HIT-SATの磁気トルカ技術

OhmyNews(2009年4月30日閉鎖)掲載の記事です
北海道ブランド人工衛星に秘められた技術
先に北海道工業大学が中心になって産学協同で北海道ブランドの人工衛星「HIT-SAT(ヒットサット)」が地球周回軌道に打ち上げられた(運ばれた)記事を書いたが、この人工衛星の実験項目で最大の使命は宇宙空間での人工衛星の姿勢制御にある。
北海道ブランド人工衛星HIT−SAT、宇宙へ
微小重力でほぼ真空の宇宙空間に浮かんでいる(実際に地球の重力と釣り合う遠心力を得て周回軌道を飛行しているのだが)人工衛星の向きを自由に変化させるのが姿勢制御だ。
空気中ならプロペラを使って姿勢を変化させることも可能だが宇宙空間では作用する相手が無い。まったくつかまる物が無い状態で浮いている人工衛星をいかにコントロール可能にするか、様々な方法がある。
一般的なのはスラスターと呼ばれるもので小さなロケットの燃焼や気体を噴射して姿勢を変化させる。スペースシャトルも機体の方向を変えるるのに使われている。
この方式のデメリットは姿勢制御の度に燃料を消費するので搭載した燃料が切れると姿勢制御不能になる。燃料切れが寿命となる。そのために最初に多くの燃料を搭載する必要があり人工衛星自体大きなものになってしまう。当然、大きな人口衛星を打ち上げるには多くのロケット燃料を必要とする。
もちろん、コストも高くなる。
「HIT-SAT(ヒットサット)」で実験される姿勢制御方式は「磁気トルカ」と呼ばれる手法である。
聞きなれない言葉だが人間の英知が詰まっている。単純な方式ほど高信頼度で低コストであることを感じる。
その原理は既に小学校で学んでいる磁石のN極は北を向くにある。地球が大きな磁石で、手元の磁石はその地球の磁石に引きよせられてN極が北を向くって原理を応用したものだ。
人工衛星の内部にコンピュータで制御可能な電磁石を作り地球磁場との作用を利用して人工衛星の姿勢制御を行おうとするものだ。
現在の技術で宇宙空間で入手可能なエネルギーは電力である。太陽電池パネルからエネルギーを補給できる。この電気を姿勢制御に使えば先のスラスターのように「燃料切れ」になることは無い。その秘策が磁気トルカである。
単純な機構なので故障の確率も低い。なによりも高度な技術がハードウエァに求められずソフトウェア側(電磁石の制御)にあるのも小さな人工衛星向きの技術だ。複数の磁気トルカに電力さえ供給できれば姿勢制御が可能になり人工衛星の小型化が進む。それはとりもなおさず宇宙空間利用が膨大な金額を必要とする国家事業から民間参入 可能な分野への道を開く。
「磁気トルカ」聞き慣れない言葉だが、インターネットで検索してみると、様々な技術が民間人工衛星開発に向けて研究されていることに興味が湧くだろう。
小さな人工衛星の壮大な実験の成果を見守りたい。

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2006.10.13 Mint