イージス艦「あたご」がマグロ延縄漁船団に突入
漁に向かう船団、集合体だった
現時点では推測を加えず報道されている内容の紹介に留めようとおもう。ハワイでの訓練を終えて日本に向かっていたイージス艦「あたご」は2008年2月19日午前4時頃に千葉県南房総市の野島崎から南南西約40キロと言うから入港直前にマグロ延縄漁船の「清徳丸」と衝突した。
船体の大きさから明らかなように漁船側は船体が前後に分かれるような衝撃を受けて乗組員2名は現時点では行方不明になった。
海での航海を考えると、イージス艦は海上自衛隊としてハワイ沖での訓練を終えて帰港する側、一方マグロ延縄船団は生活がかかった漁に向かう船団。どちらかが、海の支配者かは問わないのがシーマンズ・シップ。つまり、海に生きるもの共通の精神を持とうって考え方。でもね、「あたご」の乗員にシーマンズ・シップが有ったのかなぁってのが、この事故に対する僕の基本的スタンス。
不思議なのはイージス艦の「あたご」が事故の直前まで自動操舵で航行していること。当時の状況ではマグロ延縄船団が半径10kmの範囲で固まってイージス艦の「あたご」の正面に居た。漁船のレーダーでは11km先からイージス艦の「あたご」が映っていたとのことなので、当然艦橋が高い「あたご」のレーダーにも複数の漁船が映っていて「船団」であることが確認できたと思う。
この船団を固まりとして捕らえて回避すれば個々の漁船に対して回避行動を取るよりも効率的で安全な回避策がとれたはずなのだが、何故か「あたご」は自動操舵のまま船団に突っ込んでいく。
しかも、数隻のマグロ漁船が回避行動を取っているのだから、せめて速度を落とすとか船の明かりを強くするとかの処置が取れなかったものだろうか。
真実はもっと非常識だったのでは
当初の情報が二転三転したが、一番気になるのは「1分前に逆進をかけたが間に合わなかった」だ。本当に逆進かけたのだろうか。どうもここに虚偽がある気がしてならない。
船団のメンバーから「汽笛を聞いていない」との情報がある。衝突防止には警告が最善の方策だろう。速度を落とすとか舵を切る以前に自分の進路を横切って衝突する可能性があるのなら警告を発するのが最初の手段だろう。
汽笛が発せられてないと言うことは、衝突までイージス艦「あたご」も「清徳丸」も気がつかなかったのではないか。衝突してから逆進を掛けて止まったのではないのだろうか。
2/24現在で「あたご」の乗組員は一切上陸していない。事件の時間に寝ていた乗組員も居るはずなのに何故か全員船内に足止めされている。これも不思議だ。捜査上の必要な人員は限定されてるのに何故、全員上陸足止めなのか。
例え寝ていたとしても、小さな衝撃(清徳丸との衝突)の後に大きな減速(逆進)が有ったのは体験している。その順番を体感した乗組員の上陸による情報流出を止めているのではないか海上自衛隊は。
そもそも、清徳丸の船体が真二つになるような衝撃は1分前に逆進して速度が落ちた段階での衝撃とは考えられない。少なくともイージズ艦「あたご」の船首が清徳丸の左舷に当たり船体を二分したのは船首の速度の力による。清徳丸は横からの衝撃だから船体破壊に至るエネルギーは双方の速度ベクトルの合算では無くイージス艦「あたご」の前に向かうベクトルだけになる。
1分前に逆進をかけたなら、10ノット(時速18km)から減速しているはずだが、いくらFRPと言えど船体が二分され操舵室が分離するほどの衝撃は10ノットで衝突したとしか考えられない。
もっとも一番気になるのは汽笛の有無になるだろう。汽笛を鳴らさなかったってことは衝突の危険があると「衝突まで」気がつかなかったってことではないだろうか。
見張りすら欠如していたって事実が明らかになると、たぶん、石破防衛省大臣の辞任は避けられないだろう。
双方の見張り不備はあるが
現代の漁船はハイテク機器を装備している。その機器の中で魚探とレーダーや漁業無線は当然電波を出すので免許がいる。(ま、魚探は別だが)装備にGPS連動のレーダーがあるのだから、海の上での航跡は履歴として把握されている。もちろんイージス艦「あたご」にも装備されているが、このGPSのデータが「記録されてなかった」と公表されている。
これもあり得ない情報隠蔽だと思う。
北海道の小樽港に米軍の空母インディペンデンスやキティホークの入港を見ていると国家の財産である空母が入港するのに警備するヘリコプターは7機から10機飛んでいた。噂だが最初に小樽港に入港する時にはロシアの潜水艦が石狩湾に居てイージス艦が警備していたらしい。この入港を野次馬で見学して感じたのは「国家財産が喪失されないための安全管理は徹底してるな」ってこと。噂で聞いたのだが、毎日新聞だったと記憶してるが取材のリアジェットが空母の上空に向かってアプローチしてるのをパトヘリが緊急無線で「空母の上空は治外法権で撃墜されても文句言えない」と注意されて右に退避していたらしい。(右への退避は見ていたけど)
国の財産である軍艦を預かる意識が皆無なんではと思う。かの「たかじんのそこまで言って委員会」に出演した太田氏が「自由に使ってくれと渡された税金」と言っているように、国防の意識が現在の自衛隊の幹部に欠如しているのかもしれない。
そもそも、国の機能である外交と防衛が平和ボケして単なる役所の一部所となってしまった結果が今回の事故の遠因となったのではと思う。
ハイテクな漁船が増えたのに「衝突防止装置」の研究は置き去りにされているのではないだろうか。国土交通省は漁船へのレーダー・リフレクター(レーダ電波への反射装置)の装着を義務つけたのは数年前。
そもそも、衝突防止策は明かりが緑か赤かによるなんてのは、江戸時代かい!
航空機が三次元の世界の中でTCAS装置搭載によって衝突防止を義務づけられてるのにハイテクな漁船に何故TCAS的な装置の搭載が出来ないのか。
いろいろ調べると海上自衛隊には民間の船舶への法的制度とは違った治外法権があるようだ。その軍隊と同じ海を共有するシーマン・シップを保つことが可能なのだろうか。
そもそも、衝突してから気がついたのか衝突の危険を感じていたのか、前者だと思われる状況証拠が多すぎる。