ウクライナ離れ、ロシアへの併合の意向が乱立

ウクライナからの独立
 ウクライナは群雄割拠状態に陥っている。まず東部ドネツク州で政府庁舎を占拠し「ドネツク人民共和国」を宣言。東部ハリコフでも独自に議会を開催し「ハリコフ人民共和国」を宣言と東部地域でウクライナ本国離れが進んでいる。
 奇妙なことにアメリカは「裏でロシアが糸を引いている」と非難しているが、これはウクライナ本国にアメリカが行ったことと同様で完全なるブーメランである。
 ウクライナ東部国境近辺に軍隊を駐留させているロシアは何時でも「ロシア人保護のため」を名目にウクライナ国境を越える準備を完了させている。この場合ロシアは自衛権の行使と言うだろう。また、ウクライナ本国が独立宣言派をテロリストと決めつけて武力弾圧を強化すればロシアの思うつぼである。ロシアは独立派から自国民の保護のための駐留を要請されれば軍事行動としでは無く治安出動名目でウクライナとの国境を越えるとの言い訳が正当化される。
 ここに来てアメリカはウクライナ本国の独立運動弾圧に微妙な立場に立たされている。ウクライナ本国が弾圧を強化すればロシアを刺激し、ロシアの軍事力でウクライナ東部は制圧されてしまう。この事態に陥るとアメリカは外交居カードを失う。オバマ大統領は中間選挙を控えてアメリカ単独でのウクライナ駐留は出来ない。仮にウクライナ駐留をすればロシアはEUへのガス供給を止めるだろう。EUのエネルギーの30%がロシアからのガスで、これが断たれると経済が成り立たない。それを救うほどアメリカのエネルギー供給の準備は進んでいない。

中国と違う侵攻のシナリオ
 「力による国境線の書き換えは許されない」と安倍晋三総理大臣は国際会議で述べているが、これは中国に適応されてもロシアには適応されない。もっとも、安倍晋三総理大臣の思慮遠望の中には『ロシアを刺激しないで日本も西側諸国の一員として発言する』との思惑があってのことだろう。だから、国際社会は安倍晋三総理大臣の発言の矛盾をあえて指摘しない。
 中国が行っているのは無人環礁への侵略だ。住民の居ない地域だ。これは正に「力による国境線の書き換え」に該当する。しかし、ロシアのシナリオには「住民の総意に基づく国境線の書き換え」が組み込まれている。クリミア半島も住民投票が有った。その住民投票の正当性は世界各国からクリミア半島に入った選挙監視団が保障している。
 ロシアは「住民の意向を受けて編入した」と方便出来るのだ。中国には出来ない。何故なら中国には「民主主義政権」が無いから住民の意向に従った政治が無い。だから、チベット問題は民主主義国家から見たら奇妙な話である。「住民の意向」を無視して政治がなされているのだから。これが中国の国際社会の一員としての最大のアキレス腱である。ここを付かれると誰も中国の支持者になってくれない。
 この国際世論の深層心理を突いたのが先の安倍晋三総理大臣の発言に繋がっていく。
 しかも、ロシアに対しては「中国みたいやり方は駄目。ロシアはそれと違う」とのメッセージを込めているのだ。


奇妙な国も存在するカオス地域
 実は旧ソ連の崩壊からウクライナ近郊の国々には独立したが政府が確立してない地域が多々ある。そもそもクリミア半島はクリミア自治共和国とセヴァストポリ特別市で構成されていた。
 ウクライナの西隣には「沿ドニエストル共和国」がある。本来この「地域」は「モルドバ共和国」の一部であったが独立宣言し、以後モルドバの政治支配は及んでいない。この地域の議会はロシアへの編入を求めていたが拒否され、今回のウクライナ併合によって再度ロシアに併合を求めている。
 これが実現するとウクライナは東西からロシア併合組に挟まれることになる。
 国境線と住民(の使う言語)とがカオス状態に陥っているのは、結局前にも書いたようにウクライナを土俵にアメリカがネオ・ナチ残党を支援してロシアにちょっかい出したのが発端だ。正確に言うと「ユダヤとプーチンの天然ガスとの戦い」だ。
 アメリカの不用意な外交で火薬庫になってっしまったウクライナだが、そもそも、2004年のオレンジ革命の後始末が悪かった。住民の抗議運動の尻馬に乗ってヴィクトル・ユシチェンコ大統領を再選挙で当選させたアメリカだが、その後の政権内での内部抗争には見向きもしなかった。そのため2010年には一度失脚したヤヌコーヴィチ氏が大統領に再度当選する。
 そして、再度仕切り直しで政権転覆を企てたのが2014年である。アメリカは10年間放置プレー状態だったのだ。
 黒海を巡る領土争いは中世にまで遡る領土問題だった。今また新たに歴史を繰り返すのに、遠く離れたアメリカが首を突っ込んでくるのは「小さな親切、大きなお世話」になりかねない。

button  ウクライナ問題は政治腐敗が根源、失敗国家の後始末
button  クリミア半島はプーチン大統領によって「詰み」


2014.04.09 Mint