要(酔っぱらい運転は厳罰、しかも飲まないドライバー役は楽しめない)JR北海道に新幹線の札幌-倶知安間の「羊蹄ワインQ切符」を要望(立法府なら出来る)
 先に言ったLCCの基本は「変動料金制度」
 新幹線で倶知安駅に来て、各地のマイクロワイナリーを訪問。もしくは羊蹄山麓にそれぞれのマイクロワイナリーのレストランを訪問する仕組みの構築。
 札幌に何故ビール園が乱立するか。ジンギスカンとビールの相乗作用いわゆるシナジー。
 羊蹄山麓ではニセコバスが唯一の公共交通機関。利用者に対してキャパがデカ過ぎ。マイカーで十分。10年先には「白タク」が地方では可能になるだろう、私は「ヒッチハイク白タク」を提案している。
ワインと食事の相互作用の演出が必須、地域分散型で配置。
 公共交通機関をワインで維持する政策の立案が可能。
 そもそも北海道の鉄路は石炭を運ぶついでに旅客を運んでいた。年配の方は貨客列車を体験しているはず。なんか客車の後ろに石炭を運ぶボギーが連結されている状況を。
 石炭が無くなったら旅客も運べなくなった。4000kmが2500km(2016年、維持困難発表時)。今後更に縮小傾向。最大の函館本線は話題にしない「オヤクソク」(今回の講演会後の懇親会で地元が新幹線が来るなら廃止に合意って書類にハンコ押してるって話を聞いたので、現在調査中)
 鉄cyanに有名な「栄光の山線」C62の重連。本来平地を高速で走るC62、東海道線の花形が出力不足で重連で札幌、函館間(重連は長万部まで)を走った。
 国鉄の車両は駆動輪の数で命名されている
Cは3軸が駆動輪、Dは4軸。C62よりもD51のほうが牽引力(駆動輪)が多かった。ちなみに現在青函トンネルでJR貨物を引いてる電気機関車はEH800型。Eは電気駆動を表すので動輪はH。つまり8輪駆動。25000Vの新幹線規格で走ることができる電気機関車はこれだけ。鉄cyanにはたまらない機関車。
 函館本線は何処まで残るか。札幌から、小樽までか、余市までか、倶知安までか。  「栄光の山線」は小樽の塩谷から始まる(古いトンネル、橋梁が多い)。維持管理費用を考えると小樽までか余市まで。倶知安トンネルと稲穂トンネルの維持が困難。

いわゆる、ひとつの、羊蹄方式
 旅客、観光客、観光振興、医療サービス、物流を含めた交通体系の考察を羊蹄山麓のグループで考える。市町村のJR北海道との個別交渉は行わない。
その組織はそれぞれの町村議会の集合体である直轄の委員会で行政府(町村会)とは独立させる。行政府が「後始末」みたいに函館本線の廃止交渉を担っても「この街をこうする」にはならない。学園都市線が町村の利益誘導の結果だったのは明白。
交渉の場に出ない(留萌線)も住民不在。語らないのが住民にウケる風潮には問題(無責任)感が漂うが、それは「行政府」だから。「立法府」が前面に出れば街を変えられる。
 各町議会の広域委員会(勉強会)として事務方組織を作る必要がある。これが「いわゆる、ひとつの、羊蹄方式」で、羊蹄EU方式と言っても良いだろう。
 実は、東京電力福島第一原発事故の終息に向けて経産省だけでは無理でタスクフォース(機動部隊)を作った。地方にはそれぞれの市町村を横断する相互連携のタクスフォースが必要。自治省は「合併」の旗を振ったが、タスクフォースの旗は振らない。
チャンスの前髪はJR北海道とWin-Winになること。夕張市の発想は民間ビジネス感覚
函館本線も地元の総合力が必要
人、モノ、金を運ぶ公共交通体系を絞り込むべき
JR北海道の問題は6社協議で検討されている。それぞれが利害関係者となりえるか?(北海道、JR北海道、国土交通省、北海道市長会、北海道町村会、JR貨物)地元ファーストの発想を期待できるのか?
 函館本線廃止と新幹線の札幌延伸と地方の公共交通の有り方で町村議会が横の連携のタスクフォース(機動部隊)を編成する時(実現には10年かかる)。
 地方自治体法では「職員は地域の仕事をする」と書かれている。行政府には出来ない広域連携を実現できるのは地方議会(立法府)ではないのか!
 「いわゆる、ひとつの、羊蹄方式」を担うのは、ここに居るみなさんです。今日この機会に、私の話を聞いていただく場を設けていただき感謝いたします。
 「いわゆる、ひとつの、羊蹄方式」の実現を期待しております。
(c)Mint(公開、引用を承諾します)。
button  「組織論」無き組織の崩壊が始まる
button  【続】組織論、構成員にこそ責任がある


2019/01/12
Mint