廃止になる鉄路は明確
あえてキツイ言葉を用いるが、北海道の鉄路を維持するのは一民間企業であるJR北海道旅客鉄道の経営の範疇を逸脱している。所詮、鉄路を有する違いはあるが地域のバス会社と経営構造は同じだ。バスを利用する人が、つまり、乗客が居なければ利益を上げられず運行を縮小せざるを得ない。唯一バス会社との違いは路線も独自に保有し維持管理する部分だろう。
独自に走行路線を持つが故に道路網を利用するバス会社と異なる特性がある。それは車両編成の柔軟性だ。現在の赤字路線は1車両の運行が多いが、これは最低限の旅客を収納するには大きすぎるのだが、それしか車両が無い現実に起因している。
似た環境なのがJ:COMのディスカバリーチャンネルで放送されている「アラスカ鉄道」だ。「上下「左右」分離方式」でバス程度の車両も利用料を払って鉄路を利用している。「上下「左右」分離」と言うのは、途中のトンネルはトンネル管理公団が別途管理していて、トンネルに必要な重機で維持管理する。通過する車両は路線を使用する権利を申請して車両重量や積載荷物の通過可能か審査され許可を得る方式になっている。上下分離では運の悪い市町村には「鉄橋もトンネル」も維持ってのに比べれば「上下左右分離」は合理的だ。
このアラスカ鉄道はフェアバンクスと南部の港のスワードを結ぶ鉄道で、フェアバンクスはアンカレッジに次ぐ第二の規模を誇る都市だ。更に北方の開発のための拠点でもある。スワード近郊のアンカレッジは国際空港で有名であるが大きな貿易港でもある。ここに陸揚げされたアラスカ開発の資材(橋梁やパイプラインの長大パイプ)を運ぶのがアラスカ鉄道の主任務になる(つまり貨物輸送だ)。なんせ、スワードで人口3000名(推定)、フェアバンクスで人口100,000名(推定)であり周辺人口は少ない。
このあたりは、JR北海道旅客鉄道にも通じるものがあるかもしれない。
アラスカ鉄道は人を運ぶか物資を運ぶか、その混在かを決めて鉄路を利用している。これは道路利用と同じ感覚で鉄路を利用する方法だ。アラスカでは道路網の発達以前に鉄道網が整備された関係から冬期間の除雪は鉄路を集中に行い、道路輸送は極力控えている。そのために、JR北海道旅客鉄道が開発したDMV(デュアル・モード・ビークル)と同様のバスやトラックが道路と鉄路併用で走行している。また、鉄道路線の保線のための車両の多くもDMV仕様になっている。
最近の道路網、特に高速道路は高架が多く、交通事故等による寸断での全面通行止めが予想される。そうでなくても「高規格高速道路」は失敗作で、一度交通事故が起きると区間閉鎖となりその度合いは雪害閉鎖より数段多い(通行不能時間は短いが)。
インフラとしてのリダンダンシーとして鉄路を見ると最低限確保(廃止したら二度と再開発できない)する必要のある路線が見えて来る。国土の22%を有する北海道では北海道横断路線と北海道縦断路線だ。
道南の青函トンネルを経由した函館から稚内までの路線は北海道縦断路線で継続の対象になる。サハリンが日本の領土だった時代の北への玄関口であった稚内市は今後とも100年単位で考えると海外に向けた窓口である。
縦断は解りやすいのだが、問題は横断路線である。
旭川から石北峠を経由して網走に到達して、そこから釧路、根室に伸ばす路線か、新千歳空港から石勝線を経由して帯広、釧路、根室かのどちらかだろう。実際問題として石北峠は路線が古く常紋トンネルを筆頭に隧道は維持経費がかさむので迂回路線を敷設する必要がありかなり高額な再構築を必要とする。それならば、比較的新しい石勝線を残して横断させた方が効率が良いだろう。
ここで、再度、JR北海道旅客鉄道が「単独では維持できない」と表明している路線を再掲しておく。
厳しい言い方をすると、上記の路線は先に書いたように
A案)国策として残す
6)宗谷線、14)宗谷線、7)根室花咲線、15)根室線の4路線になり、
B案)地域の実情と希望により存廃を選択
他の11路線に分類される。そして、ここにおいて(2017/12/12)、高橋はるみ知事は道議会の答弁で上下分離では無くて「特定事業勘定」(特別会計)を国に求めていくと話が急展開してきた。これは何もしなかった北海道庁に業を煮やした国からの裏舞台シナリオが提示されたことの証左だろう。
北海道庁の役どころは何か
先に「
「JR北海道再生推進会議」が動き出した」で書いたように、JR北海道旅客鉄道問題への対処策として国はシナリオを持っている。それは赤字解消の矛先がJR貨物に向かなりためのシナリオだ。
現在のJR貨物の収益改善は青函トンネルによるものが大きい。青函トンネル開通以前は民間と競合しながら青函連絡船(フェリー)で貨車を運んでいたが、青函トンネル開通後は輸送量が膨れ上がりJR貨物の経常利益の確保に奉献している(他にも社会的要因もある)。
この利益を失ってJR貨物までが赤字体制になれば、国は「面倒見切れない」規模に発展するので、国政としては、事をJR北海道旅客鉄道に収めておく必要がある。
そのために国の出番なのだが、JR分割民営化した現在、国が直接民間会社(JR各社)に指示を出したり(ま、株主だからJR北海道旅客鉄道に口は出せるが、金は出せない)金を出したりは出来ない。そもそも、一地域の問題は地域で解決策を「立案」(言ってこなくては)対応できない。その役割が北海道庁なのだが、のらりくらりと一年も放り投げでは、国のシナリオを演じられない大根役者もよいところだ。
普通の演出家ならば大根役者の首を挿げ替えるのだが、知事選挙は2年も先になる。それまで待っていてはシナリオが劣化してしまう。そこで持ち出したのが「上下分離方式」を引っ込めると共に、北海道の鉄路を特別事業会計にして「特別事業勘定」として成り立たせるシナリオだ。
電力会社と同じように「送電発電分離」を鉄道でも利用しようとしているが、諸外国例は北海道のような長大路線には馴染まず市町村の利害関係の調整が難しいので特会(特別事業勘定)を持ち込もうって方法だ。
これには北海道庁も重い腰を上げざるを得ない。何故なら、国が口も金も出す(つまり、北海道庁は右から左への伝票操作だけ演じれば良い)のだから楽な役回りである。
問題は、国は前述の4路線にしか口も金も出さないだろうが、北海道庁が残った11路線を調整する役割を担うことに気が付いていないようだ。国としては北海道縦横断鉄路を確保すれば残りの支線はまさに「地元の問題」であると割り切っているだろうから、高橋はるみ知事は気が付かないふりをして4路線の特会(特別事業勘定)が立ち上げるのを待てばよい。それが実現する頃には自分は知事では無いのだから。
結局、上記の11路線については何も解決策が見いだせない。
その割を食らうのは誰であろうか。
私は誰も割を食わないと思っている。何故なら、自己責任社会が帰着する所に帰着する結果だから。「おかみが、なんとかしてくれる」と思っている内は何も解決せずに課題は放り投げられ世論が忘却するまで放置される。
別な項で書いているが「統治制度疲労」が随所で見られる日本の行政機構(なんか、事務次官までやった人間がやりたいほうだいの放言三昧してるし)を見直さなければ手先の手品(マジック)に騙されるのは国民の宿命になっているのだから。
参考文献:「
統治機構を変えないと制度疲労は治らない」
以後、動きが有れば速報に続く予定(To be continued)