原子力規制委員会がボツにした原発はどうする

審査でボツになった場合
 現在、審査を申請している原発は8電力会社の10箇所、17基の原発だ。原発の現状はここにCSV形式で掲載してるのでダウンロードして把握して貰いたい。エクセル版はこちら
 この中には「40年で廃炉」の原則により電力会社が稼働申請しないものが含まれている。新基準で改修しても稼働年数が短く投資対効果で採算性が見込めない原発だ。その「40年で廃炉」の原則を実行するためには、廃炉のプロセスを電力会社任せでは無く、イギリスのように「廃炉庁」を作って一元的に管理する必要がある。しかし、現在事故による廃炉の福島第一原発以外に計画廃炉になっている中部電力の浜岡1号、2号も「とりあえず放射線量が落ちるまで」と放置状態だ。
 日本原電などは、発電が収入源で、唯一無傷に近い駿河第二が再稼働出来なければ廃炉費用の捻出は出来ず、物理的に「放置」となる公算が高い。ちなみに、日本原電は3基の原発を所有しているが、東海第二は東日本大震災で全電源喪失事故を起こし、冷温停止まで3日も要した、地元は、即廃炉を主張してる。駿河第一は「40年で廃炉」の原則にひかっかる。
 そもそも、国策民営で行われてきた日本の原子力発電の最後のプロセスになる廃炉が「完全民営化」で達成可能では無い。そもそも、廃炉の費用は健全な原子力発電から稼ぎ出すしか無い。そのためには、国策として廃炉を統括する組織を作らなければならない。
 まったくタブー視して手を染めないので、ひょとすると安倍政権はなし崩し的に現在の原発(48基)を全て再稼働させてしまうのでは無いかと痛くもない腹を探られることになるのだ。

廃炉は発生している
 先の原子炉一覧を見て貰うと解るが「40年で廃炉」の原則に鑑みると、新基準に適合できる改修に3年を要するとして、今現在でも再稼働が見込めない原発が14基程ある。これは、間違いなく今日から廃炉の準備に入らなければならない。
 原子力規制委員会が機能するならこれに加えてボツになる原発が必ず出てくる。つまり、廃炉と使用済み核燃料の問題は、既に予想されてきたことなのだ。それに手を打てなかったのは政治家の怠慢であり官僚の処理能力の低さに起因する。
 今後の世界の原発の趨勢はトリウム原発である。東芝はちゃっかりとウェスティングハウスを買収し、今後の中国への原発輸出に1枚噛もうとしている。日本国内では政治の不作為で廃炉技術の確立すら出来ていない。夢物語の妄想である「もんじゅ」にまだ固執している。
 そもそも、東芝がウェスティングハウスを買収したのは世界の原発がBWR(沸騰水型)からPWA(加圧水型)に替わり、BWR(沸騰水型)の小さなマーケットに企業が多すぎるのでじり貧故にと言われているが、実は熔融塩炉(トリウム原発)の技術で世界をリード出来る企業は東芝しか無いと踏んだからが真相だろう。
 政治が深層埋設に邁進している使用済み核燃料も熔融塩炉(トリウム原発)を利用すれば100年程度で無害化出来る。
 この技術開発に世界は突っ走っているのだが、日本はマスコミも含めて鎖国状態だ。これではアメノミクスの「成長戦略」も実現しない。


どやって、廃炉にするねん!!
 若手の政治家が政策テーマを持ちたいと思ったら原発問題は格好のテーマだ。なんせ廃炉は30年以上の年月を必要とするので政策テーマが朽ちることは無い。それで票が取れるかと考えるのなら政治家は辞めてしまえ。次回の当選だけで頭が一杯な政治家なんかいらん。
 国会で、政治活動を通じて「答を出せ!」と政府に迫れば良い。先に書いたように東芝に教えて貰っても良い。答は見つかっている。世界はその答を実現するために技術開発に鎬を削っている。科学技術予算を付けて中電研と東芝に研究促進させてば、日本もこのレースに参加できる。既に中電研と東芝は「4S原子炉」でアメリカに打って出る計画は作ってあるのだから。
 廃炉の道筋が不透明では原子力規制委員会もボツを打てない。
 日本原電の駿河第二の活断層問題は「活断層と地震の関係」がまだ良く解っていない背景もあるが、結局、ボツを打ち出した瞬間に日本原電が倒産するって事態を配慮してのことだろう。結局「国策民営」の矛盾を含んだまま日本の原子力政策は惰性で流されてる。
 アベノミクスの第三の矢、成長戦略にはイノベーションが必要だ。旧来の前例主義では打開できない原子力発電問題を大なたでイノベーションを起こして解決していくしか選択肢は無い。
 どっかに、まともな頭の政治家は居ないのか。

button  日本のエネルギー政策には「戦略性」が無い
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2014.02.19 Mint