そろそろ福島第一原発を裁判として考える時期(1)

警察がまったく動いていない不思議
 これだけの事件が起きると警察が事故調査委員会とは別に(実際には連動するのが日本の制度の悪い面だが)刑事事件として捜査を行うのだが福島第一原発事故については「自然災害」と判断しているのか関係者への聴取や証拠保全に警察はまったく動いていない。
 あまりにも大事件過ぎて警察の手に負えない場合、警察・検察以外の手による裁判が過去有った。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と言ったのはドイツの初代宰相ビスマルクだが、我々も歴史に学んでみよう。
 大東亜戦争(日本国政府正式名称)の敗戦とともに理不尽に訪れたのが極東軍事裁判いわゆる「東京裁判」である。その内容の不整合性は語り尽くせないが日本はサンフランシスコ平和条約で「東京裁判の結果」を受け入れると署名しているので結果は受け入れざるを得ない。ただし「東京裁判」そのものを肯定したものでは無い。あくまで結果を受け入れた(是非の論議を抜きに)ものだ。
 この歴史に学び、今回の福島第一原発事故の関係者の中から東京裁判で言うところのA級戦犯候補をリストアップしてみた。その真意は東京裁判においては事前にA〜C級戦犯の指定が行われ(今で言う容疑者)その後、被告人に対する裁判が始められたことに由来する。
 「想定外」の自然災害なのか、人災なのか。最も大規模な人災である戦争の観点から福島第一原発事故が何故起きたのかを検証してみたい。但し、東京裁判の「平和に対する罪」みたいな後追いの論理は加えない。「原発を推進した罪」なんてのを捏造するエセプロ市民の論理はここでは持ち込まない。

援助を断った初動対応
 先の大東亜戦争(日本国政府正式名称)はアメリカからの鉄屑、石油の禁輸により追い詰められた日本が窮鼠猫をかむ的な開戦に至ったってのが東京裁判のインドのパール判事の意見だが、今回の福島第一原発事故は逆でアメリカ(軍)が事故発覚後直ちに政府に援助を申し出たのを政府は断った。
 政府が東電に問い合わせたら自分たちで処置可能との返答だったので、アメリカにもそのように伝えた。これが政府の正式見解である。責任逃れである。日本とアメリカの政府間の国と国の問題を1企業の意向に転嫁し日本国政府としての判断は無かったということだ。つまり、長年積み重ねられてきた政府の無作為の罪(新たな罪は作らないはずだったのだが)がここに潜在的に存在する。
 アメリカは長年の原子炉利用の経験から蓄積された知見により、福島第一原発が大変な事態に陥っていると判断した。そして必要な援助項目をリストアップし、原子力空母で想定している原子炉事故に近いと判断した。だから、自身の事故対策完備した第7艦隊の原子力空母ロナルド・レーガンを現場に向かわせた。
 実は福島第一原発で利用の沸騰水型原子炉であるGE製のマークTはアメリカで重大事故の場合の危険性が1988年当時に指摘されており、これを改善するべく会社に働きかけた技術者が改善が実施されないために退職した事実がある。この論文は全電源喪失を想定した場合の原子炉の暴走の可能性をシミュレーションしたものだ。この論文の存在を後に原子力保安院は「知らなかった」と述べている。
 起きている事態の的確な把握と対応は危機管理の基本だが、現場の状況を把握する情報と見識が政府に欠落していた。ここで菅直人総理大臣(当時)をA級戦犯にリストアップしておく。

数々の違法行為が不問
 少し時間軸が変わるが福島第一原発事故で起きた刑事事件は枚挙にいとまが無い。
 津波により破壊された外部電源用の重油タンクの重油の流出。低濃度汚染水を海洋投棄し諸外国に通報もしていなかった。放射線管理区域外の免震棟で働く事務員が一般人の年間被曝量を大きく超えた被曝をした。水素爆発による危険物規制に関する法律違反。そして広範囲に放射性物質を運んだ原子炉等規制法違反。
 アメリカなら全ての違反が積み上がって懲役500年くらいになるが、優秀な弁護士を高額で雇えば懲役は100年くらいに軽減されるかもしれない。
 非常時だから多少の法律違反は不問にするって姿勢が政府にあるのは事実である。そのため、当時の枝野官房長官は「ただちに健康に影響がある量では無い」との言葉を使った。
 後に枝野氏は経産大臣になって国会での質問に対して「ただちに健康に影響がある量では無い」とは、一過性で1回や2回摂取した程度では微々たるもので健康被害は発生しないとの意味だと答弁している。東京に居て官邸で寝起き食事をしていればそうかもしれないが、24時間365日放射能にさらされる現地の国民の立場や環境を想像できないのか。
 政治家は国民に誤った情報を流しても罪に問われないのか。それも生命、財産に関わる情報だ。本来、国家を担う政治家は何にも増して国民の生命と財産を守るのが使命ではないのか。枝野氏にも「偽証」の罪があるのでA級戦犯にリストアップしておく。
 話を当日に戻そう。その(2)に続く。

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